”【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。171 ~死亡フラグ~”

 

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

 こんな危険な世界で不眠症でフラフラしてるとか、もう死亡フラグよね……

 なんかうつらうつらはしてるんだけど、ぐっすり眠れてなくて、ただ、疲れて、起き上がれない。

 サル・シュくんが一晩中抱きしめてくれてて、ゆーらゆーら揺れてるの。

「寝てよ、サル・シュくん」

「昼間寝たから、眠くない」

 たしかに、池で水没しそうになってるのは見たわ。

 どこででも眠れるから、いつも元気ね。私も、けっこう、いつも昼寝できてたんだけどな……

 地図のそばに、私が転がれるように、クッション一杯のベンチをおいてくれてるし。起きたときに戦士が一杯囲んでてびっくりしたり、重しを乗せられた夢で飛び起きたら毛布一杯掛けられてたりとか。

 こういうときは、運動しないと…………摩雲(まう)に来てから一日100歩も歩いてない筈……散歩から、しないと……

 真剣に考えてるのに、天使がヒラヒラして笑ってしまう。今日も綺麗だわ。私のサル・シュくん。大好き。

 サル・シュくんが、私の飲んでるお薬を初めて舐めたみたい。外国人が梅干し食べたみたいな顔してる。

「こんなのハル飲んでるの? ナニこれ……」

 本当に泣いた。かわいいから、やめて……

「お薬よ」

「にがい……」

「お薬だから」

「こんなのハルが飲むのかわいそう。半分こしよ?」

「お薬だから、私が全部飲まないと駄目なのよ」

「にがいよ?」

「うん…………でも、ちょうだい?」

「飲むの? コレ?」

 まだ泣いてる。

 もう……かわいいなぁ…………

 そういえばサル・シュくん、甘いとかからいは気にしないけど、苦いのは嫌いだったわね。詐為河(さいこう)の水とか、えぐみのある塩味は駄目だったんだ。

 翌日からは、お薬がお茶で割られてた。

 ん? 液体が……揺れない…………

 これって、蜂蜜?

「これなら甘いよっ!」

 確かに、甘いよね。きっと、凄く甘いよね。

「ありがとう、サル・シュくん」

 グラス一杯の蜂蜜一気飲み!

 サル・シュくんが凄く嬉しそうに抱きしめてくれたから、胸焼けは、見ないふりをした。

 多分、すぐ寝たのは血糖値振り切ったんだろうな。

 カロリーを取ってすぐ寝たからかな、翌日は凄く元気になったわ、私。ちゃんと眠れるようになった! よし!

「サル・シュくん、歩きたい」

「なんで?」

 いつも思うけど、なんでキラ・シは『歩きたい』なんて希望に『なんで?』って返してくるの? 自分だって抱えられてたらいやでしょ?

 もう、どこに行くにもサル・シュくんの左肘にいる私。サル・シュくんも白いから外を歩けなくて、お城の中をうーろうろ。というより、ずっと私にくっついてる。濡れ落ち葉族みたい。

 じっとしてるとそのうち暴れるから、一人でできる筋トレを教えたら、すごいキラ・シにはやった。

「歩かないと、どんどん私、弱くなっちゃうよ?」

「ずっと抱いて歩いてやるから大丈夫!」

 輝く笑顔! かわいい……じゃなくて。

「そうじゃないの。足腰弱くなったら、サル・シュくんの赤ちゃん産めなくなっちゃう」

「…………そうなの?」

「そうなの」

 凄い不満顔。くちびる突き出して、にゅっとするのもかわいい。

「あと十人ぐらい、欲しいでしょ?」

「うん」

 笑顔っ! 本当に、サル・シュくんって、百面相凄い。

「それなら、今からちゃんと歩いておかないと、私がすぐに死んじゃうよ?」

「えっ! それは駄目っ!」

 やっと下ろしてくれた。

 まるで、サル・シュくんが歩く練習をしてるみたいに、両手で私の手を握って、そろそろ歩いてくれる。

 遠征と鍛練で疲れてるはずなのに。

 摩雲(まう)は、中天でもそんなに暑くはないから、サル・シュくんと夜明け間際に城壁のフチをお散歩してる。手を握って歩くとか、彼はしたことがなかったみたいで、なんか、凄く、喜んでくれた。

 子供が六人もいるのに、今さら、学生デートみたい。

 ……と思ったけど、指を絡ませて手をつないだら、サル・シュくんの指が太いからエンピツ挟んだ拷問みたいになって痛い痛いっ! だから、指をまとめて握ってもらった。なんかもっと、学生気分。って、私、彼氏居たことないから、学生も大人もわかんないけど……まぁ、大人の方はわかるよね? 子供産んだし。

 サル・シュくんが、戦の話をずっとしてくれて楽しい。私には、見られない世界だから。

 ある日。

 ちょうど、お城の裏辺りに来たときに、突然、ゾクッとした。

「どうしたのハル」

「なんか……寒け、が……あ……」

 内股にブシュッと吹き出して、滑り落ちてく、熱い……の…………

 咄嗟にスカートを捲り上げたら、やっぱり血だった。

「ああ、ハル……」

「やだっ! サル・シュくんの子が出てっちゃうっ!」

「ハル? 違うっ」

 そうだ。前のときでも私、凄い出血してたって言ってた。貧血だ。この、具合の悪いの、貧血だ!

 こんな古代でっ、鉄剤もないのに、どうしたらいいのっ!

「血がっ……足りなくなっちゃうっ!」

「ハルっ! これは血の道の血だ! 怪我じゃないっ!」

「え?」

 血の道? 生理?

 どうして?

 パンッ……て音は、後で聞こえた。

 サル・シュくんの顔に、平手打ち、してた。

「どしたの? ハル……」

「なんでっ!」

「ハル?」

「どうしてっ! 血の道なんて来るのよっ!」

「どうして……って…………え?」

「なんで孕んでないのっ!」

「…………ハルが…………治ってない、から……?」

「サル・シュくんが抱いてくれないから治らないんじゃないのっ!」

「なんでっ?」

「なんで抱いてくれないのっ! もう私のこと嫌いになった?」

「大好きだから、こうして歩いてるよ?」

「やだやだっ違うっ! 早く抱いてよっ!」

「ここで?」

「抱いて抱いて抱いてっ! 他の女の人なんて抱かないでっ! 私だけを抱いていてよ!」

 私から、サル・シュくんの首を引き寄せて口接けた。

  

 

  

 

  

 

 

 

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