手をつないで『サンポ』、だって。
ただ、ゆっくり歩くだけ。
凄くじれったくて、走りたくて、右半分がイライラするけど、ハルの手を握ってる左半分は気持ちいい。
凄く遅い。でも、これがハルの速さ。
ハルはきっと、こんな速さで全部が進むと、凄くいいんだろうな。それでいうと、10倍以上早いよな、キラ・シって。
地図の前では大声張り上げてるけど、こんなに静かで二人きりだと、凄く声が小さいハル。
今、なにもかも、ハル。
速さも、声も、……みんなには向けない顔で笑ってくれる。
今すぐハルを抱き上げて走り回りたい。こんなに歩いてるのに、まだこれだけしか進んでない。
ゆっくり。
ハルとゆっくり。
俺じゃないみたい。
面白い。
戦のことを一杯話した。ハルが凄く楽しそうに笑ってくれたから、凄く嬉しくて、ぽかぽかした。
暑いのとは違って、ぽかぽかって気持ちいい。
ガイヘキ(街壁)の内側。ジョウヘキ(城壁)の外側。だから、誰もいない。
俺とハルだけ。
二人だけ。
手をつないでたハルがふらっとあっちによろけた。
「どしたのハル? 頭痛い? ヘヤに帰る?」
「なんか……寒け、が……あ……」
ハルがスカートをまくり上げたら、内股に血が流れてた。
これ、鮮血のニオイじゃぁ、ない。
『血の道が来た翌月まで抱くな』
リョウ叔父からそう言われてた。
そっか、血の道がきたんだ?
ちょっとハルの体治ったんだ、と思ったのに……殴られた。
全然痛くないからそれはどうでもいいけど、どしたの? ハル。
「どうしてっ! 血の道なんて来るのよっ!」
「どうして……って…………え?」
治って来たから……だろ?
「なんで孕んでないのっ!」
「…………ハルが…………治ってない、から……?」
「抱いて抱いて抱いてっ! 他の女の人なんて抱かないでっ! 私だけを抱いていてよ!」
首を引っ掴まれて、口に噛みつかれた。
噛んだ、わけじゃ、ない、けど…………ちょっと………………
「……離して、ハル…………」
「やだっ、今すぐ抱いてよっ! サル・シュくんの子がいたら私普通なんだもんっ! 元気になれるよっ! 子供がいないからおかしいんだよっ!」
そんなことある?
ある?
あるの?
「私が寝るまで毎晩抱き潰してっ!」
目の前が、カッ……と赤くなった。
やっちゃったー……
こんなシロの裏で、ハルを抱いちゃったー……立ったまま……
「キラ・シ全員に殺される」
寝ちゃったハルを抱きしめて、どっちからシロに帰ろうかと思ったら、馬に乗ったレイ・カが、弓をつがえて俺を狙ってた。
ヒャーッ!
ハルのスカートも、俺の足も、血まみれ。噛みつかれたから、ハルの顔も血まみれ。多分俺の顔もだ。
「言い訳は?」
「……ハルを寝かせたい……」
レイ・カが指笛で……『全員集合』掛けやがった……
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