「は?」
ナニソレ。
「一位にならないとル・マが抱けない……」
ああ、ソレ? それにしても物騒な……
「殺さなくてよくない?」
「寸止めなんかで勝てない。本気で行かないと……」
そっか……
「ガリさん殺したら、ル・マちゃんに殺されない?」
「俺が一位なら、殴り倒して抱く」
そうなんだ……? 全然、想像つかない。できないと思うけどなぁ、そんなこと。
「嫌われちゃうよ?」
「子を産ませるのが先」
サル・シュくんが、膝に顔を埋めて、また、大きく息を吐いた。
「ガリメキアにはもう、抱いていいって言われてるんだけどな…」
「そうなの?」
「そうなの」
「そんな話したの?」
「ル・マがあとで、イラッとしたときにガリメキアに悪いように言ったら、殺される」
「……だよね」
「だから、絶対に無理やりはしないから、抱いていい? って、聞いた」
本当に直球だね、サル・シュくん。
「いつ?」
「一回目は……ル・マの血の道が始まったとき。そのあとも何回か聞いた」
何回も聞いたんだ? 決心するたびに? そして、できてないんだ?
「だから、やっぱり無理だって、サル・シュくん。一位になったからって、無理やりなんて、キミにできないって……」
「えー……」
泣きそうな声してる。
「ル・マちゃんが痛いこと、いやでしょ?」
「そりゃ……」
「そんなル・マちゃんを殴れるわけないよね?」
膝の間から私を見て、また膝に顔埋める。でも、コクコクしてる。
「だから、一位になるとかなんとかじゃないでしょ」
サル・シュくん、無言。
「ル・マちゃんしか居なかったから、ル・マちゃんが好きなだけ?」
「……他のやついなかった」
「私がいたら?」
「ハルは山なら死んでる」
そうですか。
「ル・マちゃんぐらい強い女の子が10人いたら?」
「いなかった」
「いたら? の話だよ」
「だから、いないって」
キラ・シって『たとえ』が通じないんだった。
if論なんて、考えても無駄なことに答えてもらえないんだよね。リョウさんはたまに通じて、考えてくれることもある、って程度。
「俺の前には、ル・マしかいなかった……」
私のほうが溜め息。今回はサル・シュくん、長いこといなかったから、ル・マちゃんがもう、あまり気にしてないんだよね。その分、私がなつかれてるけど……
多分ル・マちゃんは、べたべたすることで好感度が上がっていくんだろうな。離れてれば離れてるほど醒めるタイプだと思う。
今回の私は『リョウ・カの女』だから、多分、これ以上は来ないと思うけど…………『前』は本当に、男性向けエロ漫画展開で大変だったから…………
「じゃあ、どうやったらいい? ハルナさん、考えて?」
言うにことかいてサル・シュくんがそんなこと言う。
「それやめて」
「ナニ?」
「はるなさん、って、やめて。気持ち悪い」
最初からこうだったらなんとも思わなかったけど、しばらくずっと、呼び捨てで呼ばれてたから、さんづけが気持ち悪い。
あ、サル・シュくんがにしゃーって笑った。
しまった! 弱点を自分でばらしてしまった!
「ハルナさんっ! かわいいっ!」
くそっ…………マジで即言うっ!
「そう言うところが、私に頭突きを食らってみんなが喜ぶところなんだよ!」
「そういうところって?」
「人の弱点を遠慮もせず、的確に鋭角えぐってくるところっ!」
「弱点を見せる方が悪い」
「そりゃそうだけどっ」
「弱点を見せたなら、そこを突っ込まれないぐらい口を塞がないと駄目だろ」
真顔? 冗談じゃなく?
「…………具体的には?」
「リョウ叔父が、ハルのことでからかわれたら、本気で斬りかかってくるぐらい」
ファッ!
「ハル、真っ赤!」
顔を覗き込んでくるっ、この直球小僧っ! ホント、引かないよねッ、キミ! 真顔だったから、つい真剣に聞いてしまった! この緩急のつけ方も巧すぎて肚立つーっ!
「ね? ル・マを説得してよ、ハルナさん」
すっごいかわいい顔でお願いしてくる。
いつもツンとしてる猫がなついてくるみたいにかわいいっ!
「ぜっっったい、イヤ! ……あっ……」
サル・シュくんが青ざめて私の前から飛びのいたのと、私が浮いたのが、同時。
「リョウさん……?」
左手で抱き上げられてた。
私が座ってた椅子にリョウさんが座って、私を膝に座らせた。そのあと、リョウさんは立ち上がって、私を椅子にもう一度座らせて、その隣の石畳にあぐら組んだ。椅子嫌いだもんね、キラ・シのみんな。
サル・シュくんはどこか行った。
速いな、ホントに。
あの青ざめ方は、本当にリョウさんに怒られることを言った、って自覚してる顔だ。それぐらい私を怒らせたと思ってる。別に、そこまで怒ってはいないんだけど。怒らせたと思ってるなら、怒って上げよう。
「もう一度、あいつに頭突きしてやれ」
「……うん」
もう随分涼しいのに、リョウさんの体から蒸気が上がってる。
「220人抜き、おめでとう、リョウさん」
「ああ……ありがとう」
私が、膝に肘をついてリョウさんに近づいてたから、かな?
リョウさんが、私を見上げて、頭そっとつかんで、キス……してくれた。
うっわ………………凄い……幸せー……っ! キャーッ!
「ハルに褒められるのが、一番嬉しいな」
「そ……そうっ………ありがとうっ!」
あ、サル・シュくんがあんな向こうから、投げキッスよこした。リョウさんがそっち見たら隠れる。速い。
「サル・シュにナニを言われていた?」
コメント