【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。126 ~全部された~

 

 

 

 

  

 

  

 

「俺のだからなっ! ハルナは俺のだからなっ!」

 また、ル・マちゃんのあの声…………あ、私、失神してた?

 だって、あんな……馬に普通に乗せてくれたらまだ慣れてたけど、馬に横に乗せられたら頭が凄く低くて……めっちゃ、地面近くて……怖かった……

 あれだよね。ワゴンの運転席より、スポーツカーの運転席の方が低いから、走ってて迫力あるっていう…………あったわ……めっちゃ崖に迫力があったわ…………そこらのホラー映画よりホラーだったわ……ル・マちゃんが私の背中押さえたまま、崖を飛んだんだよ! 片手で崖を飛んだんだよ! あの瞬間、体が浮いて、失神した。

 まだ横に乗せられてるし……これは吐いたっぽい。口周り苦い、くさい。うがいしたい……

 私の手を、ル・マちゃんがギュッと握ってる。

「ル・マちゃん……手を緩めてくれない? 痛いよ……」

「ハルナっ! 起きたのか!」

「よう、ハルナ! 誰に抱かれたい?」

「ハイ?」

 景気の良いサル・シュくんの声。

 ガリさんとリョウさんとサル・シュくんがいる。その向こうにはたくさんのたき火と夕日。

 そう言えば、キラ・シは夜が早かった。

 夜目は利くけど、薪とか集めたり、普段の狩りしたりは明るい方がいいからだとか。それでゆっくりご飯食べて、寝て、朝早くに出発する。

 夜明けのときの、一番寒いときを動いている方が熱くなってるから、って言ってた。太陽が昇る前だと、まだ温かいんだ。上がってきてしばらくしたら一気に寒くなる。その時はもう、完全に目覚めて体が熱くなってるから、寒いと感じないらしい。

『現代』だと、その丁度寒いときに起きるから、寒くて起きにくいんだろうな、とは思った。私も朝型だから、四時ぐらいに起きてるし、あの夜明け時の寒さは身に沁みてる。

「ル・マ、どうせお前一人じゃハルナを抱いて歩けないんだから、諦めろ」

「うーっ!」

 ル・マちゃんが唸る。猫が警戒してるみたいな声。

 ああ……セックスって意味じゃなく、たき火まで私を抱いてく人を決めろ、ってこと? びっくりした!

「じゃあ、リョウさん」

「ハルナっ!」

 ル・マちゃんが振り返って歯を剥く。

「なんでリョウ叔父っ! 俺だってハルナぐらい抱ける!」

「だって、一番力持ちそうじゃない?」

「力はガリの倍ある。安心しろ」

 山のような力こぶを叩いて笑うリョウさん。かわいい。

 ガリさんもかなり不満げ。力かーっ! ってサル・シュくんが地団駄踏んでた。

「じゃ、次ガリメキアで、その次俺な!」

 サル・シュくんが勝手に決めてる。けど、誰も異論を出さない。なんでこんなことになってるの?

「そら、ル・マ。ハルナを放せ。二人一緒に抱き上げるぞ」

 リョウさんがル・マちゃんの左手を、ガリさんがあっちから右手を押さえた。後ろからリョウさんが私の腰を持ち上げて、左肘に座らせてくれる。安定のリョウさんソファー。凄い安心感。

「なんか、ハルナ、凄い軽そう」

「軽いぞ。十日続けて運んでも大丈夫だ」

「待てよっ! 俺のだからなっ! ハルナはっ!」

 追い駆けてきたル・マちゃんが、私の左手を握った。

「サル・シュくんっ、足触らないでっ! くすぐったいっ!」

「つるつるしたうっすい毛皮! なんでこんな白い?」

「それは靴下。毛皮じゃないよ」

 こうなると、頭撫でてくれてるのはガリさん?

 なんなの、この状況……

 たき火では、リョウさんの左膝に座る。

 ル・マちゃんがガリさんをリョウさんの左足側に座らせて、その右膝に座って、私の手を握ってた。リョウさんの右手側にレイ・カさん。ガリさんの左手側にサル・シュくん。私の真正面にショウ・キさん。

「狼みたいなレイ・カさんと、六位のショウ・キさん」

 目を丸くして驚くレイ・カさんと、ヒューッ、て口笛吹くショウ・キさん。

「サル・シュがあっち行ったから俺はこっち、って別れたのが間違いだった……」

 そうよね、あなたは以前からそういう人だった。

 こういうときは感情豊かに見えるのに……

 ショウ・キさんは相変わらずガツガツ食べてる。

  

 

  

 

 羅季(らき)のお城の話をして、留枝(るし)とゼルブの話までしてしまう。

 サル・シュくんが、サナくんからナニカを受け取った。

「はいっ、ル・マ。甘い栗! ハルナもっ!」

 ル・マちゃんに手を伸ばして栗を渡して、リョウさんの手にも栗を10個ぐらい乗せた。

 あの栗、サナ君が集めてくれてたんだ?

 そして毎回、この渋皮がしつこい。

「ナニをしてるんだ?」

 レイ・カさんが首を伸ばして聞いてくる。

 ねぇレイ・カさん。それを『前回』してくれたら、私もあなたも、もうちょっと幸せだったと思うの。声を掛ける隙も、作ってくれなかったよね。このたき火でも、前の私も栗の渋皮剥いてたのに……

「この渋皮を取ってるの」

「シブカワ?」

「薄い皮、ついてるでしょ?」

 リョウさんは相変わらず何も言わないけど、ガリさんもわずかに、ハァッ? って顔をした。他のみんなは栗をためつすがめつして、もう一度私を見る。ショウ・キさんはガツガツ食べてた。

「やっと剥けた! うわ、本当に甘いね! この栗! サル・シュくんありがとうっ!」

「お…………おうっ…………」

 サル・シュくんとル・マちゃんが、ゲラゲラ笑いだす。

 レイ・カさんとガリさんも肩を揺らしてた。またガリさんが私の頭撫でてる。サル・シュくんが靴下脱がそうとしてる。

「ちょっとサル・シュくんっ、脱がすのはいいけど、それっ、捨てないでよ!」

「わかったわかった」

 って、懐にいれたっ!

 葡萄もくれた!

「何してんの? ハルナ」

「ん? 葡萄を食べてるよ?」

「……いや、何を出してんの?」

「種」

「たね?」

 種は知ってるよね?

「これ、どうしたらいい?」

 掌に溜めていた皮と種をリョウさんに見せた。くれ、って感じで手を出したから、その大きな分厚い掌に載っける。リョウさんはそれを、たき火にペイッ、って投げた。

 そっか、たき火に捨てたらいいんだ? そういえば、『前』にもサル・シュくんが、家の中でも火に入れる、って言ってたね。

「えいっ!」

 たまった皮をたき火に投げてみたら全然届かなかった! そんな力いるのっ? そっか、軽いから、飛んで行かないんだ?

「やだ、ごめんなさい……散乱しちゃった……」

 物凄い笑われた。

「そんなっ、全員で笑わなくていいじゃないっ!」

 今度こそ、ちゃんと火に入れる! と思ったら、真正面のショウ・キさんまで跳んだっ!

「ごめんなさいっ!」

「かまわん構わん……」

 メッチャ笑ってるショウ・キさん。というか、みんな笑ってる。ガリさんまで、ル・マちゃんを抱きしめて笑ってた。リョウさんも……メッチャ顔笑ってる。そんなおかしい? みんな毎回こういうの笑うけど、なんで? 意味わかんないっ!

 私が葡萄を食べている間にみんな食べ終わって、髪を梳り始めた。まわりでもみんなやってる。この時に手入れするんだ? いつも、食べたら寝ちゃってたから知らなかった。私も、大分慣れてきたね!

 この『毛皮の時』は、髪の上から肩に大きな毛皮をかぶってるから、全然髪が散らばらないんだよね。髪に玉がついてるとか、全然知らなかった。

 羅季(らき)に降りてあの服を着ちゃうと、髪が揺れるたびにカランカランなってるんだけど、もう、キラ・シ全員がうるさいのを底上げしてるだけで、一つ一つの音には気づかなかったな。

 そう言えば、布の服着てたときも、肩にショールみたいなの掛けてたね。毛皮とか、すぐ上に着てたし。やっぱり、その長い髪は邪魔だよね? それに、髪で背中覆った方が温かいもんね。

 腕はそのまま出してたから、『防寒』じゃなかったとは思うけど。

 後ろから髪をとかしてくれてるのはガリさん?

「ありがとう、ガリさん」

「俺のだからなっ!」

 ル・マちゃんが、一声吠えて、私の手を握った。

「なぁ、このキラキラの、ナニ?」

「透明マニキュア」

「とうねいなにくあ?」

「爪に、透明な…………のを、塗るの」

「トウメイ?」

「透き通ってるもの」

「こうか?」

 椿油を塗ってくれた。そうそうその油が欲しかったのよ!

 もっと貰って、顔に塗る。くちびるにも塗る。ああ! リップなかったから、くちびるかカサツキ掛けてたの、剥ける前に止められた! 良かった!

 ル・マちゃんのくちびるにも塗ってあげた。すっごい喜んでるル・マちゃん、かわいい。さっきのはナニカの勘違いだと言ってほしいぐらいかわいい。

 こういうので喜ぶの見ると、女の子だなー、って思う。リョウさんとかガリさんとか、一度も私の爪なんて見てなかった。

「俺もやってーっ!」

 サル・シュくんが首を出してきたから塗ってあげると、指を舐められた。

 どうせなので、楽しそうに見てるガリさんのくちびるにも塗った。ビクッ、と驚いてけど、引かないからいいんだよね?

 で、リョウさん。

 あ、もしかして、ガリさんとリョウさん、間接キスさせた? そんな感覚無いだろうから黙っとこう。

 たき火を真ん中にして、肩の毛皮を地面に敷いて、そこに髪が乗るように転がる。みんなその場にごろん。私はリョウさんの上に乗る。ル・マちゃんもガリさんの上。

 ル・マちゃんがくっつけくっつけっていうから、ガリさんとリョウさんがすっごい側に寝てて、サル・シュくんもリョウさんの側にいて「気持ち悪いっ!」ってリョウさんが唸ってた。左手をル・マちゃん、右手をサル・シュくんに握られて、リョウさんの上で寝る。相変わらず、ガリさんが頭撫でてくれてた。

 いつも思うけど、私が上で寝てるときにどうやってリョウさんは寝返り打ってるんだろう?

 なんか意味わからない始まりだけど、とりあえず友好度上がったみたいで良いよね。

 ここで、リョウさんから降りないようにしないと、風邪引いて死んじゃうからね。あれはまいった。

 あとはもう一緒。降りて上がって、降りて上がって、メッチャ凄い崖を二つ降りて、羅季。

『山ざらい』のことを先に言ってたから、ガリさんが軍団を一回でさらってしまった。

 また、皇帝のあの茶番劇で大広間が血の海でシャンデリアが壊れた。

 勘弁してくれないかな……シャンデリアないと玄関が暗いんだよね……これどうしたらいいのかな? 前、サル・シュくんに教えても落とされたしなぁ……

 お風呂に行ったら行ったで、ル・マちゃんとサル・シュくんに触られまくった。

 なんでサル・シュくんまでっ!

 いやいやいや…………サル・シュくん、ル・マちゃんと触り方が違うっ! ピンポイントで来るっ!

「本当にハルナ、初めてなんだな」

「俺のだって言ってるだろっ! 触るなよっ!」

 相変わらずル・マちゃんは吠えるし…………リョウさんまで来た!

「二人とも、ハルナから離れろ。ハルナが真っ赤じゃないか」

 良かった……止めてくれた。さすがリョウさん……

 なんかもう……抵抗できない……のぼせた…………

「ハルナ様がのぼせてらっしゃいますよっ! お二方っ! おたわむれはおよしくださいませっ!」

 マキメイさんが怒ってくれて、二人が一瞬とまった。

「あ、ほんとだ。ハルナ、目が回ってる」

 お風呂の脇に上げてもらって、リョウさんが寝室に連れて行ってくれた。

 そのままリョウさんに抱かれちゃったけど…………良かったのかな?

 もういいや、考えてどうにかなる問題じゃないし……

 諦めも、良くなったよね。

 だって、強情張っても、どうしようもないんだもん、この世界。

  

 

  

 

  

 

 朝は、隣にル・マちゃんだけがいた。めっちゃ抱き込まれてる。ガッツリ胸掴まれてた。

 全裸だ……ル・マちゃんも。

「んー……ハルナー…………起きたのかー?」

「うん、起きたよ。おはよー、ル・マちゃん」

「おはよー…………ハルナー……」

「えっ?」

 顔を両手で押さえられて、キス、された。

 ディープッ!

 くらっ……て、したっ! 女の子となのにっ! なにこのキスっ!

「ちょ……るまちゃ…………っ」

 挿れる以外は全部された。

  

 

  

 

  

 

 

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