【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。173 ~『全員集合』~

 

 

 

 

 

 手をつないで『サンポ』、だって。

 ただ、ゆっくり歩くだけ。

 凄くじれったくて、走りたくて、右半分がイライラするけど、ハルの手を握ってる左半分は気持ちいい。

 凄く遅い。でも、これがハルの速さ。

 ハルはきっと、こんな速さで全部が進むと、凄くいいんだろうな。それでいうと、10倍以上早いよな、キラ・シって。

 地図の前では大声張り上げてるけど、こんなに静かで二人きりだと、凄く声が小さいハル。

 今、なにもかも、ハル。

 速さも、声も、……みんなには向けない顔で笑ってくれる。

 今すぐハルを抱き上げて走り回りたい。こんなに歩いてるのに、まだこれだけしか進んでない。

 ゆっくり。

 ハルとゆっくり。

 俺じゃないみたい。

 面白い。

 戦のことを一杯話した。ハルが凄く楽しそうに笑ってくれたから、凄く嬉しくて、ぽかぽかした。

 暑いのとは違って、ぽかぽかって気持ちいい。

 ガイヘキ(街壁)の内側。ジョウヘキ(城壁)の外側。だから、誰もいない。

 俺とハルだけ。

 二人だけ。

 手をつないでたハルがふらっとあっちによろけた。

「どしたのハル? 頭痛い? ヘヤに帰る?」

「なんか……寒け、が……あ……」

 ハルがスカートをまくり上げたら、内股に血が流れてた。

 これ、鮮血のニオイじゃぁ、ない。

『血の道が来た翌月まで抱くな』

 リョウ叔父からそう言われてた。

 そっか、血の道がきたんだ?

 ちょっとハルの体治ったんだ、と思ったのに……殴られた。

 全然痛くないからそれはどうでもいいけど、どしたの? ハル。

「どうしてっ! 血の道なんて来るのよっ!」

「どうして……って…………え?」

 治って来たから……だろ?

「なんで孕んでないのっ!」

「…………ハルが…………治ってない、から……?」

「抱いて抱いて抱いてっ! 他の女の人なんて抱かないでっ! 私だけを抱いていてよ!」

 首を引っ掴まれて、口に噛みつかれた。

 噛んだ、わけじゃ、ない、けど…………ちょっと………………

「……離して、ハル…………」

「やだっ、今すぐ抱いてよっ! サル・シュくんの子がいたら私普通なんだもんっ! 元気になれるよっ! 子供がいないからおかしいんだよっ!」

 そんなことある?

 ある?

 あるの?

「私が寝るまで毎晩抱き潰してっ!」

 目の前が、カッ……と赤くなった。

 やっちゃったー……

 こんなシロの裏で、ハルを抱いちゃったー……立ったまま……

「キラ・シ全員に殺される」

 寝ちゃったハルを抱きしめて、どっちからシロに帰ろうかと思ったら、馬に乗ったレイ・カが、弓をつがえて俺を狙ってた。

 ヒャーッ!

 ハルのスカートも、俺の足も、血まみれ。噛みつかれたから、ハルの顔も血まみれ。多分俺の顔もだ。

「言い訳は?」

「……ハルを寝かせたい……」

 レイ・カが指笛で……『全員集合』掛けやがった……

  

 

  

 

  

 

 

 

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