「他に誰がつける?」
そうだね。
三千人分の名付け親……凄い。
そっか、だから沙射皇帝に名前つけろって言われても、普通につけたんだ? で、名前つけたから、大事にしてるんだ? そっかそっか。
沙射皇帝も、ガリさんにとっては『自分の子』扱いなんだ?
納得した。
そろそろ歩きたい。
ベッドから足を下ろしたところにリョウさんとサル・シュくんが来た。
案の定、ベッドに抱え戻されて、頭ぽんぽんされる。
「もう歩けるってばっ!」
サル・シュくんは、何も言わずに、私より奥にいるマキメイさんを抱いて連れて行った。
「腹が凄いことになっとるじゃないかっ! 千切れて落ちる!」
「そんなの聞いたことないっ! 大丈夫っ!」
せっかくつけた筋肉が全部落ちちゃうよっ!
「おなかは、リョウさんが揉んでくれれば、小さくなるよ」
って言ったら、本当に、手が開いたときにモミモミモミモミモミ、飽きもせずに延々としてくれるようになった。
いやいやリョウさん、他の女の人達もみんな子供うんでるでしょ?
とは、言わない。
そばにいてくれるの嬉しい。
「リョウ叔父ー、入っていい?」
「ダメだ」
モミモミしてくれてるところに来たサル・シュくん。
「リョウ叔父が泣いて喜ぶいいこと教えてあげるから、入れて」
「一応、聞こう、リョウさん」
リョウさんが私を、ほぼ布団蒸しみたいにグルグル巻きにした。
サル・シュくんが、ツカツカ近づいてきて、私の首筋に顔を埋めてクンクンする。
「それやめろっ!」
リョウさんメッチャ怒ったけど、サル・シュくんはへらーっ、と笑って頷いた。
「ハル、今日孕むぜ、リョウ叔父!」
サル・シュくんは、殴られる寸前にそんなことを、言った。
「ナニを言っている。産んだばかりだぞ!」
「マキメイも一昨日それでさー、だから、引き取ったんだけど、ちゃんと当たったよ? その時に、ハルが、二日後ぐらいだなー、って思ったから」
排卵日が分かるのも凄いと思ったけど、そっか……
妊娠してる、ってのも、日数までわかるんだ?
凄すぎるわ、サル・シュくん。
「お前っ、いつハルを嗅いだっ!」
「マキメイを抱き上げるときにっ! そこで怒るなよっ! というか、嗅ぐのもダメなの?」
「ダメだっ!」
「病とかもわかるかもしんないのに?」
サル・シュくんならわかりそう……
「山でさ、あいつそろそろ死ぬぜ、って言うの、当たっただろ?」
既に当ててた!
「重くなる前に分かるかもしれないだろ! 嗅ぐのぐらい、いいよな? リョウ叔父!」
リョウさんが、すっっっごいいやそうに頷いた。
「今日やっちゃえ」
「……産んだばかりだぞ? 腹もこんなんだし」
「全然大丈夫」
「マキメイは、初産ではなかったからではないのか?」
「他の女もちゃんと当たったよ? 初産が10人ほどいた」
サル・シュくん……
「ま、あとは好きにしてっ!」
さっそうとサル・シュくん退場。
「そうそう、女たち、もうみんな普通に歩いてたから、ハルも歩かせて大丈夫だろ」
「そうだよ、リョウさん。私も歩けるって!」
サル・シュくんが出て行った部屋で、リョウさんはしばらく、立ち尽くしてた。
結局、昨日、シタ。
一日くたばってしまった。
「……リョウさん、なんで、あんな何回も、イかすの?。一回でいいよ」
「何回もそうしたほうが子が生まれやすいらしい」
「ホントに?」
「そう伝わってる」
キラ・シが嫌われない原因はこれだろうな、とは、思ってたけど、多分これだ。無理やりしない上に気持ちいいとか、嫌えるわけがない。
私、処女だったから、翌日はものすごく痛かったけど、『その時』は痛みなんてまったくなかった。
ガリさんも、延々イかせて来たし……頭が溶けちゃうよ。
翌日、部屋を出たらサル・シュくんがニカッ、と笑ってた。私の首筋でスンスン。
「当たってる!」
バッチグーッ! って感じのリアクションされた。あれって古今東西一緒なんだな……
とにかく、ホント凄いね、それ。
「リョウさんの子供?」
「リョウ叔父以外としたのでなければ」
「するわけないでしょっ!」
「これで、ガリメキアの子供産むのは遠ざかったけど?」
まだ、サル・シュくんは、笑ってた。
そっか……、昨日、リョウさんが凄く悩んでたのは、私の体のことだけじゃなかったんだ?
『来年は俺のだぞ』
ガリさんの声が耳に響く。
でも、まだ今年だし、いいのかな?
とにかく、ヨタヨタ玄関まで行こうとしたら、やっぱり息切れしてうずくまっちゃった。リョウさんに地図のところまで連れて行ってもらう。
地図の短冊は南西が殆ど取られて、使い回しのが刺されてた。ガリさんが、既に50枚近く刺さってる。本当に、あの人は凄い。……サル・シュくん、68枚あった……はっやいっ!
もう口説く必要がないから?
他の戦士も、たしかに速いかも。
サル・シュくんて、これでル・マちゃん口説くんだよね。私がル・マちゃんでも、今一つ信用できないわー。
なっがい腕が私の後ろから短冊刺した。
「ガリさ……っ!」
気配消して後ろに立たないでほしい……
振り返った先で、なんか不穏に眉寄せてた。ナニ? 両肩掴まれて、首筋にスンスン。やめてっ!
「ガリ……、触るなとあれほ」
「なぜハルが孕んでいる」
私!
リョウさんが一瞬固まって、息を吐いた。そこに、ガリさんの回し蹴り炸裂。リョウさんの左肩をつかんで、おなかに何回か膝蹴りを入れて、リョウさんが膝をついた。
玄関、シーンッ!
「次は俺だと言った」
それで……怒ってるんだ?
「……まだ、今年だ……」
ガツッ、てもう一度蹴って転がした。
あの熊さんが跳ね上がった!
「リョウ叔父ー、なー、これさー……」
サル・シュくんが、頭をかきながら玄関に出てきた。
広間まで三歩入って、ようやく気づいたらしい。
ガリさんを見上げて、目だけでリョウさんを確認して、私を見て、もう一度ガリさんを、見て、踵を返した。
逃げたっ!
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