【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。154 ~私の天使~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

「俺、キラ・シのサル・シュ。お前は?」

 相変わらず、先に名乗るいい子。

 ああああああっっっ! サル・シュくんだっ! サル・シュくんだっ! 死んじゃったサル・シュくんだっ!

 やっと私の頭の中で、サル・シュくんの顔が上書きされたっ! 死に顔がっ消えた!

 やっぱり、白くて綺麗……

「……サル・シュくん…………会えて良かった…………ぁ……」

 良かった……今回は彼なんだ!

 ずっと一緒にいられるんだ?

 今回は大丈夫。もう、覚悟してるから、突然四年も居なくなっても大丈夫! 砂嵐だって避けてみせる!

 頬を撫でてくれた。

 そっとキス、された。

 私も、キス、した。

 なんて綺麗なの……サル・シュくん…………

 私の天使……

「サル・シュくんの子、いっぱいいっぱい産むからね……」

 四年間、ル・アくんを育てた代わりに、ずっと私といてくれるって……言ってくれてた。今回も、そうかな? ランダム性があるから、期待せずにはおくけど……でも、そうだと、ずっと一緒に居られる。

 ギュッ、てしてくれた。

 大好き、サル・シュくん……愛してる…………

「なんだそいつ」

 ル・マちゃんの声……だよね? きっと。

 サル・シュくんが、目をパチクリさせたあと、私の後ろの方を一度、見た。そして、私の腰をつかんで立ち上がる。

 叫びそうになったけど、口を押さえて悲鳴を殺した。

 サル・シュくんの馬に乗せられて、彼が後ろに乗り上げる。

「ル・マっ! 先に降りるっ!」

 やっぱり、もう一人はル・マちゃん? あっちに見つかってたらどうなってたんだろう? でも、このタイミングだと、次に来たのはサル・シュ君だから、やっぱりサル・シュ君の子を生むんだよね。

「はっ? てめぇっ! 人をおろさせといてナニ………………サル・シュっ!」

 これ……多分、サル・シュくん、ル・マちゃんといちゃつこうとしてたんじゃないの?

 サル・シュくんは前回も馬を下りてきてたけど、リョウさんもガリさんも、レイ・カさんも、馬に乗ってたよ。ここで、馬を下りてる必然性がない。

 ガリさんもサル・シュくんも、『あとから行く』って感じだった。いつも日暮れ一歩手前だった。

 崖下りの一団の、先頭は止まってたき火を作り出してるんだ。多分、『今晩寝る場所』の辺りを見て回ってたんだろう。

 危険性がないか。他の部族がいないか。

 いつも凄い崖下るから、そこまで考えたことなかったけど、『危険な動物がいるか?』に関しては、その動物が一晩で近づいてくる範囲を見るから、凄く広範囲なんだろう。

 その、一日の最後の明るい時に、サル・シュくんがル・マちゃんと二人きりになりたかったから、あそこで馬を下りてたんじゃ、ないの? 前回はル・マちゃんいなかったけど。サル・シュくんは気配消して私の隣にいた。

 なんか……いつもよりなだらかなところを降りてくれてる? それとも並足だから? そういえば『前回』もサル・シュくん、トロトロ歩かせてたよね……

 今回は、一度もそっち方面で迫られてない。『前』はあんなに最初から無茶したのに。ル・マちゃんがいたからかな?

 あ……煙が何本も上がってる。キラ・シの人達が木々の間にたき火作ってる。

「ねーっ! 見て見てみて見て見て! 女見つけたっ! オンナ! 俺の女っ!」

 馬から私を下ろして、真っ先にリョウさんに私を見せた。

「リョウ叔父っ! 俺の女っ、オンナ! 森で見つけた! 俺のっ!」

「……こんなところに部族がいたか?」

「俺のっ!」

「……わかった。そいつはお前のオンナだ、サル・シュ。

 で? どこらへんだった?」

「崖っ!」

 山下り中なんだから、ほとんど崖だよ、サル・シュくん。

 リョウさんが大きなため息をついた。

 心中お察し申し上げます。

「あっ! 族長っ! 俺の女見つけたっ! 俺のっ!」

 ガリさんが馬の上から私を見て、軽く手を上げてあっち行った。後ろでリョウさんがガリさんに手を振ってる。あとでな、って感じ。

「サル・シュ、ナニを騒いでいる」

「レイ・カっ! 俺の女っ! 森で女見つけたっ!」

「そんな死に掛けを振り回すな。そこにたき火を作ったから、座ってろ」

 相変わらず私は『死にかけ』なのね……

「サール・シュッ! てめぇっ! なんで俺をまいて下りたっ!」

 なんかジグザグに崖を降りてるとは思ったけど、ル・マちゃんをまいてたの?

「まいたんじゃない。並足できるところを降りてきただけ」

「なんで並足っ!」

「早く下りたら、こいつが死にそうだったから」

 ル・マちゃんが馬から飛び下りざま、サル・シュくんの背中に回し蹴りっ!

 しようとしたのを、やめた。

 サル・シュくんの肩からバッチリ私と目があってる…………あってる、合ってる……

 しまった。これ、獣と目を合わせたら離せないモード勃発してない?

 私が先にそらせば……いいんだよね?

 悩んでる隙に、サル・シュくんがル・マちゃんの方を向いたので、私とは視線が切れた。良かった!

「あーっ、さっきの花のにおいっ!」

「そうそう、こいつのにおいっ!」

「ナニ? これ」

「春菜です」

「ハルナ?」

「しっろいやつ…………っっ!」

 私の頬を触ったル・マちゃんが、ビクッと手を引いた。

 ナニ?

 大体、私はル・マちゃんよりは少し白いけど、サル・シュくんの方が白いよ?

「…………よくそれ、持ってるな、サル・シュ」

「だろ? 駆け足したら崩れそうでさ…………とにかく、座らせてくれる?」

 どういう意味?

「お……おお……おう……どこ?」

「レイ・カがたき火作ったって」

「ああ、あっちだな」

 たき火にも所有権があるんだ?

 サル・シュくんがたき火に座ったら、ル・マちゃんも右隣にしゃがんだ。真正面から私をずっと見てる。足触ってる。

 サナくんが持ってきてくれた栗を、ル・マちゃんが受け取って、私に差し出した。案の定、私が出した手をつかんで、私の爪を凄い見てる。本当にル・マちゃん、マニキュア好きだね。心は男なんじゃないかと何度も思ったけど、こういうところは女の子だよねぇ。

 ショウ・キさんがサル・シュくんの真正面に座って、リョウさんがル・マちゃんの反対側。

「父上っ、ここっここに座って!」

 ル・マちゃんが立ち上がってガリさんを座らせ、その左膝に座った。

「なぁ、父上、ちょっとこれ、触って?」

 ル・マちゃんが、ガリさんの手を私の足に持ってくる。いやいや……ちょっと、やめて。

 ガリさんも、ビクッて手を離した。なんなの一体。私の頭のてっぺんから爪先まで見て、サル・シュくんを見て、私を見る。ガリさんにしては多分、最大級に目がまんまる。

「なっ? なっ?」

 ル・マちゃんが凄いはしゃいでる。

 あとは一緒。先見をして、栗の渋皮を剥いて笑われて、寝た。

 その時はサル・シュくん、降りるまで、エッチなこと何もしなかった。前、あんなに酷かったのに。

 そう言えば、ガリさんの時も、『最初』はのべつまくなしにエロかったけど、『二回目』はそうじゃ、なかった……よ、ね?

 なんでだろ?

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

 山で先見した定番、ガリさんは覇魔流(はまる)軍を『山ざらい』で全滅。羅季(らき)城に入るときに、思い付いた!

  

 

  

 

  

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました