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有・罪・判・決5_没原稿

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有・罪・判・決_5

 榊と堤防を走っていて、この前の警官とすれ違う。
「この前は家まで送っていただき、ありがとうございました」
「ああ、この前の……あの美人さん? …………君、男性?」
「えっ? はい。男です。女性だと思われましたか?」
「ごめんごめん。えらい胸のない人だなぁ、と…………あまりにふらふらしてたから、乱暴されたんじゃないかと思ってたんだけど……綺麗な人だし。男性なら、違うよね」
 榊が自分を凝視しているのを、章彦は感じてくちびるを噛んだ。
「本当に乱暴されてない?」
 章彦は否定することができなかった。
「前、眼鏡を掛けていなかったやんな? 乱暴されて眼鏡を落としたんちゃうんか? あの時から万が一のこと思て、ここらへんの巡回増やしたんや。そこの橋の下、ゴミが一列に並べてあったりとか、なんやおかしい……ほんまに君、大丈夫やったんか? あんとき、暴漢にあったんちゃうんか? そやから、今は二人で走ってんねやろっ」
 警官が、自転車を降りて来たのを待って、榊が警官を章彦から遠ざける。
 すでに章彦の家はこの警官に知られているようだし、章彦の身元は調べればすぐにわかる。 何一つ嘘をつくわけにはいかなかったが、真実を言う必要も無い。
 榊も今、章彦が暴漢に会ったことを知ったが、それを素直に告げる必要性など、微塵にも感じなかった。
 女性を無差別に狙う強姦なら、早く捕まえるために女性に告発を願いたいが、章彦を狙ったものはそれとは違う。警官を頼る気には、ならなかった。それぐらいなら、最初の勝輝を告発している。
「そこのマンションで、投身自殺した前山元事務次官の事件、知ってるでしょう?」
「そりゃ、大騒ぎになったから」
 検察官が被害者になったのを知っているのは、この近所の警官だけだ。箝口令が敷かれたので、彼も誰にも他言してはいなかった。
「彼、その被害者」
「えっ?」
「俺は榊四朗、あの人佐納章彦。大阪地検に勤めてる。調べてくれたらわかるから。今、あの人にその手の話題禁句なんだ。勘弁してくれないか?」
 警官は、コクコクと頷いた。
 加害者が逃走したのなら、一人で出歩くなど信じられないが、すでに自殺してこの世にいない。夜のジョギングを止めるいわれはどこにもなかった。
 大体この前でも、自分が警官だとわかったときにすがりついてきたから被害者だと思ったというのが大きいのだ。頼られなくても助けるが、頼られれば是が非とも助けたい。
「とにかく、ここらへんの警邏は続けるしっ! 安心してジョギングしてくださいっ! なんかあったら迷わず通報してくださいねっ!」
 警官はやっと離れてくれた。
 行きましょうか、と榊は章彦をうながして走り出す。
 章彦が榊より一歩後ろを走り続ける。後頭部や背中に視線を感じる。
 章彦は、ずっと榊の背中を見て走っていた。
 なぜ榊にすぐに話せないのだろう。
 感じてしまった、から……?
 最初に勝輝に犯されたときも、榊が駆けつけてきて現場を見たから隠しようがなかったが、知られていなければどうだっただろう。ずっと隠したのではないだろうか。
「じゃ、また明日走りましょうねっ!」
 マンションの下まで走って、榊は車で帰ってしまった。
 章彦は呆然とそれを見送ってしまう。
 問いただされるかと思った。
 せめて、部屋まで来てくれるかと、思った。
 また、あいつが来たらどうすればいいのだろう。
 章彦は、エレベータで自分の階まで上がったが、ドアの前に行くのに時間がかかった。周りを警戒しながらドアを開け中に入ったが、閉めたドアが途中で締まる。靴を突っ込まれていたのだ。
 目出し帽は被っていなかった。
 眼鏡を掛けているから、今日は顔が見える。
 やはり、あの病院の看護士だった。
「山本……看護士……?」
 章彦の消毒をしてくれた看護士だ。乳首を重点的に長々と消毒されて、何度もイきそうになった。
 あの時から、付け狙われていたのだ。
「ぁ……」
 章彦は、ノブを握っていた手を掴まれて、腰が抜けた。
「今日も乳首引っ張ったるわ。千切れるぐらいにな」
「ひっ……」
 ズキン、と胸に甘い痺れが走って、章彦はもう、動けなかった。
 声も出なかった。
「今度、女性ホルモン打ってやるよ。せめてAカップぐらいにはなれや。揉み応えが無いか……あ?」
 彼がドアを閉めようとした時、彼が開けた時と同じ様に、ドアに靴先が突っ込まれていた。章彦の上に山本が降ってくる。とっさにあとずさったら、山本は床に転がって、玄関には榊が立っていた。
 ガチャリ、と、榊がドアを閉めて鍵を掛ける。その足で、山本の背中を踏みつけた。
「佐納さん、こいつどうします?」
「俺の女抱いて何が悪いっ! 手ぇ離せっ! 人権蹂躙やでっ!」
「どの口が人権を語るんだよっ! てめっ」
「言ってやれよ、アキヒコちゃんっ! 俺のチ○ポで何十回イッたかっ! その卑猥な乳首吸われてどんだけヒィヒィ喘いだかっ! 浮浪者にたかられて失神するまで突き上げてもらったとかっ」
「なんだって?」
「ぁああああああーーーーーあああーーーーっっっ!」
 突然章彦が悲鳴をあげたので、榊は咄嗟にその口を押さえた。泣き喚く章彦をベッドに押し倒し、自分のウエアを脱いでその口に突っ込んだ。
 いつもはここまですれば収まったのに、まだ章彦は叫んでいる。寒風が吹き込んで来た。山本が、ドアを開けたまま逃げたらしい。
「ドアぐらい閉めていけあの野郎っ! 佐納さん、もうあいつはいませんから、落ち着いて……、落ち着いてください」
 章彦を抱き締めたまま、上から口と共におさえつける。
 章彦は、一晩中、叫び続けていた。
 山本に犯された後、浮浪者の群れに投げ込まれた。夏なら鼻も曲がるような臭いが立ち込めていただろう。ぼろ布の中に、沈んで、自分もぼろ布になった。
「こんな美人見たことないわっ!」
「突っ込めるなら誰でも良かったけど、男でもええわ!」
「すごっすごっ! こんな美人に突っ込めるやなんてっすごっ!」
「キスしよ! キスしよっ! 美人さんもっとキスしよっ!」
「凄い乳首っ! これ舐めた方がええんやんなっ! 美人さんっ気持ちええよなっ!」
「お乳でぇへんのかいっ! これ。どんな顔してここまで乳首こうなったんや。凄いなっ」
「タマ迄舐めてやっ美人さんの口でっ……あー、えー気持ちやー……たまらんわー」
「すべすべやぁ……すべすべすぎてたまらんわぁっ……たまらんわぁっ! 握られてるだけでたまらんわぁ……」
 無茶苦茶に突っ込まれた。人形のように手足をあちこちから引っ張られて、顔を揺さぶられて、汚いものに口を押しつけられた。舌を引っ張りだされてキスされ続け、鼻をつまんで呑み込まされた。膝の裏や肘の裏にペニスを挟んでしごかれた。
 文字通り、ボロ雑巾のように扱われたのだ。
 戻ってきてくれた山本が神の使いのよう感じた。
 もう、指一本動かない体力の限界の中、投げ込まれた苦界。
 地獄には底があるのだ、と知ったあの日。
 前山に犯された時には、気力が消えるのを押さえられなかったが今は違う。
 枕元で泣いくれていた母と祖母。
 目覚めた時に、その優しい手で頬を撫でられていた。
 あんなに、悲しんでくれた、いたわってくれた、親族。
 こんな所で、死体になるわけには、行かなかった。ボロ雑巾のような自分を、母に見せるわけには行かなかった。
 その気力一つで、持ちこたえただけだったのだ。
 あの、地獄を。
 けれど、地獄は地獄だった。
 せっかく記憶の底に沈めていたのに、山本の言葉でそれは章彦の目の前に、沸き上がったのだ。
「佐納さんっ! もういませんっ……あなたを犯す人はいませんからっ…………………早く、すべて忘れてくださいっ!」
 痙攣を起こすかのようにビクビクと跳ねる体を押さえて、榊はただ、そう願うしか無かった。

 数日後。
 章彦の郵便受けに写真が数枚、突っ込まれていた。
 山本と兼本が、巨大な黒人の男達にぼろぼろにされているものだった。兼本が寝ている時に、家が地下の配管からガス爆発を起こして爆死、山本は踏み切りに飛び込んでバラバラになった。
 その写真を見て榊の目の前で失神した章彦は、目覚めた時にその写真のことを何一つ、覚えてはいなかった。





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