【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。147 ~ガリメキアとル・マの子~”

 

 

 

 

  

 

  

 

 ル・マちゃんの子は男の子。

 ガリさんが、紅で左頬にキラ・シ紋を描いて、それに口接けた。

 その子を、マキメイさんが布でぐるぐるまきにして、サル・シュくんに渡す。

 サル・シュくんが、毛皮の服……着てる? なんで?

「どこに行くのサル・シュくんっ! ル・アくんどこにつれてくのっ!」

「山に、戻す」

「え?」

「ル・アは山で育てる」

「えっ? いつまで?」

「四年」

 ガリさんが私を抱き締めてるのに、サル・シュ君は振り返らない。

「四年っ? ……えっ? どういうこと?」

 サル・シュくんは、出て行った。

 ル・マちゃん、まだ、そこにいる……のに…………

「ダメよっ! そんな赤ん坊、馬で移動させるなんてっ! 死んじゃうっ! サル・シュくんっ! 戻ってきてっ! せめて半年ぐらいここで育てないと!」

「そのために、頭まで棒を通して、グルグル巻きにしてあります」

 マキメイさんも抱きしめてくれたけど……だって……

「そんな……だって…………なに……どうして? ……ル・マちゃんっ…………ル・マちゃんっ! ル・アくん連れて行かれちゃったよっ! ル・マちゃんっ!」

 泣いていいの私じゃない。

 本当に泣きたいの私じゃない。

 それは、わかってる……けど…………

「ル・マちゃんっ…………ル・マちゃんっ…………ル・マちゃん………………ル・マ……ちゃ……ん………………」

「死んだ」

 ガリさんが抱きしめてくれて、私だけ、泣いた。

  

 

  

 

  

 

 ガリさんはル・マちゃんを抱いて出て、一人で帰って来た。

  

 

  

 

  

 

「死んだら埋めてくれ『その世』で待ってる…………ル・マが、そう、言っていた」

「どうして『その世』?」

 地獄でしょ?

「『あの世』はたくさんあるが、『その世』は一つだから」

 そっか…………それなら、必ず、会える、よね。

 会える……よね………………

  

 

  

 

  

 

 ル・マちゃんとサル・シュくん、二人が同時にいなくなって、キラ・シは火が消えたよう。

 毎日、泣きながらガリさんに抱かれて初めて眠れた。

 ガリさんも悲しいと思うけど、付き合ってくれる限りは甘え尽くした。一人でなんて寝られなかった。何もかもが怖くて……サル・シュくんがいないのが怖くて……

 泣き続けて、少しの間、目が見えなくなった。

 キラ・シでたった一人、女の子だったル・マちゃん。

 ずっと一緒にいた。ずっと左手を抱きしめてくれてた。

 それで、わかったことが、ある。

 妊娠して抱かれても、赤ちゃんは大丈夫、ってこと。

 サル・シュくんの時に分かってたから、ガリさんも、何回かは断られたけど、抱いてくれてた。

 ガリさんの子だからかな?

 運なのかもしれないけど、一人で立ってることはできなかった。

  

 

  

 

  

 

 キラ・シの制圧は、ナガシュを越えて、ラスタートまで及んでた。

「馬にのる部族がいるっ!」

 帰って来た戦士が馬を降りるのもそうそうにそう騒いだことで、全員が大挙してそっち行ったんだ。

 多分、暗いこのお城に居たくなかったってのもあると思う。

 なんか……あの時みたい。

 レイ・カさんの時に自殺した、あのあとみたい。

 あの時は静かだったけど、今は、全世界が豪雨の中にあるみたい。

 声が、殆ど聞こえない。暗くてよく見えない。

 でも、四年って長いね。

 ガリさんの子供を五人産んでたら、雨はやんでた。

 まだ世界は曇り空だけど、声はよく聞こえるようになった。

 だから、わかったのかな?

 ガリさんが……いなくなった。

「……ガリさんは?」

 玄関で聞いたら、リョウさんみたいな人がナニカ、言ってる……

「山へ、サル・シュとル・アを迎えに行った」

「そう……」

 私をおいて、行っちゃったんだ?

 また……豪雨に……なった……

  

 

  

 

  

 

  

 

「ハルっ! ハル! 起きてーっハルーっ!」

 雨が、やんでた。

 凄い、明るい……

 雲が……晴れた……?

「えっ? サル・シュくん?」

 真っ白い美人。でも、凄く、『男の人』になってる。

 サル・シュくんのお兄さんって言われたら信じそう。

「帰って来たよ、ハル」

 チュッ、てしてくれて、額をコツン、てしてくれて…………ニコッ……って…………

「具合悪かったって? どう?」

「治った」

 私の天使が帰って来たっ!

「サル・シュくんっ! 勝手にいなくなってっ! 馬鹿ーっ!」

「ごめんごめん。ハルが止めるのわかってたから、みんなで黙ってたんだ。リョウ叔父が何回も話したって言ってたけ……ど……むぐっ!」

 私から押し倒した。

  

 

  

 

  

 

 あら? 私とサル・シュくんの間に誰かいる。

 リン? ミル? マキ? セイ? ヨキ? マツ? この大きさは四才ぐらいだから、マキ? いつも子供部屋にいるのに、珍しい……

 とりあえず、羅季(らき)のお城からついてきた女の人達みんなそれぐらいの数の子供がいるし、山から降りてきた子たちもいるし、子供は一括りにみんな一緒に寝起きしてる。

 キラ・シは山でも『子供館』ってところに子供を寝かせてたらしい。自分と一緒に寝かせるのは族長だけだって。

 私は相変わらず、家事も育児も何もしてない。

「マキちゃん? どうしたの?」

「誰だよ、それ」

「んー? 3人目の……」

「ガリメキアの子?」

 朝日を浴びた天使がピカーッ……てしてた。

 目に痛いほど白い、綺麗………ああ…………世界が広いっ!

 神様ありがとうっ! 私の天使は今日も綺麗です!

「…………誰、これ?」

 すっごいかわいいけど、間にいた子、知らない子だわ。

 白いなー。

「サル・シュくんの子? ここで育てるの?」

 今さら一人二人増えたっていいけど、なんでここに連れてくるかなー……

「ル・アだよ」

「…………誰?」

「ル・ア。ガリメキアとル・マの子」

  

 

  

 

  

 

 

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