頭、ぼーーーーーーーーっとする……
サル・シュくんは留枝(るし)へ、ガリさんは車李(しゃき)へ、リョウさんは制圧へ、レイ・カさんがお留守番。
地図を見上げてたら、レイ・カさんが覗き込んできた。それでも、手を伸ばしても触れないぐらい向こう。
「……大丈夫か? ハルナ。目を開けたまま、寝てないか? 部屋へ帰れよ」
レイ・カさんって、『他人の女』には話しかけてくるのかな?
気さくな人だと思ってた分、『前回』きつかったなぁ。
「起きてる……けど…………なんか、限界……」
みんな自分で短冊書いて、自分で刺してくれるから、私、ここにいなくていいんだけど……
「ベッドに……いたら…………ル・マちゃんに……襲われる……」
そっか……それで私、ここにいるんだ?
それになんか、みんないて、安心する。
もう『現代』での人生の何倍も、こっちで生きてるから……脳内は既に老女なんだよね、私。
『前回』の車李(しゃき)で、私が、殺しまくったからなぁ……
何人殺したかな毒で…………
なんか二人ぐらい、ナイフえぐり込んだ人がいた気がする。塔の上に連れてって、足持ち上げて窓から落としたりとか……
なんか、本当に、女の腕でできる限りの人殺しをしたなぁ……
あの時代にしては結構長生きだったと思うし……
そうだ、今回あそこらへんまで生きたら、ナガシュのあの子、調べておかないと……
白い髪で赤い目の……赤一色は、王様か、王太子の服の筈。
部分的に白かったけど、全身ケロイドみたいな、凄いことになってたな……あー、地獄から使者が来たかー……と思った。
あの子、今はまだ生まれてないんだよねー……
生まれたら、子供のウチに殺しとくか……
とりあえず、雅音帑(がねど)王は、草の根わけてでも殺しておかないと……
そうだ、雅音帑王の似顔絵描いてガリさんに渡しておこう。死体を確認してほしい。というか、彼を殺せるならお城は崩さないでほしい。
ああ……でも、『前回』の『黄色い子の粛清』は雅音帑王がいなくなっても出たもんな…………とにかく、ナニカあったときに目立つから、殺されやすいんだ。
『無条件で殺していい人間』がいると、政府は人民の管理が楽になる。
そりゃ、突然増えた黄色いのを殺したいよね。
あれを、乗り越えなきゃ、キラ・シが残ったとは言えないし……ガリさんの望みがかなったとは、言えないよねぇ…………
そこをどうクリアするかが『キラ・シを残す』って大プロジェクトの最大ポイントなんだよな……
あそこまでいったからもう大丈夫! と思ったのになぁ……
でも『黄色い粛清』なんて、どうやって止めたらいいんだろう?
いっその事、大陸の白人全部殺してしまう?
「あぁ……女同士でナニをしてるんだ?」
「出す以外は全部」
どうしたらいいのかな…………やっぱり、ル・マちゃんとガリさんの子供が必要なの……か…………
「私、今ナニ言った?」
レイ・カさんが真っ赤になってた。
「忘れてクダサイっ!」
「わ……わかった…………」
目が覚めたっ! びっくりした。ナニ言ってんの私!
「あ……」
「ハルナ!」
興奮したからか、立ちくらみが…………
つい、この時期は体力ないことを忘れる。
もう、『いつも』プチ筋トレとか、歩き回ったりとか体力つけてるから……
この『転生最初の頃』の体力の無さ、きつい……
しかもあの三人にアレって……生きてるだけ不思議だわっ!
咄嗟にレイ・カさんが支えてくれたみたいだけど、その手が、震えてた。
チョット待って、支えてる人に震えられるって超怖い……でも、足立たない……
「立てるか? ハルナ?」
「……無理……です……」
このまま寝ちゃいたい。目が開かない。
あの人達、無茶過ぎなんだよもう……
「だ……誰かっ…………」
レイ・カさんがなんか、裏返った声出した。
「崩れるっ! 誰かっ、支えろっ! こぼれるっ! どこ持ったらいいんだこの女っ!」
「…………触ったら、あの三人に殺される」
冷たい声が飛んでる。
ごめん、なんか、立てそうだけど、このままならどうなるのか、見てみたくなった。『無』にはならなくていいけど、全身の力を抜いてみる。力入れないと持ちにくいんだよね?
「俺も殺されるっ! 助けろっ! あ! ル・マを呼んでこいっ! 誰かっ早くル・マを呼んでこい!」
レイ・カさんがメッチャ焦ってる!
そうだよねー、レイ・カさんって、こういう人だよねー。
なんで『前回』あんなそっけなかったんだろう。
『前回』の私、あれ、ちょっと狂ってたんだよね? ちょっとじゃないな。かなり狂ってたな。人一人見えなくなってたんだもんね。おかしすぎる。あんなこと、あるんだなー。
なんかもう、『愛され慣れ』してて、愛されないことがショックだった。なんて傲慢だったんだろう。
「ル・マっ! 早くハルナを支えてくれっ!」
ル・マちゃんも、さすがにレイ・カさんには毒づかないみたい。
『前』も、ガリさんですら『次は俺だぞ』って一度も言わなかった。ここらへん、レイ・カさん、凄く物分かりいい人なんだろうな。
ル・マちゃんが脇を持って持ち上げてくれて、椅子に座らさせてくれた。そして、ギュッてされるから、ギュッて返した。で、ディープキス。
これはやめてほしいんだけど、逆らうのももう面倒……
玄関でイかそうとするのやめてホント。
「ハルナ大好きーっ!」
「……よくわかった」
誰? なにがわかった……の……?
「レイ・カさんっまだいたのっ!」
「ずっといた」
まだ赤い顔してるレイ・カさん。
ここで立ち去ったり、あっち向いたりしないのがホント、キラ・シだよね、まったく……
玄関の全員、まっすぐこっち見てるし……
『遠慮』って単語がキラ・シにはないんじゃない?
「女同士でも気持ちいいのか?」
そして、こういうことを普通に質問できるんだよね。
「ル・マちゃんも、男根以外、全部一緒だよ」
「そうだぞーっ! 俺だって制圧行きたいっ! 誰か俺の子産めーっ!」
「…………そうか…………そうだな……ああ、だから、出す以外は全部、か……そうか」
「忘れてって言ったじゃないっ!」
「もう無理だな」
この男はっ! ある意味、サル・シュくんよりタチ悪い!
「逆に聞くけど、なんでル・マちゃんが、女の子の抱き方知ってるの?」
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