リョウさんの腕に抱えられて『岩の中』に突入。夜で見えないけど、大きなお城だよね、これ。
「え? リョウさん、馬降りないの?」
サル・シュくんもル・マちゃんも、馬でどんどん建物の中に入ってる。
「こんな気味の悪い洞窟で、馬がなくてどうする」
ああそうか、洞窟扱いなんだ? どう見ても人工物なのに。
刀も右手に抜いたままだもんな……他の子たちも全員そう。たしかに、馬で歩いても大きな廊下だけどさ、馬は無いでしょ馬は。
というか、この建物……凄いな……
入り口は馬がギリギリだったけど、中は広い。
岩を掘って作ってるらしいのに、壁とか天井が綺麗に直線! 柱に螺鈿とか金彩とか……壁の燭台が金色だし、彫金されてるよ!
凄いな、この玄関フロア。100人ぐらいいても大丈夫な広さ。
前後のドアが左右対称に八つ、玄関通路の真正面に大扉が一つ。その壁際のサイドにも小さなドアが一つずつ。
キラ・シの人達50人もいないから、たしかに馬でも余裕だけど……天井も高いしな。二階ぶち抜きかな? あの高いところにあるシャンデリアっぽいものは、どうやって火を付けたり消したりするんだろう。壁の灯台も全部消えてるから、みんなが持ってる松明の灯しかない。
「洞窟じゃないよ、お城だよ」
「オシロ?」
「これ、王城じゃないの?」
「オウジョウ?」
「王様のお城……えっと、族長の家」
「……ああ、そうか、族長の家か…………」
通じた! なんか、凄い、嬉しい!
「その前に、灯台に火をつけようよ。松明あるんだし」
「トウダイ?」
そっかー、灯台知らないのかー……
家の灯どうしてたのかって聞きたいけど、……ああ、囲炉裏だけだった可能性か。
「そこの、壁のお皿に紐があるでしょ? それに松明の炎近づけてみて」
「サラ?」
皿を知らない? 私の言葉が通じてない?
左手で皿をかたどって、そこから右手の人指し指で紐が垂れてるのを表現してみた。
サル・シュくんがリョウさんを見た。リョウさんが頷いたら、松明を壁に近づける。
火がついたら、オオオオッ! って全員が大声出してホールが反響で震え上がった。耳が痛い痛い!
「こんな狭い所で叫ばないでよーっ!」
みんな、周りの灯台に火を入れてる。
「壁が明るくなるとかっ! 凄いなっ!」
ル・マちゃんやサル・シュくんが凄い興奮してる。
「リョウ叔父、ここにたき火作るか?」
「雨降っても消えなくていいな!」
「えっ、ここにたき火作るの? なんで?」
サル・シュくんが、たき火の材料持って来い、って言うから何人か出て行った。
「ん? ここで野営だろ?」
野営っ? 城の中で野営!