【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。212 ~キラ・シを背負う子~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

 ひっ……ひゃぁあぁあああぁぁぁぁっっっ!

 蛮族で始まって、こんな文化的なお城でラスト?

 凄くない?

 ああ……、でも、沙射皇帝を敵にしてるから、最後の最後で、責め滅ぼされるオプションはまだあるんだ?

 でも、そんなのいつものことだよね。

 頑張って生きるしかない!

  

 

  

 

  

 

 私が最後に産んだのが、彼の子供になった。

 マリナって、王様が名付けたわ。王子様。

 みんなマリサス語だからよくわからなかったけど、マルチリンガルのチートを受け継いだみたい。リョウさんの子供はキラ・シ語しか喋れなかったのに、マリナちゃんが喋ってるの。王様が凄く喜んでくれたわ。

 夕羅(せきら)くんの子供も、ここにいる。

 リョウさんの子供も、私を守ってくれている。

 穏やかな、日々。

  

 

  

 

  

 

「君のお葬式は……僕がしてあげる……つもりだったのに……」

 98まで生きたわ、王様。

「みんな……君より先に死んだから…………僕だけは、長生きするつもりだったのに………………ごめんね……」

「私はもう、なれてるから…………あなたに、私の死に顔なんて、見られなくて良かったわ…………どうせあなたは、変な化粧をさせて笑うでしょう?」

 いろいろなことを話したわね。

 このお城の中の調度品、一つ一つ来歴を聞いたわね。

 いろんな物を、作ったわね。

「楽しい……一生に、してくれた……わ……

 素敵な文化の中心に、いさせてくれて、ありがとう。ナール・サス……」

 そんな、嬉しそうな死に顔を、見せてくれて……ありがとう…………

 本当に綺麗な、あなた。

 何度も、何度もこの世界に転生して、何度も何度も、キラ・シが滅びるのを見て……

 私がキラ・シを滅ぼしてるんじゃないか、って……

 私がいなかったら、キラ・シはもっと生きたんじゃないか、って……よく、思った……けど…………

 50年生きたら大往生の時代に、王様、98才まで生きたわ。

 ずっと、幸せだ、って、言ってくれてた。

 私にも、誰かを幸せにしてあげる事、できてるのよね?

 私が居たからキラ・シのみんな、早死にしたわけじゃ……ないのよ……ね……?

『現代』でも98なんて、大往生、させてあげられたのよね?

 私がいなかったら、120まで生きたかもしれないけど……

 それは、もう、いいよね?

「ありがとう、……王様………………私、まだ、この世界で生きていける……」

 ちゃんと、誰かを幸せにしてあげられる。

 その自信は、ついたわ。

 今度は、レイ・カさんも、もっと幸せにしてあげたい。

 あんなところで、死んでいい人じゃ、なかったのよ……

「ありがとう………………王様。また、来世で会いましょう?」

 羅季(らき)は、一度も攻めてこなかった。

 マリナちゃんのほうが先に死んじゃった。リョウさんの子供はもっと早かったわ。

 でも、みんな、子供をたくさん残してくれた。

 みんな先に死んだけど、みんな、私を大事にしてくれた。

 私は今回も、生き神扱いされた。

 もっと、王様についてのことを夕羅くんから聞いておけば良かった。彼の武勇伝を子供たちに話せなかったの。それが唯一残念だったわ。

 王様が死んでから話したのは、リョウさんのことばかり。

 だって、リョウさんの子供たちがたくさんいたから。

 相変わらず、第七世代まで、見たわ……

 たくさん名前をつけたわ。

 最後に生まれた子には『リョウ』ってつけたわ。

 その子に名前をつけて、私は、死んだの。

 強い子になってね、リョウさん……

 キラ・シを背負う子に、なって。

 ガリさんを助けられる子に……

  

 

  

 

  

 

 私は、122才まで生きた。

 この古代の地で、生き神扱いされた。

 36人子を産んで、子孫はもうマリサスだけでも七台目。各国に数万人が、散った。『黄色い子供の粛清』はされてない、って王様が教えてくれてたから、みんな生き残った筈。

 今回以上の人生なんて……ある?

 ガリさんの、ル・マちゃんの望みも叶ったよ。

 ル・アくんの望みも叶ったよ……

 キラ・シの名前は無くなったけど、『キラ・シの子』は何百万人になったよ……

 最後はあんな豪華なお城で王妃様になって……

  

 

  

 

  

 

 あは……

 今回は、誰だったかな。

 最初の旦那は、誰だったかな……

 でも、思い浮かぶのはリョウさんだけ……

 ねぇ……リョウさん………………

 私、がんばったでしょう?

 リョウさんの、最後の子も、凄く生きたのよ? 誰だったかな…………名前……わかんない…………あなたに凄くよく似てたの。

 ずっと私のそばにいてくれたのよ?

 先に……死んじゃったけど……

 私、富士見台の家まで良いもの食べてたし、予防注射とか、受けられるだけ受けてたから、流行り病でも死ななかったの。

 子供たちが死んでいく中、もう歩けもしない私が、生き残ったの……

 リョウさんの武勇伝をずっと話して聞かせたのよ。

 強い戦士になったわ。マリサスをずっと守ったのよ?

 私、よくやったでしょう?

 もう……いいよね…………

 あなたは地面に埋められたと聞いたわ。

 キラ・シの『その世』に行ったって……

 だから、私も、埋めてもらう。

『『その世』は一つだ。必ずル・マに会える』

 ガリさんが、そう言ってたから……

 キラ・シみんなで、『その世』で会いましょう。

 リョウさん………………愛してた…………ずっと、愛してる………………

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

「ハルナっ! バイクは危ないから気をつけなさいよっ!」

 母さんが久しぶりにバイクについて文句を言った……と思ったら、ベンツに追い駆けられた! ナニナニナニ!

 メッチャあおられてるっ! クラクション鳴らされてるっ!

 ああ、いやっ、ちょっと…………前に回り込まれて、ブレーキせざるをえなくなった。危ないなぁっ! って……リムジンじゃないっ! ベンツのリムジンっ! 長(なが)!

「ヒャッ……」

 後部座席から大きな人が出てきたっ!

「お前っ、キラ・シ人だな!」

 ひげもじゃの…………レスラーかってぐらい……でかい…………絶対ボディーガードだよっ!

 え? ナニ? キラ・シ? ナニ? キラ・シの博物館は行ったよ? 私、民俗学好きだから、自分のルーツ知りたいし、私もキラ・シ人だし。キラ・シ研究第一人者のナール・サス教授の本も全部持ってるし…………教授のいる大学に行って研究室に入りたいから猛勉強中だし……

 ナニ? 私、こんな人に追い駆けられるいわれ……ない…………

 大きな、熊さん…………

 サングラス外しても怖い目の、熊さん……!

「ハル? ハルだろう?」

 どうみても危ない黒服に見える熊さんが、私の名前、呼んだ。

 私ハル・ナだから、たしかに親にはそう呼ばれるけど、女の友人でも『ハル・ナ』呼びだよ。

 アレ?

「リョウ……さん……?」

 なんで名前、知ってるの私。

 誰? 私の知り合いにそんな人いないよ?

 いない……けど、知ってる…………

 山の中で、私に、刀突きつけた……あの、リョウさん……?

「リョウさんっ! えっ! キラ・シのリョウさん?!」

「そうだっ! 俺だっ! キラ・シのリョウ・カだっ! 俺も今思い出したっ! バイクで走っているハルの後ろ姿を見て、思い出したのだっ!」

 何これっ! 今まで知らなかった記憶が出てきたっ! うわっ、120才まで生きた私すごいっ!

「リョウさん逃げて!」

 

 

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