富士見台の家……
せめて雅音帑(がねど)王に噛みついてやりたかった。
今回はキラ・シを、守る。
情報は全部出す。とにかく、生き残らないと!
私だって、キラ・シなんだから。
また森の中。
この木もさすがに覚えたね。丁度目の前に大木。右側に、垣根みたいなこんもりした柊。その影に私。
地面はふかふかの落ち葉がいっぱい。
ふわっ……見るんじゃなかった…………
虫がいっぱい居る。
そりゃいるよね。森だもんね。
今まで必死で気づいてなかった。
「だーれだ?」
地面見てたからか、においに気づかなかった。
私の右側に、凄い美少年が、ヤンキー座り。
膝に手を当てて、地面を見てた。
そして、私を見て、にっこり!
思わず私もにっこり。
というか…………今回サル・シュくんっ!!
年下もあり? というか、完全ランダム? たしか、年下だったよね? サル・シュくん。15才って…………私が犯罪じゃないの? 別に、古代だからいいんだろうけど……良心の呵責がっ!
武器を突きつけられなかったのは助かったけど、なんでこんな最初から気を抜いてるの?
「俺はキラ・シのサル・シュ。どこの誰?」
あ、先に名乗るいい子!
「…………どこかわからないけど、春菜です」
「ハルナ? どこかわからないってどういうこと?」
「……気がついたら、ここにいたから……」
「部族は?」
「…………日本」
「ニホン? ニホン部族? 聞いたことないな」
だよね。
サル・シュくんは突然殺さないと思うけど、レイ・カさんの例があるからなぁ…………ここで先見をして良いもんだろうか?
「ヒャッ!」
足元に、蛇がっ!
「毒はない、大丈夫。小さいし」
確かにサル・シュくんの親指ぐらいの太さだけどっ……
「大丈夫じゃないよ…………怖いよ……っ!」
「そうなの?」
「そうなのっ…………早く、どうにかしてっ……」
「食べる?」
「蛇をっ? 食べないよっ!」
パァンッ、て、サル・シュくんが蛇の頭を裏拳で吹っ飛ばした。
やっと、息が、つけた……と思ったら、サル・シュくんが……私の、肩というか、首というか、顔を埋めて、くんくん嗅いだ!
舐められたっ!
「ふぁっ!」
喉から耳までっ! 頭、抱えられて……キスっ! しかもディープっ!
その間に、膝に抱え上げられて、足っ! 内股っ撫で上げてきてっ! ちょっと待ってっ! その先っダメっ!
「何をしている。サル・シュ?」
リョウさんの声っ!
「リョウさんっ! 助けてっ! サル・シュくん止めてぇっ!」
「え?」
サル・シュくんが顔を上げた。手も、咄嗟にスカートを足に巻き付けてくれる。
「まさか、リョウ叔父の女っ?」
「どこに女がいる?」
「こいつ」
「知らん」
リョウさん正直!
サル・シュくんがすっっっごい溜め息、ついた!
ここでサル・シュ君なら、とっさに『俺の女』って言いそうだよね。
「これ、俺の女っ!」
「わかった……が、今にも死にそうだぞ」
「ちゃんと元気」
「なぜそう思った」
「元気!」
相変わらず答えになってないっ! そりゃ、私はまだ元気だけどっ……
「……今、リョウ叔父呼んだよな?」
「そう聞こえたな」
「ハル、どこでリョウ叔父を見た?」
「え……あ…………先見を……する、から…………私…………見えた、の、名前が」
「先見っ! 他に何が見える?」
「……え………………キラ・シの族長がガリさん、副族長がリョウさん、三位がレイ・カさん、四位のサル・シュくん、五位のル・マちゃん、六位のショウ・キさん。山から戦士を集めて女の人を求めて山を降りてる最中で、これから羅季(らき)に向かって、ガリさんが『山ざらい』で全滅させて、サル・シュくんがシャンデリアを避ける」
「半分わかんないけど、半分合ってる」
「ラキは、これから行くところだ」
「じゃあ、後ろやっぱり先見! 初めて聞いたっ!」
ヒュウッ! って、サル・シュくんが軽く口笛吹いた。
「俺のっ! ハルは俺のだぞっ!」
「わかったと言っている……ああ、ガリッ! サル・シュが女を見つけた。なぜこんなところにいるのかわからんが、先見をする」
サル・シュくんが自分の馬を呼んで、私を乗せてくれた。サル・シュくんの馬は小柄っ! またがった感覚が違うっ! うわ、足がそこまでつらくないっ! ラクッ! ああそっか、あの足の筋肉痛って、足を広げすぎてたからなんだっ? この馬でも筋肉痛にはなるだろうけど、リョウさんの馬より絶対軽いわ、筋肉痛っ! 良かった!
「降りるまで抱くな」
ガリさんが、私を見て一言。
自分は散々やったくせに!
「大丈夫、孕み日じゃないからっ!」
サル・シュくんも元気よく答えた。
さっきの、それ調べてたんだっ!
「抱くな」
「えー……」
ガリさんが行っちゃった。リョウさんも走らせようとして、サル・シュくんを振り返る。
「追いつくから、行ってて!」
「抱くなよ?」
「早く走らせたら、こいつ折れそうだろ?」
眉を寄せたリョウさんが私を見てサル・シュくんを見て、私を見て、溜め息。
言っても聞かんよな、こいつは……って色が出てるよリョウさんっ!
もっと積極的に止めてほしい……
「夜までに追いつくからっ!」
リョウさんも行っちゃった。
めっちゃ胸揉まれてる私……またクンクンされてる。
「いいにおいすんな、ハル」
「そ……そう……?」
「この時期に知らない花が咲いてる、と思って気づいた」
花? 多分、シャンプーのにおいだろうな。フローラル系だった。
「なぁ? これ、なんか薄いの。すぐ脱げる?」
胸の谷間のシャツをひっぱられた。
もう、あきらめてはいるけど……遠慮のない腕だな、本当に……
「え? 脱げる…………けど……」
「じゃ、脱いで?」
「え?」
「脱いで」
「なんで?」
「脱いでほしいから」
だから、説明になってないって。
「やだって言ったら?」
「破っていい?」
「脱ぎます」
山の中、歩いてる馬の上で全裸とか……
リョウさんって物凄い理性強かったんだなぁ……
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