【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。120 ~ル・マちゃんがまぶしい~

 

 

 

 

  

 

  

 

 玄関で悲鳴がしてる。早くいかないとマキメイさんが殺されちゃう。

 たしかこの部屋は、ここに靴が、あった…………あった!

 それを履いて階下に下りる。案の定、サル・シュくんがミアちゃんを、マキメイさんから取り上げたところだった。

 今度は下にいるから私が間に入ってマキメイさんを遠ざける。

「ハル! なぜ下にいるっ!」

「私、歩けるよ。大丈夫」

「ならんっ! レイが発狂する!」

 リョウさんが降りてきて、私をル・マちゃんの馬に乗せた。レイ・カさん、そんな心配しないんじゃないのかな?

 とりあえず、あとはいつもと一緒。お風呂入って、地図描いて、寝た。

 翌朝降りてきたら、地図の前でキラ・シが騒いでる。

 少し遠くからレイ・カさんも地図を見上げていた。隣にサル・シュくんがいる。私に気づいたらしくレイ・カさんの肩を叩いて私を見た。

「ハルナ。あれを作ったって?」

 聞いては来るけど無表情。隣の、サル・シュ君の笑顔との差が凄い。レイ・カさん、案外無表情でナニ考えてるのか全然わからない。能面みたい。前は結構、表情あると思ったんだけどな。

「はい」

 というか、翌日にレイ・カさんがお城にいるのも初めてかな? ガリさんもそうだった。もうずっと居るのかもしれない。

 サル・シュくんが、私の首筋をクンクンする。前はみんな嫌がったのにレイ・カさんは腕を組んだまま。

「いつだ?」

「十日以上後かな」

 ああ、私の排卵日?

「そうか……では、その頃帰ってくる」

 レイ・カさんは、サル・シュくんにだけ挨拶して出て行った。

 おおう…………初展開。

「ハルーっ!」

 後ろからル・マちゃんダイブ受けてほかほか。

「ル・マー」

 サル・シュくんがその後ろから抱きついて、ル・マちゃんに回し蹴り食らってる。いつもの展開。

「ハル」

 ル・マちゃんを挟んだ後ろから、サル・シュくんに呼ばれた。

「ルシってのを倒せば、ここは無事なんだな?」

「……うん」

 何とも言えない優しい顔で、サル・シュくんがル・マちゃんの頬にキスした。

「あ、サル・シュくん。出陣なら、ル・マちゃんに挨拶して」

 そのまま玄関から出ていこうとした彼が、振り返った。

 私を見て、私の肩から顔を出してるル・マちゃんを見る。

 ル・マちゃんが私からはがれて、サル・シュくんに抱きついた。

 うわ…………

 サル・シュくん、真っ赤になった!

 あ、そう? そうなんだ? 恥ずかしいんだ? だから、あんなぶっきらぼうなんだ? 男のツンデレってタチ悪!

「勝って来い」

「……もちろんだ」

 車李(しゃき)の援軍を迎え撃つために出ていく喧騒の中、二人は20分ぐらいキスしてた。

 あとは、いつもと変わらない。

 しかも、『十日後』に、レイ・カさんは帰って来なかった。

 まぁ、今、サル・シュくんと留枝(るし)にいるから、帰って来たら一カ月ぐらい前戦を抜けることになっちゃうもんね。

 変わったことといえば、サル・シュくんがずっといないのに、ル・マちゃんがサル・シュくんのことばかり話すこと。

 もう、サル・シュくんの武勇伝、聞き飽きたよ……やっぱり馬鹿なことばかりやってた。

 まぁ、ル・マちゃんが見た武勇伝は、二人でしたいたずらばっかりだから微笑ましい。本当にル・マちゃん、山でサル・シュくんと一緒にいたんだなぁ。

 ガリさんの名前がめったにでない。ガリさんも殆どお城にいないから、接触度で言うと、キスしてたサル・シュくんのほうが上なんだろう。

 リョウさんも、じゅんぐりに制圧に行っていてストレス溜めてないっぽい。地図があるから羅季(らき)城脱出もない。

 車李(しゃき)も下して、ゼルブも入って、一気に留枝(るし)城を乗っ取って『騎羅史国(きらしこく)』にした。

 拠点が留枝になったから、あちこち行きやすくてレイ・カさんが喜んでる。

 しまった……あまりに早く留枝に移動したから、羅季(らき)城で井戸を掘るイベントを忘れてたので、騎羅史のお城の外でやった。もちろん、キラ・シの戦士が騒ぐ騒ぐ。お城の人にも感謝された。

 前回、キラ・シが掘った井戸って、どうなったんだろう?

 それと今回は、車李(しゃき)城をガリさんが『山ざらい』で崩したんだけど、雅音帑(がねど)王が生き残ってるんだよね。

 古今東西まれに見る名君と言われた雅音帑王。

 車李の戦士を全部殺してしまってるから、逆らっては来ないけど、何してくるか……

 一応、詐為河(さいこう)東岸を騎羅史国に割譲とか、用水路の人足とかはすぐしてくれた。陥としたお城への大臣の派遣もすぐで、騎羅史国にどんどん税金代わりの物資が積み上がっていく。留枝の大臣以下は残ってるし、ゼルブがいるから、そこらへんの管理は任せてた。

  

 

  

 

  

 

 二カ月目。

 また、サル・シュくんが私の首筋でクンクンして、指笛を拭いた。

『四位から三位へ、集合』、だ。レイ・カさんを呼んでるのね。帰ってくるのかな?

「レイ・カ帰ってくるから、迎えてやって?」

 サル・シュくんがかわいい笑顔でチュッ、て投げキッスする。それ、どこで覚えたの?『最初』の頃はしてなかったよね?

 ああ、いや、エアキスしてたのは覚えてる。だから、最初からこういうことを彼はしてたんだ。

「サル・シューっ!」

 ル・マちゃんが駆けてきてサル・シュくんにダイブ!

 今回は二人の子供が見られそう。

 ル・マちゃんも、全然葛藤してない。彼女は私と生理周期が一緒だから、排卵日も似たような筈。

 翌日、帰って来たレイ・カさんに、抱かれた。

 キラ・シがH巧いのって、デフォなの?

  

 

  

 

  

 

 階段降りるのがつらい…………

 ル・マちゃんものたうってた。サル・シュくんが抱き上げて、ぱーっと階段を下りていく。

「サル・シュくんっ、レイ・カさんは?」

「出たよ」

 ああ……そう…………

  

 

  

 

  

 

 多分、もう、

 

 彼が私に触れることはないんだろう……

 唐突にそう思った。

 サル・シュくんと笑い合ってるル・マちゃんがまぶしい……

  

 

  

 

  

 

 詐為河(さいこう)東の村が少しだけ大きくなって、キラ・シが陥としたお城は五つになった。

 子供が生まれた時さえ、レイ・カさんは帰って来なかった。

 三日後に一度帰って来たようなのに、地図だけ確認してそのまま出て行った。

 そこに、私が、いたのに……

 翌日帰って来てようやく、彼は子供を見に来た。

「ミニ・カ」

 名前だけつけて、そのまま出ていこうと、した。

 だから、私から追い駆けた。

 一度だけ。

 彼の首に抱きついて、彼にキス、した。

「いつもお疲れさまです。今後も勝ってください。キラ・シのために」

「……あ…………ぁあ……………………」

 どんな顔をしたのかは、見なかった。

  

 

  

 

  

 

 

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