【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。132 ~現代園芸~

 

 

 

 

  

 

  

 

「強そうなのはキラ・シ本隊に引き取ればいい。今でも子供がいるから、」

「4万人生まれて、3才になるのが15000人だとして、そのうちの一割が強くなりそうだから引き取るって、1500人いるよ?

 既に、今のキラ・シの戦士の7倍の子が一気に増える。

 それで、10人に一人が強くなるってこと。

 100人に一人が強くなるとしても、150人増える」

 シーン……

 だよね。

 母数が法外なんだよ。ホントに。

 ここまで話しても、誰も『じゃあ、制圧をやめよう』って言わないし! 子供いないと困るし! 止められないし!

「とにかく、各地にキラ・シ村を作ることはできる、のよね?

 そこに若戦士を配置していくことも、できる?

 一年目に50人であって、二年目はまた似たような数増えるから、50個の山に村を新しく作るんだけど、あと50人、若戦士、いる?

 5年で250人になるから、ガリさんたちも全部、どこの村にいなきゃならなくなるよ?

 その近くだけ制圧するので大丈夫?

 そうなると『キラ・シ本隊』自体がなくなっちゃうよ?」

「そうせねば……仕方なかろう。全員が一つの村の族長になる、ということだな」

「そうだね。多分、子供は次々死んじゃうから、そんなに増えないとは思うけど……六年目からは、村の数が250個を越すけど、村長どうする?」

 数が大きくなると、流行り病で全員死ぬとか、ザラにあるから。たしかに200人ぐらいで分散してる方がリスクヘッジは取れてる。

 この時代、毎年、何十万人って単位で風邪で死ぬもんな……大きな町の子供でも、八割死んじゃうとかざらにある。だからこそ、それで生き残った子って強いんだけどね。

 大陸も、というか、医療が進歩してないころは、こういうことでナニ実に『人間が強い』んだよね。昔の人って元気だもんな。昔の人が元気なんじゃなくて『生き残った人が元気』なんだよね。

 健康番組で、長寿の人の食生活から食べ物はあれがいい、これがいい、って言ってるけど、違うよね。

 風邪で死ぬような人はもういないんだよね。あの世代に。

『現代人』と基礎人間力が違うんだよ。

 まぁ、私らの世代も、『医療』がある限りは死なないけどさ……

「ゼルブがいると、村長を彼らがしてくれるから、キラ・シ本隊は200のまま動けるんだよ」

 あー……って、レイ・カさんも頭を抱えて俯いた。

「それでいうと、そのゼルブというのの5000人という数は、必要だな」

「でしょ?」

「ゼルブは、引き込まねばならんな」

「ハルナが先見しなかったら、キラ・シ、どうなってた?」

 サル・シュくんの提言に、ガリさんも顔を伏せて、呟いた。

「連れて行けた子だけを育てるしかない」

「そうだな、戦士になるような子は、三歳でももうわかるから、そう言うのだけ連れて行くことになるな」

「父上だぞーって言ったらよじ登ってくる奴だけつれてきゃいいんじゃねーの?」

 よじ登る……凄い見分け方。でも、たしかに、それで、人見知りのおとなしい子は外せる。

「それだと、どれぐらいいると思う?」

 教えれば強くなる子もいるとは思うけど、最初から元気な子を鍛える方が、強くなる確率は高いよね。

「十人に一人いる?」

「多すぎても馬が足りなくなるのよね。ただ、馬はこっちにもいるから、ツノは無いけど。乗せることはできる」

「馬かー……馬も毎年一頭しか産まないしな……」

「今、250頭ぐらいとして、メスは半分いる?」

「馬はメスの方が多い」

「じゃあ、150頭として計算して、来年から三年150頭ずつ産まれて、450頭の半分がメスだとして、270頭が三年後から産んでくれるとして、……違うな……えっと、今、小馬はいないんだよね?」

「そうだな」

「じゃあやっぱり、三年の間、150頭ずつ産まれて、その世代が子供を産んでくれるのが四年後で、150と、半数の80が子供を産んでくれるとしたら、150%複利であってるのかな?」

 エクセルが欲しい! 地面に枝で筆算とか、ツライ!

「50%の50%、75%複利?」

「ハルナがナニ言ってんのか全然わかんね」

「……メスが全部子供を産んでくれるとして、五年で小馬も含めて1000頭ぐらい……になる、のかな?」

 計算あってる? キラ・シの人数とかは、何回もやってるからわかることであって、馬の複利計算?

「キラ・シの子供は一年で一万増えるのに……だな」

「そうだね。馬は……死なないとして、15年で一万頭かな……

 これも、ゼルブが『下』の馬を集めて増やしてくれたから、みんな馬に乗れたんだよ」

 そこかー……、ってサル・シュくんが頭をガリガリ掻いた。

「馬に乗ってないキラ・シとか、キラ・シじゃないよな?」

「だが、ゼルブは裏切るのだろう?」

「ガリさんとサル・シュくんが弱れば……ね。だから、その最初に、『俺と』じゃなく『キラ・シと』の契約にすれば、なんとかなると思う。

 私も、キラ・シの先は六年ぐらいしか見えてないから……」

「他の先はもっと見えるのか?」

「ゼルブが裏切ってキラ・シが絶滅したあと、90年ぐらい生き残ったことがあるから、それは見える。

 だから、今から詐為河(さいこう)の東に村を作ってたのとかが、大きくなってるのとかは、わかるんだ。

 でも、キラ・シの存続でいうなら、それって意味無いよね。だから、キラ・シが滅びないようにしないといけないんだよ。どうやってでも。

 15年後に来年産まれた子供たちが戦士になるなら、やっぱり今、できるだけ孕んでもらって、来年の子供をできるだけ多く戦士として育てないといけないの。

 弱くても、『キラ・シ』なんだよ。普段は農作業しててくれてもいいから、『集まれ!』って言ったら全員集まってくれるのは『キラ・シ』だけだから。

 大陸の国は、『集まれ』って言ったら、大陸の人達を集められるけど、キラ・シが『集まれ』って言ったって、よっぽどお金をばらまくとかしない限り、大陸の人達は集まらないんだから、『キラ・シの人数を増やす』ことが一番必要なんだよ。

 ガリさんとか上位陣みたいに、ガツガツ首を獲ってきてくれるのも必要だけど、城を守る人も必要だし、子供たちを育てる人も、村を守る人も必要なんだよ。前線に出ないなら、そこまで強くなくてもいいんだ。

 特に、食料を作ってくれる人は、弱くてもいいんだよ。でも、キラ・シであることが大事なんだ。

 他から食料を買ってると、毒を入れられたら終わりだから。

 最初の子だけでも一人残らず集めたいし、馬が欲しいし、最大に強くなって貰わないといけないから……やっぱり、ゼルブは欲しいかな……」

 みんなが私の頭を撫でてくれた。ナニナニ?

「ゼルブをさ、仲間にするときに『キラ・シになれ』って言えばいいんじゃねーの? そのケイヤクとかなんとか、約束とかでいうこと聞かせてるから裏切るんだろ?」

「……キラ・シにしたって裏切るかも。私が、キラ・シとかゼルブとか、この時代の約束事がいま一つよく分からないから……契約書があるわけじゃないし……」

「そこは、レイ・カかリョウ叔父に任せろ」

 ガリさんには任せないの?

「ゼルブは、顔見て決めよう」

 サル・シュくんが、シャンッ、と手を打った。

 全員が頷く。

「では、あとは食い物だな。ゼルブがいなければ、どうなる?」

「……じゃあ……栗の木を詐為河(さいこう)東岸に植えてみる? それと、各地の山の麓にずらっと……でも、あきらかに車李(しゃき)では栗は育たないような木がするけど……」

「シャキにたくさん生えてた木の実、あれのタネばらまいといたら生えるんじゃね?」

「植えないと。あそこ、土地がカチンコチンだから、穴を掘るのが大変なんだよ」

「なんで植える?」

「なんでって……」

「実なんて、土の上に落ちたら勝手に生えるだろ。じゃなきゃ、山の木、どうやって生えてんだよ」

 真理だ!

 現代園芸に毒されてるな、私。

「ハルナは、難しいこと考えすぎ。手間増やすこと考えてる」

「そ……れは、そうかも……」

 さっきから『栗の木を植える』って言ってたから、タネも植えるものだと思ってた。『栗の若木を植える』なんだもんね。そっか。

 そっか! タネって、埋めなくてもいいんだ? ホントに?

「ただ、あれ、ナツメヤシとかデーツとかいうのだよね? 何年で実がなるだろう?」

「実がなるならないも大事だけど、カラッカラの土になんか生えるなら、ばらまいときゃいいだろ。そのうち他の草も生えるさ。

 小さくても草が生えたら獣は来る。獣がくりゃ、食っていける。

 兎や鼠が来て、ガンガン巣穴掘ってりゃ、土も柔らかくなるんじゃねーの?」

「……そうだね」

 サル・シュくんからなんか真理をガツガツ突かれてる……

「たしかに、日陰になるだけでも、カラッカラにはなりにくいよね……根がはれば、土も柔らかくなるし」

 あの粘土質の土でも大丈夫かな? でも上の方は、氾濫した栄養のある土が長年盛ってるんだよね?

「じゃー、草生えてないトコに、栗と、シャキで食った実のタネをばらまく、と。そんなの、カイドウ通るときに投げときゃいいよな? 勝手に転がるだろ」

 雑っ!

「そういえば、ショウ・キがカイドウのそばに穴を掘ったと言っていたな」

「あ、それっ! ショウ・キさんだったのっ?」

  

 

  

 

  

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました