「ル・マちゃんを口説くの協力してって」
「あぁ………………難儀だな……」
半分以上はからかわれてたけど。
「ガリさんがさ、『山ざらい』したら腰が痛いらしいけど、聞いてる?」
リョウさんが、なんか曖昧に頷いた。知っては居たんだ?
「できたら出したくないとは、ガリも言ってた」
「そんなつらいんだ?」
「女を抱きにくくなるらしい」
そうですか。
「それって骨に負荷が…………えっと、無理がかかってるんだよ」
やっぱりチートの反動は来てるんだ。そりゃそうだよね。
「そうだろうな。あの威力なんだ。何か支障はあるだろう。
ただ、車李(しゃき)のシロを崩すとか、ガリでなければできんからな。ガリも喜んでいたし、今後もああいうことはするだろうな」
そりゃ、あんな、この時代に大砲みたいなこと、できたらやりたいよね。
ゼルブも、あれを見て怖じ気づいたんだろうな。
そりゃ怖いと思う。
一枚岩のお城を壊したんだもん。あの砂煙、凄かった。あのあと、車李(のあそこらへんどうなっただろう?
あ、キラ・シが物凄い歓声をあげた。
リョウさんが立ち上がる。
ガリさんが、土俵の真ん中に出てきたんだ。
「リョウさんっ! がんばって!」
リョウさんは、ガリさんに向かって歩いていく。手を振ってはくれたけど、私を振り返りはしなかった。
どんどん、体が大きくなっていくみたいに見える。リョウさんの闘気が、膨れ上がっていく。漫画だったら、津波のザッパーンってのを背景に描かれてるだろうな。
キラ・シが、全員、座り込んだ。
シーン……としてる。
あ、サル・シュくん、井戸に座ってる。
のしっ……と……背中にふにふに。
ル・マちゃんが後ろから、椅子をまたいで私に抱きついてきた。肩から土俵を見てるみたい。少し体重を掛けられて、私、前のめり。
「ル・マちゃん……ちょっとこの体勢は…………」
つらいよ……って言おうとしたのに。
「サル・シュに、ナニ言われた?」
「え?」
リョウさんが、土俵の真ん中で刀を何度も握り直して、ガリさんも、姿勢を低くして…………
思わずル・マちゃんを振り返ったときに、ワーッ! って聞こえて、土俵を見た。
リョウさんが、下からガリさんを切り上げて、ガリさんが剣でそれを受けて、剣が曲がった! 誰かがガリさんに銅剣を投げたから、ガリさんが曲がった剣をキラ・シの向こうに投げて、新しいのを持ち直す。
リョウさん凄い! ガリさんとやってても全然疲れた素振りない。どんだけの耐久力なのそれっ!
ただ、まぁ……全力であたってもガリさんには全然勝てそうにはないから、たしかに、220人抜いた方が楽しいのかも……
ガリさんももちろん、『山ざらい』は出せないけど。
でも、うわ……すっごいっ…………車李軍めっためたにしてるより迫力ある。当然か。全然強さが違うもんな。
いや、ちょっと……胸が苦しい。怖い。
リョウさんの気迫が……膨れ上がってきて…………あっ! ガリさんも、全開っ!
「いっ……」
おなか……っ…………ズキン、って……
「ハルナ様っ!」
「ハル?」
マキメイさんが駆け寄ってきてくれて、ル・マちゃんが玄関に寄せてくれた。
「負けたっ!」
リョウさんが、両手を上げて下がったみたい。
「お前に全開させただけ、前より強くなっただろうっ!」
ガリさんの返事は、聞こえなかった。
コメント