【ハルナ】
「すっっっごい、よく寝た!」
ガバッと跳ね起きることはできなかったけど、バチッと目が開いたわ。なんだろう、この凄いスカッと感。
「……それはようございました。ハルナ様。朝御飯をお持ちしていますが、召し上がりますか?」
「うん、なんか、凄い食べたい。一杯食べたい」
そうだよ、貧血なんて、生理がこなければならないんだよ。ずっと妊娠してれば、生理痛だってないし、貧血にもならないんだ!
「本当にたくさん召し上がりましたね。わたくしも安心いたしましたわ!」
「マキメイさんがいてくれると凄く元気になれるのっ! いつもありがとうっ!」
「まぁ、嬉しいことをおっしゃってくださること。
……お伝えするのはどうかと思いましたけど……」
って、マキメイさんが教えてくれたから、慌てて玄関に下りた。
ボロ雑巾みたいになったサル・シュくんが、床に正座してる。土下座になってて、目から床に、直接涙がたまってた。みんな気にせず、短冊刺してる。
『ゴメン寝』になってて、超カワイイッ!!!! 350度動画撮りたい!! というのは、今は、おいておいて……
「どうしたの? なんでサル・シュくんこんなことになってるの? 誰かっ! リョウさん!」
「少なくとも来月までハルを抱くなと言ってた!」
歩いてきたリョウさんが、腕を組んで顎をそびやかして怒鳴る。
「私、もう治ったよ?」
なんか、リョウさんがむがむが……って言葉を濁した。ナニ?
「昨日まで、ふらふらしていただろうが」
「うん……だから、サル・シュくんに抱いてもらって、治ったの」
「はっ?」
なんか、説明するのが面倒になったので、私もサル・シュくんの隣に正座した。
「ハル……なんでっ、やめろよ! ぎゃっ……」
サル・シュくんがぎりぎり動ける範囲で私を見て、悲鳴を上げる。
「どうして? 私がサル・シュくんを誘ったんだから、同罪でしょ?」
私が起きたと聞いた子供たちが来て、私とサル・シュくんとリョウさんを、見て、みんな、私の隣に正座した。ル・アくんまで!
「ちょっと……リョウ叔父っ、ハル立たせてっ! 俺、動けないからっ!」
「……いや………………ハルから誘ったのなら、ハルも同罪だ。しばらくそうしていろ。だが、下にくっしょんは敷け。冷えたら困る」
「俺の下にも敷いて……?」
クッションの上に正座って、なんか私、大仏様みたいになってる。
私の前にリョウさんがかがんで、真正面から睨まれた。
目の前がリョウさんで埋めつくされた。しゃがんでも私より大きいから、窓が後ろで……
真っ暗! な中に、白目だけギラッて………………メッチャ……怖い…………
このままリョウさんがうっかりこっちにこけたら、100%圧殺される迫力も怖い。
『闇』って分厚いんだなぁ…………リョウさんの体分の、『闇』。ゴツイ。暗いだけなのに重い!
「ハル……みんなお前を心配した」
「……ごめんなさい」
「昨日も、サル・シュがお前を血まみれにしていて、どれだけ驚いたかわかるか?」
「ごめんなさい! 血の道が来てたのは分かってたんだけど、……でも、本当に、私が抱いて、ってねだったの。サル・シュくんは悪くないのよ」
「我慢しなかったサル・シュが悪い」
それを言われると…………どうしようもない………………
「体は大丈夫なのか?」
「悪そうに見える?」
「…………いや…………」
両脇から正座の苦鳴が聞こえてくる。
「うん、サル・シュくんと一緒にいられなかったから、体が悪くなったんだと思うの」
リョウさんが、長いこと私を見て、サル・シュくんをちらっと見た。『ごめん寝』がもっと小さくなって、それで、ヒッヒッ……て泣いてるの、かわいすぎる。でも、今頭撫でたら、しびれが痛いだけだろうから我慢。我慢。
「心配したのだ」
どすん、とリョウさんの闇。
「うん、分かってる。ありがとう。
でも、もう大丈夫だから。心配してもらってありがとう。私も、初めてのことばっかりで、いろいろあるけど、今後も、よろしくお願いします」
両手をついて頭を下げた。
しばらくして顔を上げたら、玄関にみっちり戦士が詰まってた。
なんでこの人数が集まってこんなに静かなの? キラ・シ怖い。
結局、あのあとすぐサル・シュくんの正座も解かれたんだけど、起き上がれないわよねー。子供たちも、折り重なるように横に倒れて震えてる。
「はい、サル・シュくんこっちのクッションにゴロンして?」
私が立ってサル・シュくんを倒したら、オオーッ! って歓声が上がった。ナニ? 敵襲?
「ハル。今、あれだけセイザしていたのに、痛くないのか?」
リョウさんが、立ち上がってくれたから明るくなったけど、ソコ?
「母上凄いっ!」
「ハル凄いっ!」
子供たちとル・アくんまで目をキラキラさせてる。
「だから、これって私の部族では普通の座り方なんだってば」
なぜか、部族三位の称号を頂いてしまった……
日本部族の名前を挙げてしまったわ……
しびれない正座の座り方があることは、内緒。
「ハル、本当にセイザで痛くないのか?」
夜、サル・シュくんが疑問を投げてきたから、ベッドに正座した。
「あの時、私だけクッションがあったし、下が柔らかければ全然平気」
「ホントに?」
サル・シュくんも私の前で正座。
なんでベッドイン前に二人で正座して見つめ合ってるんだろう……? と思ったけど、二秒も経たずにサル・シュくんがしくりと泣いた。
「足伸ばして! 別にここでしなくていいんだから、泣く前にやめなさいよ!」
「……動けない…………」
なんて小さな声!
しくしく泣くサル・シュくんがかわいすぎてキスしちゃった。
ああもうっ! 私の旦那が今日も天使!
朝日のサル・シュくん、キラキラーっ!
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