【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。22 ~完全なやつあたりです!~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

「ハルー……」

 揺れてる……揺れてる揺れてる…………リョウさんの馬に乗せられて山走ってる。お尻痛いなぁ…………

「ハルゥ……」

 ル・マちゃんの声?

 白い寝間着着たル・マちゃんが私を揺さぶってた。今の夢? どっちが夢?

「ナニ? どうしたのル・マちゃん。おなか痛い?」

 ここに来て二回目の生理。昨日からル・マちゃん、青い顔して寝込んでた。ベッドの大きな温石はまだ温かい。

 私も生理なんだけどね。ちょうどル・マちゃんと同じ周期みたい。

 私の左手首を持ってル・マちゃんが歩きだした。

「どこいくの?」

 返事が無い。

 ねぼけてる? でも、振り放せないし、一人でほっとけないし……一緒に階段を下りてく。

 なんか、みんな、まだ起きてるみたい。何時ごろなんだろう。

 ふぁ……眠い…………

 ル・マちゃんがどこかのドアをノックも無く開けた。あくびしながら私も入ったら……

「あっんっっっっ! ぁっあぁっ……サル・シュ様っ! サル・シュ様ぁっ!」

 なんですって?

 私、目を開けない方がいいんじゃない、これ?

 でも、ル・マちゃんが動くから、開けないところびそうで怖い。ラキ城の床が、イタリアの石畳みたいにボコボコしてて、ぼーっと歩いてるとひっかかってこけるんだよね。

 覚悟して開けた、バチッとサル・シュくんと目があった。恥ずかしげは微塵にも無い。

 その視線が私からずれる。

「ル・マ? ナニしてる?」

 また私を見る。

 知らない知らない。私は連れて来られただけ!

 掴まれた手を振ってみたけど、全然離れないっ!

 見たくなかったけどはっきり見えた。

 サル・シュくんのベッドに三人の女の人がいたっ! 今、あえいでるのがマキメイさんだっ! うわっ…………

「サル・シュ様っ? どうしてっ?」

 ル・マちゃんが、サル・シュくんの足首を抱いてベッドで丸くなった。それは、凄い邪魔よ、ル・マちゃん。

「ハル」

「はいっ!」

「今はイヤだ。頼んでいいか?」

 さすがのサル・シュくんも、今はル・マちゃん優先にできないんだ?

 マキメイさんに引き寄せられるまま、めっちゃキスしてる。彼女の腰を抱いたまま、ベッドに座って、ル・マちゃんの指をこじ開けた。

 マキメイさんが勝手に動いてる。いやもう…………本当……………………ごめんなさい。

「頼むぞ」

「やってはみる」

 ル・マちゃんをどうにか後ろから抱いてずるずる引きずる。もう、完全に目が覚めたよ。

 最近、馬の乗り方教えてもらって、全身の筋肉痛が納まった後だから、ちょっとだけ筋力ついた。先月の私なら、ル・マちゃん引きずれなかっただろうな。

 はぁ……気にはなってたけど、知りたくなかった。

 マキメイさん、凄かったな。全然私達に気付かなかったっぽい。明日も、知らんぷりしといたほうがいいよね。

 サル・シュくんの部屋から出たら、ドアの前に座り込んじゃったル・マちゃん。そりゃ眠いよね。寝ぼけてるんだもんね。でも、ここで座っちゃ駄目。お尻冷えてもっと痛くなる。

 落ち着いたら、辺り中の部屋から『シテる』声がしてた。『みんな起きてる』と思ったのはこれだったんだ?

 私もはっきり目覚めたら、一声聞いて分かったんだけどな……

 ル・マちゃんがようやく立ち上がってくれて、階段を上がっていく。そうそう、そのまま部屋帰って寝ようね……って、そこ、私達の部屋じゃないよ!

 ドア開けかけるからどうにか引っ張る。ドアが閉まる。引っ張り続けられないから力抜けたらまたドア開ける。引っ張る。ドアが閉まる。

 もうこれ迷惑だからル・マちゃん。

 私もサル・シュくんみたいにル・マちゃんをよいせっ、って持ち上げて歩きたい。どんだけ筋肉ついたらできるだろう。

 ああ…………負けた………………

 ガリさんの部屋だった!!!

 大きなベッドに、女の人がたくさんいるっ! いや、ちょっと、許して、ル・マちゃんっ! ル・マちゃんが居るのはいいけど、私は出たいっ! 手を放して!

 ガリさんは、ル・マちゃんを見て、私を見て、続けた。

 続けたっ!

 女の人も私達に気付いたけど、気にしてないの凄い。

 ル・マちゃんが、サル・シュくんにしたみたいに、ガリさんの足首抱いて、コロンと転がった。

 さすがにガリさんも止まって、足を見て、ル・マちゃんを見て、私を見て、ル・マちゃんが握ってる私の手を見る。

 そのまま続けた。

 続けたっ!

 なんて父親だっ!

「ル・マちゃんっ! 手っ放してっ! 手!」

「うるさい」

 静かに、ガリさんに怒られた。

「っっ!」

 口を押さえてベッドの下に隠れる。

 もー…………ホントかんべんしてー……

 床、メッチャ冷えるっ!

 もう、諦めて、私もベッドに上がらせてもらった。広いし。ル・マちゃん抱きしめてぬくぬくしたら、おなかの痛み薄くなった。

 ガリさんずっと元気だった。

 もうどうでもいいや……

 寝た。

  

 

  

 

  

 

「小便っ!」

 ル・マちゃんの声で目覚めたら、まだガリさんやってた。寝ずにしてたの? 朝からしてるの?

 というか……ル・マちゃんがっ! 私をおいて駆けだしていった。

 ガリさんが、開いたドアを見て、私を見る。掌を上に向けて、ちょいちょいって自分に向けて振った。それ、手招きだよね?

 遠慮します。

 私は両手を広げて『キラ・シ礼』をしながら、後ろ歩きでドアにたどり着き、ドアを閉めて部屋に走った。

「おーっ、ハル! 昨日」

 多分、私達の部屋を見て降りてきたんだろうサル・シュくんに、走ったまま、おなかに頭突きした。

「ごっ……」

 他の人相手なら逃げたんだろうけど、私からそんなことされると思わなかったみたい。

 彼はまったく逃げもよけもしなかった。

 自分が壁にぶつかって、私がはね飛ばされたのを、抱き留めてもくれた。

 すごい固いおなか!

 しかも、おなか押さえながら咳き込んでるのに、私も抱きしめてくれてるとか、器用だな、ほんとに。

 サル・シュくんがおなか痛がってくれたから、私のおなかはちょっとマシになった気がした。

「ごめんなさいサル・シュくん」

 完全なやつあたりです!

「サル・シュがハルにやられた!」

 後ろで声! 誰?

 キラ・シの人達が階段に出てきてた。今の、いつから見てたっ?

「ハルすげぇっ! サル・シュに食らわしたぞっ!」

「ハル! よくやったっ!」

 なぜ私が褒められる?

「今日から、ハルが部族四位だ!」

 えええええええええっっっ!

 みんな、ゲラゲラ笑ってるから冗談だとは思うけど、『頭突きのハル』って言われた……そんな、リングネームみたいなのいらない……

「ハルが四位で、俺が五位で、サル・シュが六位だな」

「えっ! どさくさにル・マまで俺を抜くなよ!」

 戻ってきたル・マちゃんが、私に抱きついてサル・シュくんにイーッてした。

「ハルが四位で、俺が五位で、ル・マが六位、は許してやる」

 なぜに?

 まぁ、それだと、順位変わってないからね。ル・マちゃんより下になる気はないよね。たしかに。

 私もトイレいって、部屋に戻る。

「で、なんでハルは俺を殴ったの?」

 着替えるから閉めて、って言ってるのに、サル・シュくんが、開いたドアの外に居すわってる。ル・マちゃんは気にせず着替えてた。

 マキメイさんが来たら、サル・シュくんはドアを閉じてくれたけど、「なー、ハルー、なんでーっ!」って、ドアの向こうで駄々こねた子供みたいに怒鳴ってる。

 サル・シュくんのこの、『俺の女』に甘いの、全方位なんだな。マキメイさんとかもそうだから、彼女の言うことも聞くんだ。

「あのあと、ル・マちゃん、ガリさんの部屋に行ったんだよ!! 私も一晩、そこで寝たの! サル・シュくんのせいでしょ!」

 凄い言いがかり。

 というか、あんなの見てたから、ル・マちゃんは結果的に『知ってる』んだ? 昨日は本当にまいった。

「族長の見られて良かったじゃねぇかよっ!」

 外に出て、もう一度おなかに頭突きした。

  

 

  

 

 

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