私は、122才まで生きた。
この古代の地で、生き神扱いされた。
36人子を産んで、子孫はもう七代目。各国に数万人が、散った。
今回以上の人生なんて……ある?
ガリさんの、ル・マちゃんの望みも叶ったよ。
ル・アくんの望みも叶ったよ……
キラ・シの名前は無くなったけど、『キラ・シの子』は何百万人になったよ……
アハハ……
今回は、誰だったかな。
最初の旦那は、誰だったかな……
でも、思い浮かぶのはリョウさんだけ……
ねぇ……リョウさん………………
私、がんばったでしょう?
リョウさんの、最後の子も、凄く生きたのよ? 誰だったかな…………名前……わかんない…………あなたに凄くよく似てたの。
ずっと私のそばにいてくれたのよ?
先に……死んじゃったけど……
私、富士見台の家まで良いもの食べてたし、予防接種も受けてたから、伝染病でも生き残ってしまったの。天然痘らしいので生き残ったから、神様扱いされたわ。
天然痘ワクチンって、私の一つ前の生まれの人は打ってないのよ。天然痘は撲滅された、って言われてたから。でも、研究所には残ってて、それがテロに使われたの。だから、全世界でもう一度、旧型と新型の天然痘ワクチンを打つようになったのね。多分、新型だけだったら、ここで私は死んでたと思う。旧型のも打ってもらえたから、多分助かった。海外旅行にいく前にもいくつか打ってたし、本当、薬づけなのね、私の体。
だから、元気なの。
だから、長生きしたの。
リョウさんの武勇伝をずっと話して聞かせたのよ。
強い戦士になったわ。
私、よくやったでしょう?
もう……いいよね…………
あなたは地面に埋められたと聞いたわ。
キラ・シの『その世』に行ったって……
だから、私も、埋めてもらう。
『「その世」は一つだ。必ずル・マに会える』
ガリさんが、そう言ってたから……
キラ・シみんなで、『その世』で会いましょう。
リョウさん………………愛してた…………ずっと、愛してる………………
「ハルナっ! バイクは危ないから気をつけなさいよっ!」
母さんが久しぶりにバイクについて文句を言った……と思ったら、ベンツに追い駆けられた。ナニナニナニ!
メッチャあおられてるっ! クラクション鳴らされてるっ! 母さんの言うこと聞いて、歩いていけばよかったかもっ!
ああ、いやっ、ちょっと…………前に回り込まれて、ブレーキせざるをえなくなった。危ないなぁっ! って……リムジンじゃないっ! ベンツのリムジンっ! 長(なが)!
「ヒャッ……」
後部座席から大きな人が出てきたっ!
「お前っ、キラ・シ人だな!」
ひげもじゃの…………レスラーかってぐらい……でかい人…………絶対ボディーガードだよっ! なに? ゼロハンでこんなトロトロ走るなとかいいたいの? だって、旬報速度だよ!
え? ナニ? キラ・シ? ナニ? キラ・シの博物館は行ったよ? 私、民俗学好きだから、自分のルーツ知りたいし、私もキラ・シ人だし。キラ・シ研究第一人者のナール・サス教授の本も全部持ってるし…………教授のいる大学に行って研究室に入りたいから猛勉強中だし……
ても、ナニ? 私、こんな人に追い駆けられるいわれ……ない…………
大きな、熊さん…………
サングラス外しても怖い目の、熊さん……!
「ハル? ハルだろう?」
どうみても危ないダブルの黒服の熊さんが、私の名前、呼んだ。
私ハル・ナだから、たしかに親にはそう呼ばれるけど、女の友人でも『ハル・ナ』呼びだよ。
アレ?
「リョウ……さん……?」
なんで名前、知ってるの私。
誰? 私の知り合いにそんな人いないよ?
いない……けど、知ってる…………
山の中で、私に、刀突きつけた……あの、リョウさん……?
「リョウさんっ! えっ! キラ・シのリョウさん?!」
「そうだっ! キラ・シのリョウ・カだっ! 俺も今思い出したっ! バイクで走っているハルの後ろ姿を見て、思い出したのだっ!」
何これっ! 今まで知らなかった記憶が出てきたっ! うわっ、120才まで生きた私すごいっ!
ああ、そうか。
あの時代に死んで、あの世界の未来に、生まれ変わったんだ?
ほんとに?
もう、富士山爆発は、しないの?
あの歴史を繰り返さなくてもいいの?
私はもう、地図を描かなくても、いいの?
「ハルっ! 避けろっ!」
なに?
ココ、富士見台? なんで?
さっきリョウさんが目の前に………………
地震……
また……、富士山が、爆発、する……
またあの森の中。
なんだったんだろう?
あれは、未来、だった?
たしか、あの時期は、2895年12月15日……だった、筈。
推薦受験の寸前だった。
未来、だったよね?
あの世界の地図には『キラ・シ国』が、あった。
太平洋に『羅季(らき)大陸』が、あった。
というか、『太平洋』がなくなってた。
ほとんど地球だった。
この世界の、未来?
この世界が、紀元前だよね? 今から三千年ぐらい経ったら、ああなるの?
キラ・シが、国を持つほどに?
しかも『騎羅史』じゃなかった。『キラ・シ』だった。
あの時の私、『キラ・シ人』だった!
あれは夢? 妄想?
それとも、本当に、この世界の、未来?
どうやってあそこに行ったの?
あの時初めてだったこと?
老衰?
『事故死、病死、他殺』じゃ、なかった、から?
老衰したら、未来に、いけるの?
それに、あれは、リョウさんだった。
たしか、ダンプカーが突っ込んで、来た?
気がついたときにはリョウさんの右手を抱きしめてた。
リョウさんは、あっちに転がってたのに。
『事故死』したから、富士見台に帰って来たんだ?
富士山が噴火したんだ?
もしかして、『未来』で老衰したら、その未来にいけるの?
それとも、『キラ・シは残ったよ』っていう、確認?
「なんか凄い、……これ、花のにおい?」
「花かなー」
獣のにおいと、声。
これ、誰? 子供の声?
二人っ!
これ、もしかして……
「はい!」
左側に、サル・シュくんがかがんで、私に手を上げてた。
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