【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。216 ~バケットホイールエクスカベータ~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

 なんかやってるんだ?

「サル・シュくんは知らない? ショウ・キさんは? レイ・カさんは?」

「そこら辺は知らないなぁ。でも、父上の周りにいるんじゃないのか? 俺の周りにこれだけいるんだから! そっちの人脈は全然知らない。こっちは紅渦(こうか)軍だけだな」

「リョウさんのまわりには全然いないらしいよ?」

「キラ・シに見捨てられたんじゃないの?」

「リョウさんにそれ言っていい?」

「言わないでください。ごめんなさい」

 謝るの早いなーっ! こんな性格じゃなかったよね? ガリさんをおしゃべりにしたみたいな俺サマだった。かなりさわやかだったけど。夕羅(せきら)くんの方はどろどろしてたし。

「ああ、あれだ。リョウ・カは、俺が殺してないから。父上は俺が殺したから俺のそばに転生したんだろ」

「え? ル・アくんがキラ・シ全部やっつけたんじゃないの?」

「そんなことしてたら父上にたどり着けねぇよ。

 リョウ・カは紅渦軍の弓兵でやったから、『殺した奴のそばで転生する』なら、俺とか父上のそばにはいねぇよな」

「ああ……それが、リョウ・カさんが一人で軍人やってる理由かもね」

「それでいうと、サル・シュが俺の近くにいるばずだけどなぁ……父上はいるんだから」

「それでいうと僕は自然死だから、君たちのそばに転生するいわれがないよ?」

 ナール・サス教授が自分を指さして笑う。

「あんたは、一人で目立ってたところに俺たちが集まっただけだろ。『近くに転生』はしてねぇよ」

「……そういうことなら、そうだね」

「私も、王様の十年後に死んだから、『別扱い』だったのね……」

「ハルナくん、いつまで生きてたの?」

「122」

「……現代でも凄いよ!」

「それで言うと、沙射に殺された俺だって、この大学で出合ったんだから『近くに転生』はしてねぇもんな。

 元々が『近くに転生』じゃなく…………って、史留暉(しるき)と磨牙鬼は兄弟だし、京守と威衣牙も幼なじみだよな。あ、侍衣牙(じいが)がいないな……あいつは俺が殺したのに」

 王様は以前通りだけど、ル・アくんも軽いなー。

 まぁ、リョウさんも、あれだけサル・シュくん化してたし、『部族を背負ってない』から、気楽だよね。これが元の性格かな?

 だってキラ・シって『殺した奴が勝ち』だけが価値観だったから、『普通の生活』のための性格なんて、出なかったよね。あの時、戦国時代だったもの。

 織田信長が現代にいて、あのままの性格かっていうと違うと思うし。

「リョウ・カでかいっ! 前よりでかいだろ、これっ!」

 ル・アくんが、フェイスブック検索してスマホ投げそうになってた。

「コレに喧嘩売るとか、バケットホイールエクスカベータに自転車で突っ込むようなもん! 無理無理! どんだけ勲章とってんだよ、コイツ。

 俺でも、名前だけは知ってたぜっ! 二回もこの国に核爆弾持ち込まれるのを防いだ救国の英雄! 俺の彼女の母親連中が、こいつのカレンダー、10年ぐらい前の、何枚も後生大事に家に掛けてた! そのうちの息子がガキの頃からマッチョ目指してて、外人部隊に入って、こないだこいつの会社に引き抜かれたって喜んでた!」

 本当にカレンダー、需要あったんだ? 冗談かと思ってた。

「まぁ、だから、……きっと、父上も、知らないところでそれだけのことはやってる筈なんだよな……なんで沙射を引き取ったんだろう。独り身の癖に」

「キミもやってるから、の、確信ね?」

 ル・アくんが口を手で押さえてあっち向いた。ナニやってるんだろう、本当に。

「でもガリさんは、前でも沙射ちゃんを養育はしてたから。子供好きなんじゃないの?」

「子供好き……すごい父上に似合わない言葉……」

「子供好きだよー、ガリさん。一年で3000人産ませたもん。ガリさんの子供だけで、4万人!」

「それは意味が違う」

 まぁ、半数は一年以内に死んだし、成人したのは一割も居なかったけど……それでも第2世代が三千人だから……鼠算で凄いことになるよね。

 あ、すっっっごい廊下を走ってくる足音。床が揺れてる……よね?

「ハルっ! ル・アがいたってっ? ガリも?」

 だよね。ドア開けたとき、部屋揺れたよリョウさん。

「ル・アっ!」

「リョウ・カっ!」

 すっごい抱き合ってる。両方泣いてる。

 感慨深いよね。ル・アくん、凄いことになってたもんね……

「俺を弓兵なんかで殺しやがってっ! お前の手で殺せっ!」

「……京守の村まで来てくれたの、あんただろ?」

「…………そうだ」

「あの時の銀、父上を殺すのに、すげぇ役立った。ありがとう」

「………………そ……それは……良かった……」

「あー、やっと礼が言えた。すっとしたー」

 ナニ? そのお礼……リョウさん、ル・アくんの生死確認だけじゃなく、なんかしてたんだ?

 二人とも、しばらく震えてたけど、笑いだして、バシバシ背中叩いて、細いル・アくんが吹っ飛ばされそうになってた。バケットホイールエクスカベータは容赦ないよね。私もしばらく立てなかった……48のオジサン、元気だねっオジサン!

「で、ガリは? ガリはいないのか?」

「あの人、旅行中」

「どこへ?」

「北半球って言ってた」

 ガリさんったら……

 地球、って言われるよりちょっとマシなだけ。

 はーっ……って、リョウさん、大きな溜め息ついて膝に手をついた。

「すぐ会えるよ、リョウさん……リョウさん、端末ブルッてるよ」

 リョウさんが涙を拭いながら端末を見たら、ヒョッ……て、息を吸い込んだ。私に差し出す。見ていいの? って、私もヒョッ……ってなった。

『ガリ・ア発信。世界放送で馬鹿をするな。こっちにはレイ・カ、ショウ・キ、ル・マ、サガ・キ、サギがいる。他のキラ・シも200人ほどは、居所が多分わかる。だが、お前の結婚式には行かん! 俺は帰れるが、こいつらはリトアニアまで来たら祝ってやる、だと』

「……やはり顔写真がない方の有名人だったか…………何者だ! どこの組織だっ! これは国家機密以上のセキュリティの端末だぞっ! どうやってハッキングした!」

「それは、とても危ない人達ってこと?」

「我が国に敵対していれば、危ないな」

 そんなレベル? まぁ、リョウさんがこうなんだから、ガリさんがそれ以上でも、驚かないよ。ううん、驚いたけど。もうゼルブがいるんだから、怖いもの無しだよね。

「ハル…………新婚旅行にリトアニアを入れていいか?」

 

 

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