「俺、キラ・シのサル・シュ。お前は?」
相変わらず、先に名乗るいい子。
ああああああっっっ! サル・シュくんだっ! サル・シュくんだっ! 死んじゃったサル・シュくんだっ!
やっと私の頭の中で、サル・シュくんの顔が上書きされたっ! 死に顔がっ消えた!
やっぱり、白くて綺麗……
「……サル・シュくん…………会えて良かった…………ぁ……」
良かった……今回は彼なんだ!
ずっと一緒にいられるんだ?
今回は大丈夫。もう、覚悟してるから、突然四年も居なくなっても大丈夫! 砂嵐だって避けてみせる!
頬を撫でてくれた。
そっとキス、された。
私も、キス、した。
なんて綺麗なの……サル・シュくん…………
私の天使……
「サル・シュくんの子、いっぱいいっぱい産むからね……」
四年間、ル・アくんを育てた代わりに、ずっと私といてくれるって……言ってくれてた。今回も、そうかな? ランダム性があるから、期待せずにはおくけど……でも、そうだと、ずっと一緒に居られる。
ギュッ、てしてくれた。
大好き、サル・シュくん……愛してる…………
「なんだそいつ」
ル・マちゃんの声……だよね? きっと。
サル・シュくんが、目をパチクリさせたあと、私の後ろの方を一度、見た。そして、私の腰をつかんで立ち上がる。
叫びそうになったけど、口を押さえて悲鳴を殺した。
サル・シュくんの馬に乗せられて、彼が後ろに乗り上げる。
「ル・マっ! 先に降りるっ!」
やっぱり、もう一人はル・マちゃん? あっちに見つかってたらどうなってたんだろう? でも、このタイミングだと、次に来たのはサル・シュ君だから、やっぱりサル・シュ君の子を生むんだよね。
「はっ? てめぇっ! 人をおろさせといてナニ………………サル・シュっ!」
これ……多分、サル・シュくん、ル・マちゃんといちゃつこうとしてたんじゃないの?
サル・シュくんは前回も馬を下りてきてたけど、リョウさんもガリさんも、レイ・カさんも、馬に乗ってたよ。ここで、馬を下りてる必然性がない。
ガリさんもサル・シュくんも、『あとから行く』って感じだった。いつも日暮れ一歩手前だった。
崖下りの一団の、先頭は止まってたき火を作り出してるんだ。多分、『今晩寝る場所』の辺りを見て回ってたんだろう。
危険性がないか。他の部族がいないか。
いつも凄い崖下るから、そこまで考えたことなかったけど、『危険な動物がいるか?』に関しては、その動物が一晩で近づいてくる範囲を見るから、凄く広範囲なんだろう。
その、一日の最後の明るい時に、サル・シュくんがル・マちゃんと二人きりになりたかったから、あそこで馬を下りてたんじゃ、ないの? 前回はル・マちゃんいなかったけど。サル・シュくんは気配消して私の隣にいた。
なんか……いつもよりなだらかなところを降りてくれてる? それとも並足だから? そういえば『前回』もサル・シュくん、トロトロ歩かせてたよね……
今回は、一度もそっち方面で迫られてない。『前』はあんなに最初から無茶したのに。ル・マちゃんがいたからかな?
あ……煙が何本も上がってる。キラ・シの人達が木々の間にたき火作ってる。
「ねーっ! 見て見てみて見て見て! 女見つけたっ! オンナ! 俺の女っ!」
馬から私を下ろして、真っ先にリョウさんに私を見せた。
「リョウ叔父っ! 俺の女っ、オンナ! 森で見つけた! 俺のっ!」
「……こんなところに部族がいたか?」
「俺のっ!」
「……わかった。そいつはお前のオンナだ、サル・シュ。
で? どこらへんだった?」
「崖っ!」
山下り中なんだから、ほとんど崖だよ、サル・シュくん。
リョウさんが大きなため息をついた。
心中お察し申し上げます。
「あっ! 族長っ! 俺の女見つけたっ! 俺のっ!」
ガリさんが馬の上から私を見て、軽く手を上げてあっち行った。後ろでリョウさんがガリさんに手を振ってる。あとでな、って感じ。
「サル・シュ、ナニを騒いでいる」
「レイ・カっ! 俺の女っ! 森で女見つけたっ!」
「そんな死に掛けを振り回すな。そこにたき火を作ったから、座ってろ」
相変わらず私は『死にかけ』なのね……
「サール・シュッ! てめぇっ! なんで俺をまいて下りたっ!」
なんかジグザグに崖を降りてるとは思ったけど、ル・マちゃんをまいてたの?
「まいたんじゃない。並足できるところを降りてきただけ」
「なんで並足っ!」
「早く下りたら、こいつが死にそうだったから」
ル・マちゃんが馬から飛び下りざま、サル・シュくんの背中に回し蹴りっ!
しようとしたのを、やめた。
サル・シュくんの肩からバッチリ私と目があってる…………あってる、合ってる……
しまった。これ、獣と目を合わせたら離せないモード勃発してない?
私が先にそらせば……いいんだよね?
悩んでる隙に、サル・シュくんがル・マちゃんの方を向いたので、私とは視線が切れた。良かった!
「あーっ、さっきの花のにおいっ!」
「そうそう、こいつのにおいっ!」
「ナニ? これ」
「春菜です」
「ハルナ?」
「しっろいやつ…………っっ!」
私の頬を触ったル・マちゃんが、ビクッと手を引いた。
ナニ?
大体、私はル・マちゃんよりは少し白いけど、サル・シュくんの方が白いよ?
「…………よくそれ、持ってるな、サル・シュ」
「だろ? 駆け足したら崩れそうでさ…………とにかく、座らせてくれる?」
どういう意味?
「お……おお……おう……どこ?」
「レイ・カがたき火作ったって」
「ああ、あっちだな」
たき火にも所有権があるんだ?
サル・シュくんがたき火に座ったら、ル・マちゃんも右隣にしゃがんだ。真正面から私をずっと見てる。足触ってる。
サナくんが持ってきてくれた栗を、ル・マちゃんが受け取って、私に差し出した。案の定、私が出した手をつかんで、私の爪を凄い見てる。本当にル・マちゃん、マニキュア好きだね。心は男なんじゃないかと何度も思ったけど、こういうところは女の子だよねぇ。
ショウ・キさんがサル・シュくんの真正面に座って、リョウさんがル・マちゃんの反対側。
「父上っ、ここっここに座って!」
ル・マちゃんが立ち上がってガリさんを座らせ、その左膝に座った。
「なぁ、父上、ちょっとこれ、触って?」
ル・マちゃんが、ガリさんの手を私の足に持ってくる。いやいや……ちょっと、やめて。
ガリさんも、ビクッて手を離した。なんなの一体。私の頭のてっぺんから爪先まで見て、サル・シュくんを見て、私を見る。ガリさんにしては多分、最大級に目がまんまる。
「なっ? なっ?」
ル・マちゃんが凄いはしゃいでる。
あとは一緒。先見をして、栗の渋皮を剥いて笑われて、寝た。
その時はサル・シュくん、降りるまで、エッチなこと何もしなかった。前、あんなに酷かったのに。
そう言えば、ガリさんの時も、『最初』はのべつまくなしにエロかったけど、『二回目』はそうじゃ、なかった……よ、ね?
なんでだろ?
山で先見した定番、ガリさんは覇魔流(はまる)軍を『山ざらい』で全滅。羅季(らき)城に入るときに、思い付いた!
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