また、富士見台の家……
マジで?
どうやったらこのタイムループ終わるの?
私は、何回殺されなきゃいけないの?
90才ぐらいまで生きたのは初めてだったけど…………それでも死ぬの?
そして、ココに戻ってくるの?
どうしたら、いいの?
また、富士山が、噴火、した……
ゼルブは、味方じゃなかった……
でも、あの様子では、サギさんは、味方、だった?
私達を逃がしたから、息子のチヌさんに殺されたんだもの。
サガ・キさんは、味方……だった? サル・シュくんだって、私達のために戦って死んだ。
レイ・カさんも、味方だった。
チヌさんは、ガリさんとサル・シュくんがいなければ、背くんだ。
あの『契約』を『キラ・シの部族』としてしまえばどうだろう? 一人でも生き残っていれば、助けてくれる?
わかってた、筈だった。
ゼルブは、二人が居なくなったら背反する可能性がある、って。『最初のうち』にリョウさんに言った覚えが、ある。
でも、あそこで来ると思ってなかった。
留枝(るし)王家が滅びた瞬間、攻めてきたキラ・シに掌返しをした。
ゼルブは、ああいう部族なんだ。
ガリさんが生きてるウチに、サル・シュくんが生きてるウチに、もっと若いキラ・シと契約をしなおさなきゃ、いけない…………せめて、私と……
でも、あれで、キラ・シは生き延びたと思ったのに……
ナガシュのジャラード王子…………あんなのが、生き残っていたなんて……
キラ・シは、敵部族の子供を自分の部族に引き取るから、子供を殺さないんだよね。
この大陸でも、そうなんだ。
だから、あの王子が生き残ったんだ。
さすがに、戦のことは私も聞かないし、言ってくれないからなぁ…………
それにキラ・シは、基本的に羅季語が喋れないし、ガリさんやリョウさんでも片言だし、ナガシュはナガシュ語で、羅季語がわからないから、意思の疎通はできなかったよね。まぁ、王族が戦禍を逃れるのは、古今東西あることだよね。
ため息しか、出ない。
『俺と父上の子供がキラ・シを救う』
ル・マちゃんのあの先見は、真実なのかもしれない……
サル・シュくんとル・マちゃんの子では、ダメなのかも、しれない……
前も、普通にしてるとあの二人、ラブラブになってた。一度、疎遠になったのは、サル・シュくんが黙って留枝に行っちゃったとき。
あの時に、ル・マちゃんにガリさんを焚きつける?
まだ、ル・マちゃんとガリさんの子供は、見てない。
よし。
今回はそれを目指そう。そして、先見がどうなるのか、確認しよう。
私が死ねるように……
そして、森の中。
あ、あのにおい。キラ・シのにおい。
今度はリョウさんかなガリさんかな………………レイ・カさんはそろそろ勘弁してほしい……
後ろから、喉元に、蛮刀っ!
「……すげぇいいにおい…………」
え? この声…………
すっごい美少女が、左後ろから私を覗き込んでた。
馬に乗っていないル・マちゃんが……
「おいっ! なんか凄いのがいるっ! 父上っ、リョウ・カっ、サル・シュっ! レイ・カっ! ちょっと来いっ!」
うっわ……あっというまにキラ・シ上位が揃い踏み。
この周りにこれだけいたんだ? まだレイ・カさんはいない……けど……あの人はやっぱり遠くにいるんだな……だから、彼が通りすぎたら、キラ・シが誰もいないんだ。
馬の上から巨人に睨み下ろされて、怖い怖い怖い。
「何これっ! なんの毛皮? 髪か? ふわふわしてるっ! すっごい白いっ! やわいっ! なんだこの手っ! なぁ、見ろよっ! 爪がキラキラしてるっ! すげーっ! なんだこれっ、なんだお前っ! やわらかいっ!」
後ろから抱きしめられて、揉みくちゃにされた。
「あれ? お前っ……」
ブレザーとシャツを千切られて、ブラジャーを押し上げられた。
ふっ……わっ……………っ!
裸っ! こんなところでっ……裸に、されたっ!
「見ろっ! 女だっ! これ、女だっ! 女だろっ!」
「女だよっ! 女だよっ! やめてっ! いやぁっ! 助けてっ!」
メッチャ胸揉まれたっ! 股間も触られた。スカートめくられたっ! パンツ下ろされてっ! 嘘でしょっ! そんなところ触らないでぇっ!
「俺のだぞっ! この女、俺のだぞっ!」
なぜル・マちゃんがそんな宣言を? 本当に男の子なの?
「ル・マちゃんだって女の子でしょっ!」
「え?」
ル・マちゃんが止まった。
え? まさか、男の子なの? そこまでランダム?
「ル・マ、あとにしろ」
これ、ガリさんっ?
「女。なぜキラ・シ語を話す」
スカート下ろしてシャツを掻き合わせる。こんな……こんなことされたの……初めてよっ! 女のル・マちゃんが一番酷いとかっ、なにごとなのっ!
『最初』のリョウさんの時にこれされてたら、私発狂してたかも!
「……し……しらない…………けど、言葉は……わかり…………ます……」
目の前が何度も真っ赤になって、凄い……目眩、……興奮しすぎた…………息が……っ!
「この女、目が回ってる。今は無理だろ」
サル・シュくんの声…………
「寄るなっ! 俺のだぞっ!」
「わかったわかった。話はあとで聞くから。とりあえず、ガリメキア、まだ日も高いし、降りるだろ?」
ちょっと……まだ、ル・マちゃんの手がっ…………
「ぁんっ! やめっ…………そんなとこっ……っひぃっんっ!」
本当に? 本当にル・マちゃん男の子なの?
「痛い痛いっ! 痛いっ! ル・マちゃんっ痛いっ!」
「えーっ! なんでだよーっ!」
「ル・マ、その女は初めてなんだ。それ以上してやるな」
リョウさんの声?
こんなとこ、みんなに見られてる……助けてっ! やだっ! 怖いっ! 恥ずかしいっ!
「助けてっ、リョウさんっ! ガリさんっ! サル・シュくんっ! お願いっ! 早くっ……とめっ……て……っっっ! やぁんっ! もうやだぁっ! 見ないでぇっ!」
「ル・マっ!」
全員の声が、かぶって、ようやくル・マちゃんが止まってくれた。
「なんで俺の名前知ってた?」
はっ……はっ………………まだ胸揉まれてるけど…………さっきよりは、マシ……
「全員の名前を言ったな。女、なぜ知っている」
「先見……先見、する、から…………私…………見えてる…………お願い、ル・マちゃん…………もう、やめてぇっ!」
「ル・マ!」
ガリさんの一喝。
ムー……って、ル・マちゃんが唸った。
「その女から、離れろ」
「俺のだぞっ!」
「離れろ」
「盗る気だろっ! 俺から盗る気だろっ! 俺のだぞっ! この女は俺のだっ!」
「嫌がる奴に無理をするな、と、言ったな?」
ガリさんが、左手でちょいちょいって、ル・マちゃんを遠ざけるように振る。
ル・マちゃんが、初めて私の顔を覗き込んだ。
「あ…………ごめん………………」
謝ってくれてるけど……なにが?
もう全部がゆがんで水の中にあるみたい。
手を離してくれたから、やっと服を整えられた。パンツ膝まで降りてるしっ! もうっ、みんな見てる前でパンツ上げるとか、ブラジャー直すとか! なにこの羞恥拷問っ!
「なんでじっと見てるのよっ! あっち向いててよっ!」
「なんで」
サル・シュくんがまじめに言い返してきた。
「恥ずかしいじゃないっ!」
「ハズカシイ?」
「見られるのがイヤなのっ!」
「意味は知ってるけど………………よく喋るな、この女……」
「下の女はこれぐらい喋る」
「そうなの? 喋る女初めて見た! かわいい声だなーっ! もっと何か喋れよ」
かわいいっ!
サル・シュくんが馬を下りて、私の前にしゃがみ込んだ。
うんこ座りして、膝に両手だらりと置いて、私でも殺せそうなぐらいのんびりしてる。まぁ、殺せないけど。これで一瞬で刀抜くもんな、サル・シュくんって、怖い。
「もっと……って、言われても………………」
「何か先見しろよ」
「先見…………」
何を言ったらいいだろう?
「あなたたちはキラ・シで、女の人を求めて山を降りてて、このまま降りると羅季(らき)城に出るから、そこで戦争している覇魔流(はまる)軍と羅季軍を一掃して、羅季城に居すわる……とか?」
「半分合ってるけど、半分が、先見? ラキジョウ?」
「『下』にある部族の名だ」
「リョウ叔父が知ってるの? 本当に先見?」
「そこで、ガリさんが『山ざらい』を出すときに、斜面に合わせて刀を振ったら、全員さらえるよ……」
ガリさんの息が止まってる。目が見開かれた。
右側を見て、リョウさんを見て、私を見て、もう一度右側を見て、リョウさんを見て、私を見て、小さく頷く。馬のツノを持ってた手がちょっと動いてた。
「名前は?」
ガリさんが、ようやく聞いてくれた。
「春菜」
「ハルナ」
「ハルナ」
リョウさんとサル・シュくんが復唱する。
「俺のだぞっ! ハルナは俺のだぞっ!」
ル・マちゃんが吠えてるけど、何も聞いてない感じで三人が目を見合わせて頷き合ってる。ナニ……?
「ル・マの次に、誰が最初にここに来た?」
ガリさんが、私に、聞いてる?
ナニソレ……
「俺のだって言ってるだろっ!」
「お前では子を産ませられん」
「先見できる女の、子は貴重だ」
「同時だったよな?」
サル・シュくんが私にねじ込んでくる。
「レイ・カはおらんな」
リョウさんまで…………
「ル・マっ!」
ル・マちゃんが、自分の名前叫んだ。走ってきた馬に私を乗せて、走り出す。うっ……わっ! スカートのベルトで持ち上げられてっ……おなかが千切れそうっ!
「ハルナは俺のだからなっ!」
いや……ちょっとまってっ! 馬に、横に腹這いとかっ! 腰を押さえてくれてるの、ル・マちゃんの左手だけっ?
崖がっ……!
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