R18、成人向け 凌辱系BL長篇小説 & 商業誌/同人誌紹介 サイトで読める小説有。晶山嵐個人誌情報

赤狼冴月_参_見本

サイト小説?

赤狼に喰らわれし冴月の如く 参』第一考 抜粋


 この日、史留暉はいつもは賀旨の将軍たちと食べる夕餉を、ナール・サスの天幕で一緒に食べた。暗くなってから史留暉は自分の天幕に帰る。天幕を出てしばらく行くと、リズナルが追い駆けてきていることに気づき、足を留めた。彼は肘から手首ほどの太さで大きさの白磁の筒を史留暉に差し出して一礼する。
「我が君に取り寄せた御酒ですが、今は気分ではないようなので、よろしければ殿下に味わっていただけないかと思い、お持ちしました」
 本当なら、他人からの流用など失礼千万だが、史留暉は『自分のため』に取り寄せられたものは遠慮して受け取らないときがある。この方が遠慮なく受け取ってもらえるのだ。
「ナール・サスがいらないというのならありがたくいただこう。久々にマリサスの強い酒で眠れるな。かたじけない」
「明日も殿下の頭上に御光りが輝きますように。良い夜を」
 一礼して下がったリズナルを見送って、史留暉は自分の天幕に下がった。将軍たちから今日の報告を聞いて、全員が下がったところで寝台に座り込んで一息ついた。
 なんとなく疲れていて躰がだるい。
 戦が頻発しているときは感じなかった。練兵も、一兵卒ではないから、朝から晩までするわけには行かない。躰を動かすよりも頭を動かす方が多くて意識が途絶していく。
 このまま眠ってしまいたいが、今晩は夕羅が来る、とナール・サスに言われているので床に就くわけにも行かない。節約のために灯を消して、天幕からすける月光のわずかな光りで、先程貰った酒を呑んだ。
 甘い。
 非常に甘い。
 マリサスの酒は確かに甘いものが多いが、これは甘すぎる。そのくせ、薬草がたくさんつけ込んであるのだろう妙な臭いもする。とりあえず、舌がしびれ、喉が焼かれる感覚だけを楽しんで嚥下した。不味いわけではない。史留暉が甘いものが苦手なだけだ。
 半分ほど暗闇の中で呑んでいると、馬のひずめの音がした。二井が夕羅を迎えている声。もう下がって良い、と言われて、二井が辞宜をしている気配。天幕の入り口から、夕羅が入って来た。
「なぜいつも暗い中にいる?」
 中を覗いて、夕羅が入り口でたたずんで呟いた。
 この時代、灯は簡単につけられるものではない。この史留暉の天幕であったならば、外の松明から火を貰ってこなければならない。
「暗い中にいるといらいらする」
「書を読んでいるわけでもありませんし、油がもったいないかと思ったからです」
 明るい中で俺を待っていろ、と言われているのだが、史留暉がそれに気付く筈も無い。
 天幕の布は白いから、月が出ている今、暗闇ではないが、他人の顔がまざまざとわかるほど明るくもない。史留暉は銀髪で肌が白いので闇にぼんやりと浮き上がっては見えるが、目の色やくちびるの色は分からない。夕羅など、全身が赤いので、史留暉から観ると闇の塊に見える。
「酒を呑む暇があるのなら、読め」
 天幕の隅に積み上がっている帛を夕羅が親指で指さした気配に史留暉が口を閉ざす。
「命令とあれば」
「それを読まないことで利が無いのは賀旨の住人だ。好きにしろ」
 いつもはこのまま入ってくるのに、夕羅は入り口で立ち止まり、外に出た。松明から火を取って戻ってくる。入り口と、枕元と、天井の灯台に火を灯した。一瞬、まぶしさに史留暉が閉じた目を開けたときには、天幕の中は昼間ほどではないものの、夕羅の赤い髪に留められている玉の数すら容易に数えられる明るさになっていた。二井がそこにいれば、僕がします! と走ってきたことだろう。
 明るい天幕を見回して、夕羅は寝台に座り込んだ。小卓の上座を夕羅に開けようと座を譲った史留暉は、寝台から卓を挟んで向こう側にいる。
 夕羅が来るときは、いつでも暗闇の中、そのまま寝台に押し倒されて……だった。この天幕で夕羅が落ちついて目の前に座っている姿など、史留暉は初めて見る。思わず自分の目の前にあった杯を空けようとして、そういえば夕羅に酒を出した方が良いのか、と杯を探して左右を見渡した。夕羅が来ると分かっていたのだから、最初に杯を用意しておけば良い、とも言えるし。いつもここで酒など呑んだことが無いのだから、やはりいらなかったのだ、とも言える。
 先程将軍たちが使った杯は、二井が洗いに持って出てしまった。天幕の入り口の方には、そういう用を足すように色々と小物があるが、元からそういう端仕事をすることが無かった史留暉は、自分でそれを取りにいく、とも頭が回らなかったし、そこにある、とも気付いてはいないだろう。どっしりと座ったままだ。
 それをわずかに夕羅が口許を笑いに歪めて眺めていることも思慮の外だった。
 相変わらず何か手の届くところに杯が無いか、とのんびりと天幕を見ている史留暉の目の前で、夕羅が酒瓶を取り上げて口を着けた。いつもならそのまま一気に飲み干してしまうのに、口をつけただけで夕羅が瓶を離した。
「マリサスの酒の中でもかなり甘い」
 夕羅も自分と同じで甘い酒が苦手なのだろうか、と史留暉が告げた。
「呑んだのか?」
 夕羅が瓶を振って残量を確認しているようだ。もう半分以上無い。
「はい。不味いと言うほどでもないし」
「女王様からもらったのか?」
「いえ、……ああ、彼に取り寄せたものだったけれど、飲まなかったから私に回ってきた、ので……直接私に渡したのはリズナルだ」
 夕羅が何度か小さく頷きながら、口の中で何か呟いた。
「日が経つと不味くなる酒だ。やめておけ」
「そのせいで妙な味なのだろうか? いつものマリサスの酒よりきついようで……少々酔ったようだ」
 そう言いながら、杯に残っていた酒を史留暉は煽った。
「呑むな、と言っているのに、なぜ呑む」
「ぁ? いえ……杯に残すのは失礼かと思っただけだが……なにか?」
「もう酔っているな」
「……そう……かも……これぐらいで私が酔うはず……無い、のだが……」
 くらり、と目眩を覚えて史留暉は額を指先で抑えた。
「マリサス製の強力な媚薬の酒だ」
「はい?」
「精力をつけるための薬だ。賀旨王は夜の役に立たない、と思われたらしいな」
 暑くなって来たので、史留暉は上掛けを脱いだ。額から頬へ、つらりと汗が伝う。息が荒くなっていく。白い頬が上気して艶があるが、そんなことを彼は気付いてもいないだろう。
「解毒剤があるか、聞いて来てやろう。二井をよこす。水でも飲んで寝ていろ」
 溜め息混じりに夕羅が立ち上がった。その足がこちらに向かうのかと、言葉が聞けていない史留暉がびくりとした。だが、赤い影が天幕を出て行き掛けているのに咄嗟に引き止める。
「なんのつもりだ?」
 白い指がからみついてる自分の足首を睨み落として夕羅が問いただす。
「ここに、いて、下さい……っ……」
 暑くてたまらなくて、史留暉は襟をくつろげた。夕羅がいなければ、全部脱いでしまうのに、理性など消えていく中で、それだけはしてはいけない、とどこかで分かっていた。
 すでに白い顔は桃色に上気し、くちびるは紅玉のように艶光っている。その中の小暗い影で梅の花の色が閃き、旭日はうるんで今にも溶けそうだ。
 すでに史留暉の腰は今までに無いほど硬くなり、衣を濡らしている。震える雪色の指先に、彼の体感はわかるが、そこで飛びつかないのが、夕羅大上将、という男だった。
「俺に、ここに、いて、ほしいのか?」
 視線で人が殺せるのならば、史留暉は今、惨殺死体になっただろう。
「それとも、マリサスの天幕に、行って欲しくないだけか?」
 マリサスの天幕? それが今、なんの関係が? と史留暉はようようの思いで夕羅を見上げた。
 酔っていて気付かなかったけれど、赤い肌から風圧を感じた。それがなんの意味か、とくに今の史留暉には分からない。
 この天幕から夕羅を出すな、と言われたのだ。マリサスは関係ないような気がする、と史留暉は首を横に振る。それに夕羅の視線が和らいだことを、俯いてしまった史留暉は知らない。
「ここを出て、雷軍に行く、言えば、満足か?」
 かすれた声が尚も聞いてくる。
 ああ、そう。ナール・サスが死ぬから引き止めろ、と言われたのだ。それを史留暉は思い出した。ナール・サスの所に行かず、侍衣牙の所に夕羅が行くのならば止める筋合いは無い。
 ふと、史留暉が夕羅の足を持っていた手から力を抜いた瞬間。史留暉の躰は天幕の向こうへ吹っ飛んだ。夕羅の足が、史留暉を蹴り上げたのだ。天幕の入り口にいる歩哨が飛び上がる。明らかに史留暉の危機だが、今、この軍隊で一番の権力を持つ夕羅がしたことだろう、それを止めに入る度胸は、彼らには無かった。夕羅の怒気が一瞬で吹きつけてきて、その場に腰を抜かしてしまいそうなのを辛うじて立っているだけで精一杯だ。
 わざとだろうけれど、寝台に背中からぶつかった史留暉は、もんどりうって目眩に前後左右が分からなくなる。
「マリサスの天幕に行くとしよう。今度こそ、あの紫の目を抉りだしてやる」
「駄目だっ!」
 寝台から跳び出した史留暉が、夕羅にぶつかる勢いで這い寄り、その足にまた抱きついた。
「ナール・サスが死ぬ! 駄目だっ」
「ああ、本当に殺してやる。その足で、紅渦全軍をマリサスに進軍させて、あのしみったれた残雪の城を破壊しつくしてやるわっ! 離せ!」
 酔った勢いで史留暉に両足を抱き締められ、夕羅こそが、立っているのに必死だった。
「私の咎で彼の命を左右はできないっ! なんでもするから思い止まってくれ!」
「離せ、」
「駄目だっ!」
「離せ」
「うっぐっぁっ……」
 史留暉は夕羅に抱きついた体勢で、後ろ髪を夕羅に握り上げられた。その赤い手は、史留暉を引き離そうとはしていない。ただ、苦痛を与えるためだけのように、真上に銀糸を引っ張り上げた。
 頭皮が剥がれそうな激痛に、史留暉が呻くが、その両手は強く夕羅を抱き締めたままだ。
「逆らうな、と、言ったな?」
 先程激昂していた筈のかすれた声が、しん、と静まり返った冬の湖のように深く、天幕に満ちていく。
 逆らうな、と確かに史留暉は言われたことがある。黒曜城落城の翌日だ。
 あの、脱走したときでも言われなかった。
 夕羅が激怒している。
 夕羅から感じる圧に、史留暉はようやく気付いた。まだうるさかった天幕の外、辺り一体がシンと静まり返る。みんな、その圧の方向を見るために、史留暉の天幕の方を見たのだ。
 脱走したときの比ではない。まさしく、黒曜城落城の翌日の、あの血も凍るような絶対零度の怒りだ。
 本当に、今度こそ、頭皮を剥がれ、目を潰されて皇位を剥奪されるかもしれない。
 けれど、だからこそ。それにナール・サスを連座させるわけには行かなかった。
 ここで死ぬのならば、せめて朝まで、骨になってもすがりついてやる。それでナール・サスの命は一日伸びる。彼のことだからその間に逃げることもできるだろう。
 なぜ今、夕羅が怒ったのか。そんなこと、史留暉は分からなかった。知ろうとも思わなかった。考える隙など無い。ただ、手の力を弱めれば、即座に夕羅は出て行ってしまう。
 あの綺麗なナール・サスの首が宙を舞う姿を、想像力の無い史留暉にもありありと目に浮かんだ。







こんなシーン、2を書いたときは無かったのに……
史留暉さんって本当、勝手に動いてくれる人だ……

早く予定のエロシーンを書かせてくれよーっ!
(2を書こうと思ったきっかけの、『予定のエロシーン』はこの数カ月後のできごとです……)

はー……

↑は第一考なので、本ではどう変わるか、お楽しみください(笑)
こんなふうにガーッと勢いのまま、書いて、後でちょこちょこ修正します。

史留暉さんは、書けば書くほど……
のんびりした人です。
ナール・サスじゃなきゃつきあえませんね。はい。

商業誌の方で、かっこいい史留暉を好きになっていただいた方には申し訳ありませんが……あの時から、実は彼はこうでした。
『1』はずっと殺伐としていたので、そこらへんが出るエピソードが無かっただけです。

平和なときの史留暉さんは、非常に天然であらせられます。

戦にしか興味のない美人さん。
書いてて非常に楽しいです。ナール・サスとか夕羅がいらいらしているのが、また楽しい♪

好きになっちゃったものはしょうがないのよねー


赤狼に喰らわれし冴月の如く 参

そのほかの赤狼シリーズ

モデルは『春秋戦国時代ぐらいの大陸』。歴史小説調。

no.  誌   名   発行日内容計 16,000円
1赤狼に鍛えられし
        銅の如く
2007/12紅渦軍将軍侍衣牙
紅渦軍誕生秘話 /黒蝶とリンク
126P/ 1200円
2赤狼に砕かれし
        蠍の如く
2008/05砂漠の王子ジャラード
悲劇編(ショタ)
100P/ 1000円
3赤狼にとかされし
      凍湖の如く
2008/08山上の孤国耽美王
ナール・サス
196P/ 2000円
4赤狼に砕かれし
      蠍の如く 弐
2008/10制圧された砂漠の王子
ジャラード
132P/ 1300円
5赤狼に喰らわれし
    冴月の如く 弐
2008/12史留暉、紅渦軍と行軍
賀旨王/曜嶺皇家皇太子 
※壱は商業誌
112P/ 1100円
6赤狼に炙られし
      黒蝶の如く
2009/05美貌の軍師京守誕生編
とリンク
196P/ 2000円
7赤狼に喰らわれし
    冴月の如く 参
2009/08史留暉・王都制圧
本文第一項 抜粋
132P/ 1300円
8赤狼に喰らわれし
    冴月の如く 四
2010/10史留暉・皇太子としての暮らし
本文見本
史留暉編(今のところ)完結
128P/ 1300円
9赤狼に煽られし
    烈火の如く
2010/12黄金の少年皇帝沙射78P/ 800円
10新刊赤狼に煽られし
    烈火の如く 弐
2011/5黄金の少年皇帝沙射編 弐196P/ 2000円
11新刊赤狼に護られし
    温石の如く
2011/5キラ・シの山でのル・ア生い立ち編196P/ 2000円

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