【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。20 ~血吐いてた!~

 

 

 

 

  

 

  

 

 えっ? 誰かいたのっ! で、どうなってるの? 窓、入れないよね? あ、また指笛。

「サル・シュが外に回ってる。落としていいぞ」

「どうされましたかっ!」

 マキメイさんが、灯を持ってきてくれた。

 ル・マちゃんが、明かり取りから刀を抜いたら、真っ赤! 手も、白いドレスも真っ赤!

 城全体がまだ血なまぐさいから、錯覚かと思ってたら、この部屋の血だった……下でドサッって音がした。リョウさんが駆け出ていく。ル・マちゃんも後を追うから……私も、追った。四階がキツイ!

「これ、どこの戦士だろ」

 サル・シュくんがリョウさんの足元に、鎧の人を蹴り転がした。

 え? 胸に一突きの傷……って、ル・マちゃんが貫いたの? というか、四階まで壁を上がってきたの?

「ル・マちゃんは、ナニをしたの?」

「なんか壁の外来てる気がしたから、あの穴の前で待ってた。どこに刺さってるかわからないから、体重掛けて、引っ掛けてたんだ。……刀が曲がった……」

 あんなにスピスピ寝てたのに?

 キラ・シやっぱり怖い。

「あの上の穴も、キラ・シを立たせてあるから、入っては来られなかっただろうが、ル・マの手柄だな。よくやった」

 リョウさんに頭撫でられて、ル・マちゃんにっこにこ。

「ガリ達が走り回っている中を、ここまで忍んできたのか? それは、凄すぎないか?」

「ガリさん走り回ってるの?」

「刀を持ってる男を殺しまくってる。かなり数がいるらしい」

 ひぇえ……

「ハルとル・マは寝ろ」

 ル・マちゃん、ナニカ言いたげだけど、黙ってお城に入った。

 俺もやる、って言わなくなったね。ちょっとおとなしくなったし。

 サル・シュくんのアレが効いてるのかな? 効いてるよね。

「ル・マ様。お風呂へどうぞ」

「えー……また入るのかよー」

「そんなに汚れてらっしゃるのに、当然です!」

 そうだ、ル・マちゃん、血まみれだった。

「お怪我は無いのですよね?」

「うん、怪我はしてない」

 どうせなので、付き合って私も入った。マキメイさんがニコニコとそこにいる。

「キラ・シのかた、まだ二十人ほどしかお入りではないのですけど、あと何人ぐらいいらっしゃるのでしょう?」

 200人ぐらいだけど、これって言っていいのかな? リョウさんが『こちらの人数がばれる』って、口封じしてたけど……って、ル・マちゃんを見たら、口をムッと閉じてたから言わないことにした。

「あっちこっちにいるから、私も全体の人数はわからないんだ」

「早く全員をお綺麗にしたいですねぇ。腕がなりますねぇ……」

 楽しそうだ。

 あの汚いのが流れ出るのは、確かに爽快感がある。

 みんな綺麗になってくれると、いいなぁ……

  

 

  

 

  

 

 朝。

 着付けに来てくれた女官さんに、またドレスアップしてもらった。久々の綺麗なドレス!

 あの服、着っぱなしだったからどろどろだったんだ。

「ル・マちゃんはどうする?」

「どうするってナニが?」

「これ着る? サル・シュくんのあの短いの着る?」

 このお城から出て行ったとき、ル・マちゃんはすぐにスカートの裾をちぎってしまっていた。

「フク着たかー?」

 サル・シュくんが覗きに来た。ドアのスキマから首だけ出して、かわいい。

「なんで入って来ないの?」

「女がフク着てるときは入るな、ってリョウ叔父に言われた」

 マキメイさんがナニカ言ってくれたんだ?

 でも、そこに立ってたら一緒じゃない? ドア開いたままだし。と思ったら、サル・シュくんが消えた。マキメイさんが入って来て、ドア閉めた。

「おはようございます、ハルナ様、ル・マ様。

 今日のお召し物はどうなさいます? 以前ハルナ様に教えていただきました、黒い一重もお作りいたしました」

 あの白い下着の黒い版!

「えっ? あのあとすぐ出て行って、昨日帰って来たのに!」

「あのあとすぐに町の仕立屋に発注しておりましたので、出来上がっておりました。とりあえず、100枚お作り致しましたが、あと追加が何枚必要でしょうか?」

 何人? キラ・シの全人数?

『残る奴は裏切る奴だ。生かせばこちらの人数がばれる』

 それって内緒だよね? マキメイさんはもちろん、そんなこと関係ないだろうけど、私の口から言ったら駄目だよね?

「それは、リョウさんに聞いてくれるかな」

「はい、かしこまりました。では、ハルナ様。今日はどれにされます?」

 赤と青と金色!

「もうちょっと地味なのがいいなぁ……」

「やはりそうですか。ではこちらは?」

 グレーと茶色!

「これがいい!」

 裾も、ちょっと短い?

「こちらは、あのお召し物よりは格が下がるのでどうかと思ったのですが、最初にお召しになっていたのがこの色合いでしたので、お好きかと思いました」

 本当にさすがだな、マキメイさん。本当、女官『長』だよ。

「ああ、あの学生服……そう言えばあの服、どうなったの?」

「洗って乾かしてございますよ」

 出してくれたのは、やっぱり、縮んでよれよれになった制服。これは、もう、着られるものじゃないなぁ……まぁ、この世界では誰も気にしないだろうけど。

 縮むって、ずっと縮むのかな? もう縮まないなら、これ、もう一度濡らしてアイロン当てたら綺麗になるんじゃない?

 アイロンは、金属のお鍋に炭でも入れたらできるよね? まぁ別に、急いで着たいわけでも無いからあとでいいか。

 この乱暴な世界で、あの『ブレザー』って動きにくい。

 まぁ、このお姫様ドレスも歩きにくいけど。なんというか『現代』のものを着る気にならない。

「ル・マ様はどうなさいます?」

「俺は、これでいい」

 赤と青と金のドレス!

 ル・マちゃんには似合ってた! やっぱり、元の元気さが違うから? こんなの、よく着こなせるなぁ……

 何度もこけそうになりながらも、ル・マちゃんは根気よく裾をつまんで歩いてた。

 大広間に、みんないる。

 そこにル・マちゃんを連れ出した。

 漫画でよくある、驚いたときのお約束みたいに、サル・シュくんが、手入れしていた刀、取り落とした。今日も髪も結ったし、髪飾りもつけたしね!

 前も似たようなドレスだったけど、こんな派手ではなかったから、めずらしいみたい。さらにかわいくなったル・マちゃん!

「動きにくいんだぞ、こ…………」

 つかつか歩いてきたサル・シュくんが、両手でスカートめくりっ!

「ル・マ、お前、足も細ぇなぁっ! こんなんで俺のコ産めるか? っぐぁっ!」

「お前のコは産まねぇってんだろっ!」

 スカートが翻ったのと同じ高さまでル・マちゃんの足が上がってて、サル・シュくんが吹っ飛んでた。

 血ィ吐いてた! 血ィ吐いてた!

「サル・シュくん大丈夫? 歯が折れたんじゃない?」

「大丈夫大丈夫。手がぶつかって鼻血出た……だ…………け……」

 ガリさん登場。ひゃっ!

 まだ、ル・マちゃんのスカート翻ってるのに!

「……あ? 父上っ! おはようっ!」

 ル・マちゃんがガリさんに万歳。

 サル・シュくんが真っ青になった。駄目なことをした自覚はあるらしい。

 娘のスカートが不自然に翻ってて、いつも口説いてた男の子が鼻血出してたら、そりゃ父親としてはヤバイよね?

 やっぱりル・マちゃんにタッチするのは、ガリさんがいないところでしかしないんだ?

「ガリ……」

 まったく動けないサル・シュくんの前にリョウさんが立った。

「フロ入れ。お前、くさい」

  

 

  

 

  

 

 

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