【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。101 ~ここにいるぜ?~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

 ゼルブって情報が早い分、『最新』を知ってるんだ?

 はー、でも、とにかく、安心した。

 一区切りついたわ。

 とりあえずこれで、後ろから刺される心配は最小限になったよね?

 最初に私が殺されたときの犯人がサギさんだ、って確定したわけでもないから、本当に安全かどうかはわからないけど。まぁ、戦争してるんだから、命の危険はずっとあるよね。

 風邪引いても死ぬし……

「ごめんリョウさん、私の先見はここまで。

 ここから先は、何一つ見えないの」

 私が毎回死んでたから、この先知らないんだよね……

 でも、普通に車李(しゃき)を落とすより二週間ほど速かったなー……

 前は、そこからサル・シュくんが留枝(るし)を落としてたから、あと一週間かかってた。

 三週間も速くなってる。

『初回』は、ガリさんが車李を落とさずに帰って来たから、使者の到着に時間がかってたんだよね。その分、留枝も様子を見てたから、羅季奇襲が遅かったんだ。

『山ざらい』で塔を崩したときも、崩れたあと、一週間ほどかかってから王様が挨拶に来た。

 あれ、挨拶に来たのが遅れたんじゃなく、ガリさんたちが散らばってたから、どこに挨拶にいっていいのかわからなかったんじゃないかって気がする。だって、ガリさんたちが私の牛車に集まったらすぐに王様出てきたもん。

 ガリさんたちはとにかく、ヒットエンドラン。

 攻撃したら逃げるから、降伏の使者を出すのが簡単じゃないんだよね。勝ってるのに逃げちゃうから、取り逃がすんだ。

『最初』の時の、車李の同盟の使者とか、あれ、もう一度攻めてたら絶対に、無条件降伏の使者だったっぽいもん。

「先見がなくても戦ってきた。ハルがいたから楽だっただけだ。普通の戦は楽ではない。それだけの話だ」

「ありがとう」

 ポンポンって頭撫でてくれたから、頬にチュッ。

 問題は、ここからあと15年の間、どうするかなんだよね……

 15年って、長いよねぇ……

 その間に、ガリさんとリョウさんのお葬式イベントがあるかと思うと、気が重い。でも、そこまでいかないと『キラ・シの存続』はなったことにならないもんね。

 とにかく『私が死なない』ようにしないと。

 保身もあるけどもちろん、また一から全員が危険になる。

 なんなんだろう、この世界って。

  

 

  

 

  

 

 数日後、キラ・シの半分とサル・シュくんとレイ・カさんと、ゼルブの戦闘部隊が羅季に帰って来た。

 ガリさんはまだ。

 これはゼルブから報告貰ってたから心配ない。

 既にゼルブの人達、キラ・シとメッチャ仲良くなってる。特にキラ・ガンと良さそう。あっちで、前みたいな話し合いしたのかな? ……できないよね? 私がいないんだし。でも脳筋ってそこらへんどうにかしそうな気がする。

 筋肉は国境を越えるよね。

「はーいっ! ハルっ! 褒めて褒めてーっ! ゼルブつれて来たぜーっ!」

「サル・シュくん大手柄っ! すごいっ! さすがっ!」

 ヘッヘーンっ! とドヤ顔全開のサル・シュくんに、ル・マちゃんが天井からハイキックかました。

「ナニッ! どこから攻撃してくんだル・マっ!」

 降りてきたル・マちゃんと天井を交互に見てサル・シュくんが怒鳴る。それでも相変わらず手で軽く避けたキミも凄かった。

 サル・シュくん、ル・マちゃんより、ちょっと、じゃなく、はるかに強いよね?『速さ』がちょっと負けるだけじゃない?

「もうっサル・シュになんてつかまらないもんねーっ!」

 スタタッ、とル・マちゃんが天井に駆け上がったのを見て、サル・シュくんも壁を駆けたけど、やっぱり二歩目が壁にかからないみたい。まぁ、すぐ行けるようになるだろうけど……

 キラ・シに『天井走り』なんてチートが加わるわけだ。

 強くなっていいじゃないかっ!

「そうだ……オフロ…………かゆい……」

 何回か壁に挑戦してたサル・シュくんが、お風呂に走って行った。

「何もそんなに急がなくても」

「他の奴が入ったら泥水になるっ!」

 そうだね。キミもその一人だけどね。

「あー、なら、俺も今入っとこ……」

「やめなさい、ル・マちゃん。ちょっとおいでっ!」

「なにーっ!」

 お風呂に流れていくキラ・シがクスクス笑ってる。ナニヨ。

「サル・シュくんに抱かれる気がないなら、彼の前で裸にならない」

「えーっ」

「えー、じゃないのっ! そのうち襲われるよ!」

「サル・シュはそんなことしない」

「そうじゃなくて、サル・シュくんがかわいそうだからやめてあげて。

 ……って、サル・シュくんっ! ハヤっ! もう入ってきたの? それ、洗ってないでしょ? 先に服着て! 玄関を裸で歩かないっ!」

 全裸で髪を下ろしてるサル・シュくん。顔が半分隠れてて……なんか、凄く、カッコイイ……お湯が目に入るからか、微妙に目を細めててセクシー。

「忘れ物! もう一度入る」

「なにをわすれ……」

 私の目の前で、ル・マちゃんにディープキスした。

 ル・マちゃんがちょっとじたばたしてたけど、腕がサル・シュくんの首に回る。

 よし。

「それで、リョウさん、次はどうする?

 前に話してたキラ・シの、三歳児の養育をゼルブに任せたいんだけど、私に丸投げでいい?」

「ああ、それは構わん」

「サギさんっ! サギさんいるっ!」

「はいっ! 私がサギです!」

 あ、そっか。初対面だった。

「頭領のチヌさんのお母さんのサギさん?」

「はいっ……どこかでお会いしましたか?」

「ちょっと、先見で知ってたから」

「ああ! ハルナ様ですねっ! アツケイからハルナ様の話をお聞きして、キラ・シが留枝を陥としてくれないかと、願っておりました!」

 随分、以前より軽い声だな。遠慮がないというか、あけすけというか。前はガリさんとサル・シュくんにあれだけ脅されてたからかしこ張ってただけかな。ということは、今回はそんな脅されてないのね?

「ナニそれ」

「大陸で、一番強い国に仕えるのがゼルブの願いです。サル・シュ様が留枝王族を葬って下さって、助かりました!」

 これは……サル・シュくん、ゼルブにやらされたんじゃない? 本当に、ゼルブが留枝王を守るために12人も死んだんだろうか?

「ガリ・ア様のあの強さっ! 素晴らしいですっ! 大陸制覇に我がゼルブが一助差し上げますっ!」

「もしかして、車李に、羅季城の情報を流してた?」

「直接は流しておりませんが、留枝王が雅音帑(がねど)王と取引をしておりました」

 ああ……だから、『キラ・シ』の名前を車李が知ってたんだ?

「留枝って車李と敵対してたのに、取引してたの?」

「車李の黄金目当てで、いろいろ情報を流しておりました。

 ナガシュが車李に攻めるたびに、留枝も車李に軍を出したり、ナガシュが引いたら、情報と引き換えに黄金を要求したりと、どうにか車李からかすめ取ろうとしていましたね」

 そりゃうっとうしいわ。

 そして、隙あらば羅季に攻めてくるんだ? フットワークいいな! そんな面倒臭い国、本当に、今のうちに潰せて良かった! そうだよね、留枝って結構大きな国だったもんね。そうやって、近隣からかすめ取ってたんだろうな。

 多分、王様、頭良かったんだろうに。

 キラ・シみたいな脳筋に目をつけられたら、策略も通用しないよね。

「サル・シュくん、どうやって留枝王を殺したの?」

 まだサル・シュくんはお風呂だ。

「数日は、留枝に潜入して町の様子などをごらんになっていました。

 留枝王が羅季に軍を出そうとして、城門から部隊が出たときに、レイ・カ様一軍が正面から城門に走ったと同時に、サル・シュ様が城壁の弓兵を、とんでもない距離から全部射落として、ご自身も城門に走られたあと、橋の欄干をパパッと渡って城門の側の兵士を一撃で20人ほど倒しながら中に入られました」

 ああ、あの『刀折り』ね。そりゃそんだけ混雑してたら効率いいよね。

「そのまま街には見向きもせず、城の中に駆け入って、衛兵を倒しながら王の間まで上がられて、扉が開かないので、窓から壁を伝って上の部屋に上がり、窓から衛兵を弓で殺してから中に降りて、部屋の中の全員を殺されました。そこに、王族が全部いたので留枝王族が絶滅しました」

 王族が簡単に絶滅するなぁ……

「羅季も一室に全員居たけど、それって、王族の倣いなの?」

「……そうですね…………城門が破られれば、殺される前に自害したいようで、一族が一室に集まることは、珍しくないです。今回は、そういうことを想定してはいませんでしたが、出陣の儀式のあと、みなさまが集まっていたのですね」

 あの沙射王子はなんで助かったんだろう? 生まれたてだから別の部屋に居たのかな? 実際、今回も下の大広間にはいなかったもんな。

 乳飲み子は泣くから、他の部屋に移すのが普通か。そうだよね。静かに死にたいもんね。

『他の城でも、これだけの待ち伏せをされてるかもしれん。戦わないふりをして誘い込むとはタチが悪い。そんな部族の女はいらん』

 リョウさんがそんなこと言ってたな。

 私の『先見』でサル・シュくんも『留枝はタチが悪い』と思って、女の人にも容赦なかったんだろうな。

 時期的には、サル・シュくんがレイ・カさんと行っただけで前も潰せたんだから、今回も潰せたとは思うけど、手引きされたなら、より簡単だったよね。

 私が、羅季入場初日に『先見』でいろんなことを喋ったからだ。

 留枝を、最初から敵視してたから。

 サル・シュくんがお風呂から出てきた。全裸で、髪をシルクのタオルで拭いてる。首から上だけ見たら、湯上がりのOLみたい。ル・マちゃんを見つけて肩を抱いて、くちびるにチュッ、てする。熱い熱い。

「サル・シュくん、留枝王を殺したときに窓から屋根に出たそうだけど、誰かに止められた?」

「あそこで止める奴いないだろ。俺でもやばかった」

 やっぱり……

「それで、部屋にいた女の人も全員殺したの?」

「女? 居たかどうか確認してないけど、あの部屋のは全部殺した。このシロでもやられた、ああいうヤバイ奴らだろ?」

 そのあと、ニコッ、と笑う。

「ハルが言ってたから、同じ服を着てた女は殺さなかったからなっ! ジョカン? だっけ? マキメイみたいなの。それと、武器持ってない奴らも殺してない!」

「それは凄い! ……凄い、けど、その人達どうしたの?」

「孕み日の奴は抱いた。16人。女は52人いた。……そうだ、タンザク書かないとな! レイ・カ達が町の女も抱いてたけど、そっちは数知らない」

 相変わらず……それ強姦にならない筈ないよね?

 ル・マちゃんの肩を抱いたまま、それが言える神経がわからないよ。

「そのあとは?」

「そのあと?」

「女官さんとかどうしたの?」

「俺もレイ・カも、ここにいるぜ?」

 イラッ…

  

 

  

 

  

 

 

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