「ハル、カメラが回ってるぞ」
「はっ」
床に下ろされたから、慌ててリョウさんの後ろに隠れた。でももう、注目の的! この、『紛れ込んだ』感酷い。有名人ばっかりっ! 怖いよー。私はただの女子高生なのよーっ! なんか端末ブルッてる。綺麗なバッグから必死で出した。長手袋が邪魔で、端末が鰻みたいに滑る!
『ハル! その人だれっ! 大統領のパーティーにいるの、あなたなのっ! ねぇ、全部の番組であなた出てるわよ! ちょっと、しゃんとしなさいっ!』
母さんが、凄い数のメッセ送ってきてる。友人も凄い。ごめん、今、返してる余裕ない。
『家にも、凄い花束が来てるの! この人っ凄い、凄い有名人よっ! あんた、この人のしたことを批判する集会にも出てたわよ! あんたどこで知り合ったのっ! 父さんより年上よっ!』
あちゃー……あの集会、そんなんだったんだ? 趣旨は知らなかったな……タダでご飯食べられるって言うから行っただけで……なんか不愉快な怒鳴り合いだったからこそっと帰ったんだ。
つまりは、リョウさんの顔を知る機会はいっぱいあったんだね。
でも、こっちだけ知ってリョウさん知らないとか、つらいよね。今まで顔写真見なくて良かった! こんな人に私からアクセスなんて、できるわけない。
「リョウさん、私の家に花束送った?」
「送ったぞ」
「なんで?」
「会う前に、名前を知らせておいた方がいいだろう。こうして連れ回しているし、誘拐で逮捕されてはたまらんからな」
「母さんが発狂してる」
「まぁ……そうだろうな…………端末を、しまってくれるか?」
「うん? うん」
宝石のついた小さな鞄にしまってる間に、リョウさんが……しゃがん……で………………
私に、指輪の入ったベルベットの箱を差し出した。
「ハル・ナ、未来永劫、俺の妻になってくれ」
リョウさんが指輪を箱から出したから、左手、出した。薬指に……私の小指より大きなダイヤ……
泣いちゃったら、抱きしめられた。
「喜んでっ……」
大統領にも拍手されてる。凄い……ああ、申し訳ないけど、嬉しいっ!
リョウさんが、カメラを呼び寄せた。
「結婚式をするからなっっ、ガリッ、サル・シュっ! ル・マ、ル・アっ! ショウ・キっ、レイ・カっ!『キラ・シの400人』、絶対来いよっ!」
リョウさんが、指笛吹いた。
『リョウ・カからリョウ・カへ、全員集合』
懐かしい……あの頃を思い出す。砂漠に、荒野に、森に響いてた、指笛……80年以上、聞いてなかったのに、覚えてるもんなんだな……
「よしっ!」
めっちゃドヤ顔のリョウさん。カッコイイっ!
「公共放送を私信に使ってすまんな! 連絡の着かない奴が多くてなっ!」
放送局の人達に手を振って、フラッシュの嵐。
「もうお帰りですかっ! 大佐っ!」
「今は大佐じゃない。それに」
リョウさんがカメラをまた呼び寄せる。いやな予感。
「31才年下の処女と初夜だ。邪魔をするな」
「ナニ言ってんのっ! 馬鹿ぁっ!」
パァンッ! って、思わず平手打ち。物凄いフラッシュ! しまったっ! 赤い手形のリョウさんの写真が流出するっ! 慌てて顔を抱きしめた。
「な? イキがいいだろ。
世界中の友人よっ! 結婚式には勝手に来い。だが、三日は邪魔をするな!」
メッチャ笑ってるリョウさん。
「サル・シュくんじゃないんだからよしてよっ!」
「あれぐらいはじけた方がいいと、俺も悟った」
「そんなの悟らなくていいっ!」
「オジサンに若返ってほしいのだろう?」
「………………はい……」
そのあとの騒動は、本当に、もの、凄、かった。
「ずっと、こうするのが夢だった……」
夢みるようにリョウさんが囁いてくれた。
「私もだよ…………リョウさん…………好き……大好き……会いたかった…………」
嬉し涙なんて、100年ぶり。
生きてて良かった……
生きてて…………良かった…………
4日後。
家にリョウさんが挨拶に来てくれた時には、父さんの方が土下座して『持ってって下さい』って言った。
というか、リョウさん、うちの玄関を斜めにならないと入れなかったよ……これで体脂肪5%とか、凄すぎる。
大学入試でももう、顔を知られてるから凄い注目されて、カメラに追い駆けられた。
入試が終わって、即行でナール・サス教授の研究所に駆け込んだら、そこに、ル・アくんが、いた。
「ハル?」
「ル・アくん……? 私の一年先輩?」
私の隣で、教授も唖然としてる。
「えっ? キミ、ハルナさん?」
「うわぁ、ナール・サス教授って、マリサスの王様っ! あのあと、全然見なくなったからどうしたのかとっ!」
「そう……だね。今まで忘れてたけど……え? いや、ちょっと待って。ちゃんと思い出して!
君、僕の王妃様だったでしょ?」
「そうだっけ?」
「えっ? お前がハルの旦那になったことあったのか?」
ル・アくんが教授の襟首つかみ上げた。
「僕、98まで生きたよね? ずっと一緒に居てくれたよね?」
「……あー…………」
そういやそんなこと、あったかな……
「じゃあ、史留暉(しるき)とか、磨牙鬼(まがき(史留暉の兄))くんとか、沙射(さしゃ)君も? えっ? 沙射君、いるよっ! あの時の羅季(らき)の皇帝っ! 僕は彼に殺され掛けたからっ、逃げたんだよっ! たしか、京守(けいしゅ)くんも居たよね? ル・アくん……って、キミ、夕羅(せきら)丞相っ!」
「いたいた。京守いたっ! 京守の側に威衣牙(いいが)もいるっ! って、沙射っ! 沙射っ! あれ、沙射っ? 俺、沙射に殺されたんだぜっ! あっ!」
なんか凄いことになってきた。
それに、沙射君に殺されたの? だから、沙射君が夕羅丞相の死亡発表したの? 何したのキミ。
そっか……ル・アくん周りも凄い人間関係だったもんな……主に、あっち方面で。
けっこう固まって転生してるみたい。
なら、本当に、リョウさんだけ一人っておかしい。
「ガリ・アって、俺の父上っ! 今、沙射の父親だよっ! 育ての親らしいけど、仕事、何してんのかわからなかったっ! あーっ! あの人かっ! 超うさん臭いぞっアレッ! すげぇ納得したっ! キラ・シの族長がそこらへんにいたら、そりゃうさん臭くて当然だっ!」
ガリさん発見! うっわー……リョウさんにラインっ!
「そうだよね。副族長のリョウさんでもあれだもん。ガリさんは軍人系じゃなかったの? ル・アくんは? 普通の大学生?」
「……聞かないでくれ……」
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