ひっ……ひゃぁあぁあああぁぁぁぁっっっ!
蛮族で始まって、こんな文化的なお城でラスト?
凄くない?
ああ……、でも、沙射皇帝を敵にしてるから、最後の最後で、責め滅ぼされるオプションはまだあるんだ?
でも、そんなのいつものことだよね。
頑張って生きるしかない!
私が最後に産んだのが、彼の子供になった。
マリナって、王様が名付けたわ。王子様。
みんなマリサス語だからよくわからなかったけど、マルチリンガルのチートを受け継いだみたい。リョウさんの子供はキラ・シ語しか喋れなかったのに、マリナちゃんが喋ってるの。王様が凄く喜んでくれたわ。
夕羅(せきら)くんの子供も、ここにいる。
リョウさんの子供も、私を守ってくれている。
穏やかな、日々。
「君のお葬式は……僕がしてあげる……つもりだったのに……」
98まで生きたわ、王様。
「みんな……君より先に死んだから…………僕だけは、長生きするつもりだったのに………………ごめんね……」
「私はもう、なれてるから…………あなたに、私の死に顔なんて、見られなくて良かったわ…………どうせあなたは、変な化粧をさせて笑うでしょう?」
いろいろなことを話したわね。
このお城の中の調度品、一つ一つ来歴を聞いたわね。
いろんな物を、作ったわね。
「楽しい……一生に、してくれた……わ……
素敵な文化の中心に、いさせてくれて、ありがとう。ナール・サス……」
そんな、嬉しそうな死に顔を、見せてくれて……ありがとう…………
本当に綺麗な、あなた。
何度も、何度もこの世界に転生して、何度も何度も、キラ・シが滅びるのを見て……
私がキラ・シを滅ぼしてるんじゃないか、って……
私がいなかったら、キラ・シはもっと生きたんじゃないか、って……よく、思った……けど…………
50年生きたら大往生の時代に、王様、98才まで生きたわ。
ずっと、幸せだ、って、言ってくれてた。
私にも、誰かを幸せにしてあげる事、できてるのよね?
私が居たからキラ・シのみんな、早死にしたわけじゃ……ないのよ……ね……?
『現代』でも98なんて、大往生、させてあげられたのよね?
私がいなかったら、120まで生きたかもしれないけど……
それは、もう、いいよね?
「ありがとう、……王様………………私、まだ、この世界で生きていける……」
ちゃんと、誰かを幸せにしてあげられる。
その自信は、ついたわ。
今度は、レイ・カさんも、もっと幸せにしてあげたい。
あんなところで、死んでいい人じゃ、なかったのよ……
「ありがとう………………王様。また、来世で会いましょう?」
羅季(らき)は、一度も攻めてこなかった。
マリナちゃんのほうが先に死んじゃった。リョウさんの子供はもっと早かったわ。
でも、みんな、子供をたくさん残してくれた。
みんな先に死んだけど、みんな、私を大事にしてくれた。
私は今回も、生き神扱いされた。
もっと、王様についてのことを夕羅くんから聞いておけば良かった。彼の武勇伝を子供たちに話せなかったの。それが唯一残念だったわ。
王様が死んでから話したのは、リョウさんのことばかり。
だって、リョウさんの子供たちがたくさんいたから。
相変わらず、第七世代まで、見たわ……
たくさん名前をつけたわ。
最後に生まれた子には『リョウ』ってつけたわ。
その子に名前をつけて、私は、死んだの。
強い子になってね、リョウさん……
キラ・シを背負う子に、なって。
ガリさんを助けられる子に……
私は、122才まで生きた。
この古代の地で、生き神扱いされた。
36人子を産んで、子孫はもうマリサスだけでも七台目。各国に数万人が、散った。『黄色い子供の粛清』はされてない、って王様が教えてくれてたから、みんな生き残った筈。
今回以上の人生なんて……ある?
ガリさんの、ル・マちゃんの望みも叶ったよ。
ル・アくんの望みも叶ったよ……
キラ・シの名前は無くなったけど、『キラ・シの子』は何百万人になったよ……
最後はあんな豪華なお城で王妃様になって……
あは……
今回は、誰だったかな。
最初の旦那は、誰だったかな……
でも、思い浮かぶのはリョウさんだけ……
ねぇ……リョウさん………………
私、がんばったでしょう?
リョウさんの、最後の子も、凄く生きたのよ? 誰だったかな…………名前……わかんない…………あなたに凄くよく似てたの。
ずっと私のそばにいてくれたのよ?
先に……死んじゃったけど……
私、富士見台の家まで良いもの食べてたし、予防注射とか、受けられるだけ受けてたから、流行り病でも死ななかったの。
子供たちが死んでいく中、もう歩けもしない私が、生き残ったの……
リョウさんの武勇伝をずっと話して聞かせたのよ。
強い戦士になったわ。マリサスをずっと守ったのよ?
私、よくやったでしょう?
もう……いいよね…………
あなたは地面に埋められたと聞いたわ。
キラ・シの『その世』に行ったって……
だから、私も、埋めてもらう。
『『その世』は一つだ。必ずル・マに会える』
ガリさんが、そう言ってたから……
キラ・シみんなで、『その世』で会いましょう。
リョウさん………………愛してた…………ずっと、愛してる………………
「ハルナっ! バイクは危ないから気をつけなさいよっ!」
母さんが久しぶりにバイクについて文句を言った……と思ったら、ベンツに追い駆けられた! ナニナニナニ!
メッチャあおられてるっ! クラクション鳴らされてるっ!
ああ、いやっ、ちょっと…………前に回り込まれて、ブレーキせざるをえなくなった。危ないなぁっ! って……リムジンじゃないっ! ベンツのリムジンっ! 長(なが)!
「ヒャッ……」
後部座席から大きな人が出てきたっ!
「お前っ、キラ・シ人だな!」
ひげもじゃの…………レスラーかってぐらい……でかい…………絶対ボディーガードだよっ!
え? ナニ? キラ・シ? ナニ? キラ・シの博物館は行ったよ? 私、民俗学好きだから、自分のルーツ知りたいし、私もキラ・シ人だし。キラ・シ研究第一人者のナール・サス教授の本も全部持ってるし…………教授のいる大学に行って研究室に入りたいから猛勉強中だし……
ナニ? 私、こんな人に追い駆けられるいわれ……ない…………
大きな、熊さん…………
サングラス外しても怖い目の、熊さん……!
「ハル? ハルだろう?」
どうみても危ない黒服に見える熊さんが、私の名前、呼んだ。
私ハル・ナだから、たしかに親にはそう呼ばれるけど、女の友人でも『ハル・ナ』呼びだよ。
アレ?
「リョウ……さん……?」
なんで名前、知ってるの私。
誰? 私の知り合いにそんな人いないよ?
いない……けど、知ってる…………
山の中で、私に、刀突きつけた……あの、リョウさん……?
「リョウさんっ! えっ! キラ・シのリョウさん?!」
「そうだっ! 俺だっ! キラ・シのリョウ・カだっ! 俺も今思い出したっ! バイクで走っているハルの後ろ姿を見て、思い出したのだっ!」
何これっ! 今まで知らなかった記憶が出てきたっ! うわっ、120才まで生きた私すごいっ!
「リョウさん逃げて!」
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