【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。107 ~ふにふに~

 

 

 

 

  

 

「ル・マちゃんを口説くの協力してって」

「あぁ………………難儀だな……」

 半分以上はからかわれてたけど。

「ガリさんがさ、『山ざらい』したら腰が痛いらしいけど、聞いてる?」

 リョウさんが、なんか曖昧に頷いた。知っては居たんだ?

「できたら出したくないとは、ガリも言ってた」

「そんなつらいんだ?」

「女を抱きにくくなるらしい」

 そうですか。

「それって骨に負荷が…………えっと、無理がかかってるんだよ」

 やっぱりチートの反動は来てるんだ。そりゃそうだよね。

「そうだろうな。あの威力なんだ。何か支障はあるだろう。

 ただ、車李(しゃき)のシロを崩すとか、ガリでなければできんからな。ガリも喜んでいたし、今後もああいうことはするだろうな」

 そりゃ、あんな、この時代に大砲みたいなこと、できたらやりたいよね。

 ゼルブも、あれを見て怖じ気づいたんだろうな。

 そりゃ怖いと思う。

 一枚岩のお城を壊したんだもん。あの砂煙、凄かった。あのあと、車李(のあそこらへんどうなっただろう?

 あ、キラ・シが物凄い歓声をあげた。

 リョウさんが立ち上がる。

 ガリさんが、土俵の真ん中に出てきたんだ。

「リョウさんっ! がんばって!」

 リョウさんは、ガリさんに向かって歩いていく。手を振ってはくれたけど、私を振り返りはしなかった。

 どんどん、体が大きくなっていくみたいに見える。リョウさんの闘気が、膨れ上がっていく。漫画だったら、津波のザッパーンってのを背景に描かれてるだろうな。

 キラ・シが、全員、座り込んだ。

 シーン……としてる。

 あ、サル・シュくん、井戸に座ってる。

 のしっ……と……背中にふにふに。

 ル・マちゃんが後ろから、椅子をまたいで私に抱きついてきた。肩から土俵を見てるみたい。少し体重を掛けられて、私、前のめり。

「ル・マちゃん……ちょっとこの体勢は…………」

 つらいよ……って言おうとしたのに。

「サル・シュに、ナニ言われた?」

「え?」

 リョウさんが、土俵の真ん中で刀を何度も握り直して、ガリさんも、姿勢を低くして…………

 思わずル・マちゃんを振り返ったときに、ワーッ! って聞こえて、土俵を見た。

 リョウさんが、下からガリさんを切り上げて、ガリさんが剣でそれを受けて、剣が曲がった! 誰かがガリさんに銅剣を投げたから、ガリさんが曲がった剣をキラ・シの向こうに投げて、新しいのを持ち直す。

 リョウさん凄い! ガリさんとやってても全然疲れた素振りない。どんだけの耐久力なのそれっ!

 ただ、まぁ……全力であたってもガリさんには全然勝てそうにはないから、たしかに、220人抜いた方が楽しいのかも……

 ガリさんももちろん、『山ざらい』は出せないけど。

 でも、うわ……すっごいっ…………車李軍めっためたにしてるより迫力ある。当然か。全然強さが違うもんな。

 いや、ちょっと……胸が苦しい。怖い。

 リョウさんの気迫が……膨れ上がってきて…………あっ! ガリさんも、全開っ!

「いっ……」

 おなか……っ…………ズキン、って……

「ハルナ様っ!」

「ハル?」

 マキメイさんが駆け寄ってきてくれて、ル・マちゃんが玄関に寄せてくれた。

「負けたっ!」

 リョウさんが、両手を上げて下がったみたい。

「お前に全開させただけ、前より強くなっただろうっ!」

 ガリさんの返事は、聞こえなかった。

  

 

  

 

 

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