【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。191 ~松岡修三バリに熱い!~

 

 

 

 

  

 

「サガ・キさんはなんて?」

「俺はキラ・シのために死に物狂いで働くから、その俺を見ろ。俺を見て、キラ・シの輝ける未来を思えるようにしてやる……って」

 熱い!

 松岡修三バリに熱い!

「だからあいつはいつでも、敵を倒したら俺に見せに来る。

 返り血を浴びて笑うあいつの顔しか、もう、思い出さない……」

 クスクスクス……って、サル・シュくんが笑った。

「今のキラ・シは、いいやつしか、いない……」

 ギューッと私を抱き締める。

「気持ち、いい……」

 珍しく、せずに寝てしまったサル・シュくん。

 そっか。

 山には気持ち悪い人がいたんだね。

 ル・アくんを育てるときに、その人達と一緒に居たんだよね。

 でも、吹っ切れたのかな?

 ガリさんは、サル・シュくんのそのトラウマを消すためにも、彼を山に送ったのかな。

 本当にキラ・シって、いい人ばかり。

 でも……夕羅(せきら)くんに滅ぼされるのよね……

  

 

  

 

  

 

  

 

 賀旨(かし)を出ていくつか国を越えて煌都(こうと)に入ったら、やっぱりいろいろ大変だった。

 まず、誰もが羅季(らき)礼をしてくるから、どれだけキラ・シが、重鎮から書記官から、誰彼無しに殺したか。

 先に羅季礼をしないで、って私とル・アくんでずっとお願いしてたのに……

「羅季礼は殺さなくなってたんじゃなかったの?」

 リョウさんに聞いたけど、彼も眉を寄せるばかり。

「村で羅季礼をされるのは、手を振られたあとだった。だから、武器を持っていないことがわかってたから、みな気にしなかっただけだ」

 それを聞けたから、『先にキラ・シ礼をして』ということで落ち着けた。

 どうやっても、煌都(こうと)の大臣たちは『羅季(らき)礼をやめられない』みたいだったから。そりゃ、挨拶できないのは気持ち悪いものね。わかるんだけど、殺されるって言ってるのに、まだするのって、馬鹿なだけよ!

「制圧したのはキラ・シなんだから、キラ・シ礼を先にして。そのあとで羅季)礼をしてくれるのはかまわないから。武器を持っていない、という証拠を先に見せて、そのためのキラ・シ礼なの」

 そう言って初めて、羅季礼で殺される人が減った。

 まぁ、私達の言うことを聞かない人が羅季礼をして殺されてるから、そのあとは、スムーズと言えばスムーズで良かったけど。

 今残ってる人は、羅季礼すら滅多にしない人ばかり。そしてみんな頭いいわ。その彼らが言ってたのよね。

「キラ・シの初入城で、ハルナ様とル・ア様があんなに「羅季礼をするな」とおっしゃっていたのにした彼らは、家柄だけが良くて、政務を遅らせる名人ばかりでした。その名家全部からキラ・シは嫌われてしまいましたが、国政は圧倒的に早く進むようになりましたよ」

 ですって。

 とにかく、そう言ってくれた彼らを信用して全部任せた。

 しばらくはリョウさんが毒見もさせたし、ガリさんたちキラ・シは自分で獲ってきた獣しか食べなかった。ただ、私が平気で王宮から出された料理を食べてたから、そのうち信用したみたい。

 それでも、手の込んだ料理を嫌がるから、厨房の予算は100分の1になったわ。塩焼きが一番好きなんですものね。

 ル・アくんと王宮とかを見て回って、ずっと質問攻めの日々が続いた。予想はしてたから、覚悟はあったけど、質問に答え『続ける』のってこたえるわー……

 その中で、キラ・シが引っかかったのが刑務所だった。

 キラ・シには『量刑』ってものが無いのね。

 盗みも、人殺しも、首を刎ねるの。

『変な人』を生かすことは絶対にしないのよね。

 だから、刑務所の人達は、ル・アくんが見つけた数日後に、全部ショウ・キさんに殺された。それで、その人達にかかってた経費が全部浮いた。政治犯だけは別房にいたので、全員出したわ。頭の良い人たちばかり。今は、キラ・シに恭順してくれてるっぽい。

 そして街でももちろん、『盗み』でも『捨てられる』。

 キラ・シが巡回しているときに見つけた犯罪者は、かっぱらいでもその場で殺されるから、街から無頼がいなくなった。

 量刑がないことを非難した人もいたけど、一刀両断にされて終わったわね。それに、圧倒的に安全になった街に、キラ・シは感謝されたわ。

 そしてもちろん、『制圧』をあちこちでするから、一気にキラ・シ人気は上がった。サル・シュくんなんて、かなり凄い追っかけとか、出待ち入り待ちが出てるみたい。たまに一緒に馬で出ると、嫉妬の炎が凄い凄い。その中に体格のいい男の人までいる!

「ねぇ……サル・シュくんが人気あるのはわかるけど……男の人も凄いいるよ? サル・シュくん、凄い美人なんだから、気をつけてよ?」

「ナニを?」

「男の人がサル・シュくんを狙ってる」

 サル・シュくんがキョン? とした顔で私を見て、追っかけを振り返った。

 私に合わせて並足で歩いてるから、追っかけがずっとついてきてる。どの時代でも一緒よねぇ……どこのお城でも一緒だったけど、さすがに煌都(こうと)は規模が違うわ。100人ぐらいがついてくるって凄い……

 これ、サル・シュくんだけじゃなくて、数は違うけど大体のキラ・シがこうみたい。探しに行かなくても入れ食いだ、って凄く喜んでる。

「ハルがいやなら帰ろうか?」

「……何しに出てきたの?」

「ハルと煌都(こうと)を『ブラブラ』したかっただけ。こういうの、好きだろ? ハル」

 摩雲(まう)で散歩したときのことね。うん……好きだけど……

「ちょっと……ああいうのがいるところでは、落ち着かないかな……」

「俺は、ハルをみせびらかせて楽しい」

「私をみせびらかしてどうするの!」

「万が一、ハルがさらわれたって、誰かが助けてくれるぜ?」

「……『サル・シュくんの女』になりたい人に殺される確率の方が高い気がする……」

  

 

  

 

 

 

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