【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。214 ~浮気~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

「たまに生やしたくなるんだ……最近の写真はそこにないし。元々、俺がそのページを作っているわけではないから、ナニが載っているかも知らん。

 髭は、みっともないから、剃れ剃れと言われていた。

 多分、ハルにすぐに分かってもらうために伸ばしていたのだろうな。絶対剃らない、と思っていたが、今はもう、剃りたい。凄く。そこの散髪屋に入っていいか、と聞きたいぐらいだ」

「行ってもいいよ? そんなかからないでしょ?」

「…………いや、明日にしよう」

「お髭のないリョウさんもカッコイイ!」

 照れてる熊さん超カワイイ。

「リョウさん……凄い勲章取ってるね! ……このツーショット写真、大統領に似てる…………歴代大統領のそっくりさんが三人も……」

「本人だ」

「えっ!」

「聞いて驚け。救国の英雄だぞ。

 本当にこっちの業界に興味がないのだなハルは。何度もテレビに出たし、本もたくさん出したし、新聞にも出たし、もうちょっと若い頃はカレンダーも出たんだぞ! 一億枚売れたのに!」

「一億枚……」

 桁が違う……

「お前の知り合いは俺のことを知ってる奴が大勢いるぞきっと。Twitterのフォロワーは5億人越えてるからな」

「えーっ? 私が知らないんだから、周りみんな知らないと思わない?」

「……そうだな…………戦争反対集会に来るような奴には腐った卵を投げられるからな……」

「わー……大変…………私も出たことあるわ、そういう集会。戦争反対、じゃなく、平和集会の方だけど…………あ、なんかメッセがいっぱい来た……」

 ライン確認したらなんか……みんな焦ってる。ナニ? あ、私がリムジンに連れ込まれるところの写真……なんでこんなのがっ!

 読む前に、肩を抱き寄せられて額にチュッてされた。ヒャッ、てなる。記憶は120歳の婆でも、体はまだ17才なんだもんっ!

「落ち着かんな……」

 って……膝に乗せられたっ!

 そのままキスっ!

 ディープっ!

「ファーストキスだよーっ! リョウさーんっ! もっとロマンティックなのが良かった! 最初からディープってナニッ!」

「俺はハルがラストキスだっ!」

 また、キス、キス、キス。

 アー、もー、やだー…………リョウさんが、サル・シュくんみたいになんか、スマートになってるぅっ!

「お子さんは?」

「今回は、今のところいない。童貞だとは言わん」

「ホントに? 別にいいんだよ? 私、もう数百人育ててきたんだからっ!」

「いや、本当にいない。

 ハルが、俺の子を産んでくれる最初で最後の女だ」

 うっ………………いや、そういやこういうこと、前もリョウさん言ってたな…………あの世界だったし、殺伐としてたから、聞き流してたけど……この上等スーツ着て、エゴイスト香って、リムジンの後部座席にいると、凄い、キザ!

「あー、そっかーガリさんとかサル・シュくんとかもいるんだっ! ワクワクするねーっ!」

 思わず話そらした。リョウさんがクスクス笑いながら、何度も私の顔にキスをする。うにゃー……気持ちいー。うれしーいっ!

「抱いて降りていいか? あの頃みたいに」

「それはいいけど……なんで降りるの? レストランじゃないよ?」

 本当に、左肘に座るみたいに抱かれて車下りた。あー、この動きにくさも久しぶり! 違うな。私が足腰立たなくなってからは、みんなに抱き上げられて移動してたもんな。36人も子供産んだにしては元気だったよね、私!

 女の人って、子供を産めば産むほど若返るらしい。妊娠中に若返りホルモンが出るんだって。私、17才の時から、年子で子供産んでて、ずっと妊娠状態だったから、長生きしたのかも。子供たちは誰かが育ててくれたから、私はなんの苦労もなかったし……結局、悠々自適だったし……

 って……若いころの記憶はあっても、年取ってからって覚えてないなー……リョウさんのことばっかり考えてたことしか頭にない。

「会いたかった……リョウさん………………」

「俺も、会いたかった、ハル。こんな状態になるなどと、夢のようだ……」

「私も……本当に夢みたい……嬉しい…………って、だから、ここ、なに?」

「ブティックだ。ドレスを作ろう」

「なんでっ!」

 既に採寸されてるしっ!

「丁度パーティーに呼ばれていた。断るつもりだったが、ハルが行くなら行こう。顔だけ出して、食事だ」

「え? パーティー? なんで? というか断るつもりでその服なの?」

「これは普段着だ」

 シルクの三つ揃えが普段着…………秋物の下着着て、玄関を裸でうろうろしてた人が……

「……そうですか…………というか、行くなら行こう、って…………行かないならドレスいらないよね?」

「俺一人のために着飾ってくれてもいいんだぞ?」

 うっわー…………背骨が溶けそう。でも、嬉しいっ! なんか私の中の乙女がかゆいっ! やっぱり、ドレスって楽しいっ! 孫にも衣装だよ! うわぁ……マーメイドドレスっ! 胸とお尻はヒラヒラで隠れてるしっ! 最高!

「あの時は、何もやれなかったからな。

 なんでも言え。なんでも揃えてやれる。

 金の亡者と言われたが、ハルとこうして遊ぶために貯めていたのだと、ようやく理解した。

 会社も誰かに譲って南の島にでも行こう。

 のんびりしたい。ただ、ハルと二人だけでいたい……」

 ギュギュッ……って、熱い腕。

「じゃあ、お別れのためにもパーティーで挨拶、したほうがよくない?」

「では、行こうか。俺のお姫様」

 ファッ……鼻から心臓が出そう……

 リョウさんもタキシードに着替えた。

「結婚しろしろとうるさかったからな。前披露宴だ」

 なんかリョウさんの口からパーティーとかブティックとか出てくると、『キラキラ石』より凄い不思議。今度は凄い文明人だね!

 白いパーティードレスに豪華なネックレスとティアラ。エステまで連れてかれた。パーティーを幾つか回って、イブニングドレスに着替え。リョウさんは燕尾服。初めて生で見た、燕尾服! この巨体で燕尾服っ! 迫力在る! ただ、『燕』には見えない。黒駝鳥みたい。

 パーティー会場でも、ずっと私、リョウさんの左肘にいた。

「ねぇ……ちょっと……みんな見たことある顔だし…………あそこにいるの大統領だよっ! なんのパーティーなのコレッ!」

「大統領主催の国際慈善パーティーだ。カメラは全部世界同時放送だぞ」

 はぁうっ! リョウさんっ、私を抱いたまま、大統領と握手してるぅっ!

「余程大事なおかたかな? 今まで見たことのないお嬢さんだ」

 そりゃそう言うしかないよね……フラッシュまぶしくて何も見えない……消えたい…………

「永遠につなぎ止めておきたい唯一の女です。抱いておかないとどこに飛んで行くかわからないもので」

「酷いっ! 私、浮気したことなんて一度もないのにっ! 女の人に手が早いのはリョウさんでしょっ!」

 

 

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