【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。174 ~日本部族の名前~

 

 

 

 

 

 【ハルナ】

 

  

 

  

 

「すっっっごい、よく寝た!」

 ガバッと跳ね起きることはできなかったけど、バチッと目が開いたわ。なんだろう、この凄いスカッと感。

「……それはようございました。ハルナ様。朝御飯をお持ちしていますが、召し上がりますか?」

「うん、なんか、凄い食べたい。一杯食べたい」

 そうだよ、貧血なんて、生理がこなければならないんだよ。ずっと妊娠してれば、生理痛だってないし、貧血にもならないんだ!

「本当にたくさん召し上がりましたね。わたくしも安心いたしましたわ!」

「マキメイさんがいてくれると凄く元気になれるのっ! いつもありがとうっ!」

「まぁ、嬉しいことをおっしゃってくださること。

 ……お伝えするのはどうかと思いましたけど……」

 って、マキメイさんが教えてくれたから、慌てて玄関に下りた。

 ボロ雑巾みたいになったサル・シュくんが、床に正座してる。土下座になってて、目から床に、直接涙がたまってた。みんな気にせず、短冊刺してる。

『ゴメン寝』になってて、超カワイイッ!!!! 350度動画撮りたい!! というのは、今は、おいておいて……

「どうしたの? なんでサル・シュくんこんなことになってるの? 誰かっ! リョウさん!」

「少なくとも来月までハルを抱くなと言ってた!」

 歩いてきたリョウさんが、腕を組んで顎をそびやかして怒鳴る。

「私、もう治ったよ?」

 なんか、リョウさんがむがむが……って言葉を濁した。ナニ?

「昨日まで、ふらふらしていただろうが」

「うん……だから、サル・シュくんに抱いてもらって、治ったの」

「はっ?」

 なんか、説明するのが面倒になったので、私もサル・シュくんの隣に正座した。

「ハル……なんでっ、やめろよ! ぎゃっ……」

 サル・シュくんがぎりぎり動ける範囲で私を見て、悲鳴を上げる。

「どうして? 私がサル・シュくんを誘ったんだから、同罪でしょ?」

 私が起きたと聞いた子供たちが来て、私とサル・シュくんとリョウさんを、見て、みんな、私の隣に正座した。ル・アくんまで!

「ちょっと……リョウ叔父っ、ハル立たせてっ! 俺、動けないからっ!」

「……いや………………ハルから誘ったのなら、ハルも同罪だ。しばらくそうしていろ。だが、下にくっしょんは敷け。冷えたら困る」

「俺の下にも敷いて……?」

 クッションの上に正座って、なんか私、大仏様みたいになってる。

 私の前にリョウさんがかがんで、真正面から睨まれた。

 目の前がリョウさんで埋めつくされた。しゃがんでも私より大きいから、窓が後ろで……

 真っ暗! な中に、白目だけギラッて………………メッチャ……怖い…………

 このままリョウさんがうっかりこっちにこけたら、100%圧殺される迫力も怖い。

『闇』って分厚いんだなぁ…………リョウさんの体分の、『闇』。ゴツイ。暗いだけなのに重い!

「ハル……みんなお前を心配した」

「……ごめんなさい」

「昨日も、サル・シュがお前を血まみれにしていて、どれだけ驚いたかわかるか?」

「ごめんなさい! 血の道が来てたのは分かってたんだけど、……でも、本当に、私が抱いて、ってねだったの。サル・シュくんは悪くないのよ」

「我慢しなかったサル・シュが悪い」

 それを言われると…………どうしようもない………………

「体は大丈夫なのか?」

「悪そうに見える?」

「…………いや…………」

 両脇から正座の苦鳴が聞こえてくる。

「うん、サル・シュくんと一緒にいられなかったから、体が悪くなったんだと思うの」

 リョウさんが、長いこと私を見て、サル・シュくんをちらっと見た。『ごめん寝』がもっと小さくなって、それで、ヒッヒッ……て泣いてるの、かわいすぎる。でも、今頭撫でたら、しびれが痛いだけだろうから我慢。我慢。

「心配したのだ」

 どすん、とリョウさんの闇。

「うん、分かってる。ありがとう。

 でも、もう大丈夫だから。心配してもらってありがとう。私も、初めてのことばっかりで、いろいろあるけど、今後も、よろしくお願いします」

 両手をついて頭を下げた。

 しばらくして顔を上げたら、玄関にみっちり戦士が詰まってた。

 なんでこの人数が集まってこんなに静かなの? キラ・シ怖い。

 結局、あのあとすぐサル・シュくんの正座も解かれたんだけど、起き上がれないわよねー。子供たちも、折り重なるように横に倒れて震えてる。

「はい、サル・シュくんこっちのクッションにゴロンして?」

 私が立ってサル・シュくんを倒したら、オオーッ! って歓声が上がった。ナニ? 敵襲?

「ハル。今、あれだけセイザしていたのに、痛くないのか?」

 リョウさんが、立ち上がってくれたから明るくなったけど、ソコ?

「母上凄いっ!」

「ハル凄いっ!」

 子供たちとル・アくんまで目をキラキラさせてる。

「だから、これって私の部族では普通の座り方なんだってば」

 なぜか、部族三位の称号を頂いてしまった……

 日本部族の名前を挙げてしまったわ……

 しびれない正座の座り方があることは、内緒。

「ハル、本当にセイザで痛くないのか?」

 夜、サル・シュくんが疑問を投げてきたから、ベッドに正座した。

「あの時、私だけクッションがあったし、下が柔らかければ全然平気」

「ホントに?」

 サル・シュくんも私の前で正座。

 なんでベッドイン前に二人で正座して見つめ合ってるんだろう……? と思ったけど、二秒も経たずにサル・シュくんがしくりと泣いた。

「足伸ばして! 別にここでしなくていいんだから、泣く前にやめなさいよ!」

「……動けない…………」

 なんて小さな声!

 しくしく泣くサル・シュくんがかわいすぎてキスしちゃった。

 ああもうっ! 私の旦那が今日も天使!

 朝日のサル・シュくん、キラキラーっ!

  

 

  

 

  

 

 

 

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