お城の世話をする人は女官の筈!
走っていこうとしたサル・シュくんまで止まって振り返った。だよねっ! 女の人大事だよね!
「私が男か女かわからなかったんだから、顔とか姿で男女の見分けつかないんでしょ? 全員殺したら、女の人もたくさん殺すことになるよっ!」
サル・シュくんはこんなに綺麗でも男なんだから、『綺麗だから女』とも言えないし、二〇〇人に一人しか女の人いないんだから『どういうのが女の人』なのか、全員わかってないよね? 私だって、現代で男に見間違えられること絶対ないのに、初めて会ったとき、リョウさん、男扱いで私を殺しても平気だったんだ。
サル・シュくんが、遠目でもわかるほど青ざめた。
「私が地面に足をつくだけでもあんなだったんだから、他部族でも女の人を殺したら罰則があるよね? というか、他部族から女の人をさらって『キラ・シの女』にするんだから、全部の女の人にあの扱いするんだよね? 女の人の見分けがつかないのに、兵士と召し使いと女の人を見分けるのは、無理だよね?」
サル・シュくんが、泣きそうな顔でリョウさんと私を見てる。
「お城の中は女の人が大半だから、向かって来ない人は殺しちゃ駄目だよっ! 男の人でも、戦わない人がいるんだから!」
「……とりあえず、向かって来ない奴は全員ここに連れてくる。ル・マ、お前はここにいろ」
「またかよっ! 俺、部族五位だぞっ! 働かせろよっ!」
ル・マちゃんそんな強いんだ? たしか、サル・シュくんが部族四位って言ってたよね? こんな若いのに、というかまだ子供なのにそんな強いんだ? これは、彼らが強いの? 他の人が怠けてるの?
「開けたドア……蓋を閉めるとき、蓋の下に石を嵌めていくといいよ。簡単に開かないから、中に潜んでたら出て来られないし、確認した目印になるし」
「石を嵌める?」
「蓋を開かなくするんだよ。石をカマせて」
サル・シュくんが指を立てたのを見て、小さい子が外から石を拾ってきた。凄い連係だな。
「ドアの下に石を置いて、外から蹴るの」
うわ、凄い。馬が石蹴った! そんな言うこと聞くものなのっ?
「それでそのドア……蓋、開かないでしょ?」
「ホントだ」
サル・シュくんが馬から下りて、蹴り込んだ石を簪で抉り取ってドアを開ける。その簪、使い勝手あるねー。簪抜いても髪が落ちないんだから、それは武器とかそんな用途のために差してるのかな? 髪がポケットがわり? 女の人の暗殺者、とか、漫画でよく、簪で殺してる。ああいうのかな。
「これで、部屋に隠れてても挟み打ちされないよ! 上の方から『玄関に行け』って言えばみんなここまで来るし、途中の部屋に隠れることもできないから」
「『ゲンカンに行け?』 ここが『ゲンカン』なのか?」
「そう。ここが玄関」
「ハルはこの家に来たことがあるのか?」
「ここには無いけど……お城はそういう作りなんだよ。私も、この『まっすぐな家』に住んでたから。もっともっと小さかったけど」
ヒューッ、てサル・シュくんが口笛を吹いた。
「わかった! ありがと、ハル!」
サル・シュくんが馬で走って行ったら、ル・マちゃんがぽくぽく近づいて来て、頭撫でてくれた。ナニ?
「ハルは自分で動けるし、そうやって考える頭があるから、逃げたいのかと思ってた」
……に……逃げたい、ですよ? まだ。でも、この世界がどういうのかわからないから、逃げる先が無いだけで……
リョウさんがぎゅーーーーーーって、徐々に力強くして抱きしめてくる。いつもガツッて抱いてくるのに。
「死なないように、考えてくれてるんだな」
「……あなたたちが死んだら、私も死んじゃうし…………さっき、怖かったし……凄くっ!」
また、頭撫でられた。今度はリョウさん?
「ハルは俺が守る」
リョウさんが…………ひあっ! なにこの照れくさいのっ! 胸がキュンッ、てしたわ!
現代では絶対に聞けない言葉だわ!
でも、実感は、もう、してる。
リョウさんいなかったら私、最初にまずあの斜面で飢え死にか事故死かしてただろうし、馬から落ちて死んでただろうし……さっき兵士が出てきたときに死んでただろうし………………まぁ、サル・シュくんも、ル・マちゃんも助けてくれてるけど………
あ、廊下から五人の人が歩いてきた。つま先しか見えないロングドレス。服装は、中華系っぽい。髪も、うなじから上に全部結い上げて簪差してる。みんな同じ赤茶色の服だから、女官さんかな? みんな黒髪で、でも白人の肌で顔だ。キラ・シは凄く日本人というか、中国人みたいな顔してるのに。ああそうか! だから、なんか、怖さがちょっと少なかったんだ。
私が日本人だから『肌が黄色い』ってちょっとわからないんだけど、この女の人達に比べたら私、黄色いし、リョウさんたちも黄色いわ。サル・シュくんとル・マちゃんとガリさんが白かったから、あまり気にならなかった。彼らは『日本人の白さ』っぽい白さなんだ。この女官さん達は、白人の白さだ。
そっか……人種が違うんだ?
私が黄色人種じゃなかったら、あそこで即効殺されてた可能性もあったんだろうな……やっぱりここ、私の夢だよ。うん、そうだよ。
あ……キラ・シの全員が戦闘態勢になっちゃった。
「この人達戦えないからっ! 刀下ろしてっ! 怖がらせないで!」
あなたたちが刀持ったら凄い怖いんだからっ!
「全員女の人だよ? どうするの、リョウさん」
「女! 全員か? 五人もっ!」
「…………女の人、数十人いると思うよ」
「数十人って? 女が?」
「こんなに大きなお城だもの。それぐらいいるよ」
ぞくぞくとたくさん人が来た。そろそろホールが一杯。身動きは勿論できる。朝ラッシュ程ではないけれど、キラ・シは全員馬に乗ってるから、間合いが広いし、馬がガツガツしたら蹴られるぐらいにはなってる。
「ここにいてもらっても大変だし、どこか、部屋に入ってもらおうよ……その人以外みんな女の人だよ」
私が指さしたら、男の人はキラ・シの大きな子に引っ張られて壁に押しつけられた。
「この人達、女の人には無茶しないから、それは安心してね」
女官さん達に言ってみたら、ちょっと笑顔になった。良かった。通じてる。
「なぜこれが女だとわかる?」
「女の人の服着てるし、顔を見ればわかるよ」
「顔?」
ル・マちゃんとリョウさんが、二人してさっきの男の人とこの女の人の群れを何度も見てる。でも、サル・シュくんが男でル・マちゃんが女なんだから、顔つきではそりゃわかんないんだろうな。ガリさんは髭がないから、髭のあるないでもわからないだろうし…………地味に面倒な問題だな。
「見分け方はあとで教えてあげるから、とにかく部屋に入ってもらおう。ここで立ってて貰うと疲れるだけだから。どこか部屋探してきて。ここから一番近い部屋」
「ヘヤってなんだ?」
あー、そこからかー……
そうだよね、竪穴式住居、中身区切られてないから『家イコール部屋』なんだよね。
「壁と床と天井があるところは全部『部屋』。部屋にも種類があって、こういう広いところが大広間。たくさんの人が集まる所。あの細いところが廊下、人が通るための、家の中の道ね。
キラ・シの家ぐらいの広さで、壁で囲まれてるところが部屋」
「ハル、やっぱりキラ・シの村にいたことがあるのか?」
「無いよ」
「それでなぜ、キラ・シの家の広さがわかる?」
「さっき、二人ぐらいで手を広げた大きさ、って言ってたじゃない? それに、竪穴式住居の遺跡には行ったことがあるから。四人で囲炉裏囲んだらちょうどいいぐらいじゃない?」
実際には、多人数で住む竪穴式住居はもっと大きいけど、なんか、キラ・シのは小さそうに感じた。
私、博物館好きなんだ。近所に民俗学博物館があって、子供の頃よく行ったから。縄文時代の巨大ジオラマとか、張りついて見てた。
「これがヘヤか?」
玄関ドアを入ってすぐ右側のドアは廊下。その廊下の壁に多分、槍を立てかけてたんだろう、フックみたいなのがずらっとついてる。大広間を通らずに大広間の横から出られるようになってるんだろうな。さっきみたいに、大広間に敵を閉じ込めて挟み打ちにするための仕掛け。
普通はこのフロアの敵、全滅できたよね。相手がキラ・シじゃなかったら。ホントに、『相手が悪かった』の代表例だと思う。
廊下に入ってすぐ左のドアをル・マちゃんが指さしてる。リョウさんがそこまで行ってくれたからドアの中が見えた。
小さなテーブルと椅子が幾つか、壁に武器フックがずらり。陶器っぽいごつごつしたコップ。木がささくれ立ってそうなテーブルに、皿もなく直接、魚の干物置かれてる。食生活もそんな変わってるわけじゃなさそう。衛生状態も、こんなもんだよね。現代日本が潔癖症過ぎ。
「そうそう、多分、衛兵詰め所だね。ここは他にドアがないでしょ? これは行き止まりの部屋なんだ。ここにあの女の人達入ってもらおう。このドアにだけ見張り立てたらいいから。この玄関より狭いから温かくていい。多分、あっち側の廊下にも同じような部屋があるだろうから、そっちには男の人に入ってもらおう」
「なぜあっちにもあるとわかる?」
ル・マちゃんが走って行って、ホントにあるーっ! と手を上げてる。
「ドアが左右対称についてて、真ん中に大扉だから、部屋とかも左右対称に作られてる、筈」
「サユウタイショウ?」
「右と左が同じ形、ってこと」
「右と左が同じ形? なぜ同じ形だ?」
「人間がそういうふうに作ったものだから」
そっか、『自然』には『対称』なんてものは無いよね。たしかに。
「だが、武器がある場所に、敵の部族の者を入れるわけにはいかん」
そっかー……多分、あの女の人達武器なんて使えないと思うけど、ル・マちゃんがこんだけ強いから、それは警戒して当然かもね。
「リョウ叔父ーっ! 真ん中と奥とにまっすぐの崖がある。不気味。上がっていいのかな?」
「それ、階段だよ」
「カイダン?」
サル・シュくんが小さな女の子を馬に乗せて帰って来た。満面の笑顔で女の子をこっちに差し出して見せる。
「リョウ叔父! これ、女の子っ! 女の子っ!」
「ミア!」
まだ広間にいた女の人が、その女の子に駆け寄ってきた。母って凄いな。血まみれの刀持って、暴れる馬に乗ってる、血みどろの蛮族に近づけるとか、ホント凄い。サル・シュくんだってかなりくさいよ? 私はもうなれちゃったけど、このお城の人からしたらすごいくさいよね?
「その人の子供みたい。ミアちゃんだって」
「そっか、ミアかーっ。大きくなったら俺の子産むんだぞーっ!」
予約、早っ!
お母さんらしき人が、子供を渡してくれないサル・シュくんの側でおろおろしてる。
「サル・シュくん、ミアちゃん、お母さんに返してあげて?」
「なんで?」
「なんで……って、え? どうするのその子」
「俺が育てるよ。俺の子、生ませるんだから」
「えっ? そういうものなの? その子五才ぐらいだよ?」
「八年なんてすぐだろ」
「なんで八年?」
「それぐらいで女は子を産めるから」
児童虐待っ!
「そんな年で子供産んだら、女の子死んじゃうでしょ!」
「そういうのもいるよな」
「いるよな、じゃないでしょ! リョウさん、これいいの? こういうものなの?」
「ハルが何に驚いているのかがわからん」
「えええっ!」
「なぁ、リョウ叔父。この女達も、俺が見つけたんだから俺のだよな!」
えっ! 三十人ぐらいいるよっ!
「わかった。ガリにも言っておく」
受けるのっ? シャーッ! ってサル・シュくん拳振り上げて喜んでる。そりゃ……凄い、よね……?
「来年、サル・シュくんの子供が三十人生まれるってこと?」
「そうなるな」
マジでっ?
「凄いことにならない?」
「そのために山を降りてきたんだ」
………………そっかー…………
「どうせ、あっちでも、ガリが100人ぐらい孕ませてる」
…………………………そっかー……………………
「でも、あの子はお母さんに返してあげてくれない?」
「なぜ?」
「なぜ? 女の子なんてサル・シュくんに育てられないでしょ? 他にも三人子供がいるのに」
「やってみないとわかんねーだろーっ! ル・マみたいに強く育ててやるからなーっ!」
「それかわいそう! …………とにかく、もう顔は覚えたでしょ? 今だけお母さんに渡してあげてくれない?」
かわいそうってなんだハル! って、ル・マちゃんに蹴られた。ゴメンって! いや、ル・マちゃんは私の足のそばの、馬のおなか蹴ってはくれた。馬さんゴメン。
「なんで? こんな小さいの、いなくなったらどうすんだよ。大事なものは抱えてるもんだぜ?」
そっか、そういう考え方か。
ああ……どうしたらいいのこれ。お母さんかわいそう。
「女の人は心配しすぎると死んじゃうから」
やっぱり、サル・シュくんもリョウさんもビクッ、とした。よし、これで乗り切れっ!
「その女の人、子供をサル・シュくんが持ってると、ずっと心配し続けて、二、三日で死んじゃうから!」
「えっ? そういうものなの? リョウ叔父!」
「それぐらいの大きさになれば、男が育てるものだ」
ああっ! キラ・シの流儀っ! そっか、男の人が子育てするんだ? そりゃそうだよね、女の人二人しかいないんだもんね。
「大陸では女の人が子育てするから!」
「なんで女がそんなことするんだよっ!」
うあーっ! どう説明したらいいんだろうっ!
「女の人の方が男の人より子供育てるの巧いんだよ!」
「俺だって巧いぜっ! もう三人育ててるっ!」
そだねーっ! えっとえっと…………お母さんがどんどん青ざめて、なんか、悲鳴あげそうだよ、もう。早く返してあげて!
「でも、『大陸』の女の人達は違うの!『大陸』では女の人が子供を育てるから、男の人が子供に触ると心配で死んじゃうのっ! それが『大陸』の女の人なの! 山の上にいたキラ・シとは違うのっ!」
「だが、これもキラ・シの女になる。キラ・シの子になる。キラ・シの育て方で育てる」
リョウさんが言い切った!
「じゃあ、『大陸』の女の人、みんな死んじゃうよ?」
「なぜ?」
「子供を奪ったら、女の人は死んじゃうのっ! 大陸の女の人はそういう生物なのっ! キラ・シの純粋な女の人とは違うの!」
「なぜそんなことがわかる」
「私も『大陸』の女だからっ!」
言い切ってやった! この『大陸』じゃないけどね、間違ってない筈。
「私も、こういう『まっすぐな家』に住んでたの。女の人が子供を育てる習慣で育ってるの。私もお母さんに育てて貰ったの!『大陸』では、男の人には子供を育てる能力が無いの!」
「なんで?」
なんでって……もうっ! …………どうしたら……
「『大陸』の男の人達弱かったでしょ?」
「ああ、キラ・シの子より弱いな」
「その分女の人が強いの!」
また、二人とも凄い驚いてる。
「あんなふうに歩いても平気だし、走れるし!」
「走れるのか?」
驚くのそこなの?
「私だって走れるよ! 下ろしてくれたら走って見せるよ!」
「駄目だ。こんな所でおろせん」
「うぐっ……苦しいっ! リョウさんっ! 腕緩めてっ! 逃げないからっ! 逃げたいわけじゃないからっ! 苦しい!」
少しだけ緩くなったけど、さっきよりずっと掴まれてる。ウエスト千切れそうっ! 脂肪もみだしだと思って我慢するっ! 凄い青痣ついてるよ体中もうっ!
「あー、でも確かに、キラ・シの女って誰一人ハルみたいに喋るやついないし、……ル・マ以外。
そいつらも喋ってるし、ル・マぐらいには頑丈なのかもな」
「喋れない? なんで女の人喋れないの?」
「さぁ? 喋れないし、歩けないし、手もろくに動かないし、そんなんに子育てさせられないだろ? だから、男が育てるしかない」
「『大陸』の女の人達は自分で育てられるから」
「そうかもなー」
「サル・シュくん、来年この女の人達が三〇人、サル・シュくんの子供産むでしょ? その三〇人、全部背負って戦うつもり?」
「三〇人の子っ? …………そっか……」
サル・シュくんは納得されてくれそうっ!
ミアちゃんが泣きそうになるのをうまくあやしながら、何度も頷いてくれてる。本当に子供の扱い巧いわ。凄いわサル・シュくん。でも、お母さんが死にそうな程心配そうだからさ、早く返してあげて。
「リョウさんも、ガリさんがあっちで一〇〇人孕ませたって言ってるけど、ガリさんはその一〇〇人を背負って戦うの? ガリさんが一〇〇人育てるの? 無理でしょ?」
リョウさんが返事しない。珍しいけど、きっと、考えてる、筈。だって、キラ・シに今までそんな事態無かったんだよね? 女の人二人だったんだから、そういう事態、わかんないんだよね?
「キラ・シでは、一人か二人しか子供が生まれなかったから背負って育てられたんでしょ? 一〇〇人子供が生まれることを考えないといけないよね? そのために山を降りてきたんだよね? お母さんたちがそれぞれ子供を育ててくれたら、男の人は戦うことに専念できるんだよ?
大陸には、たくさん女の人いるんだよ?
サル・シュくん、二人目の女の子みつけたらどうするの? 三人目は? 四人目は? 三〇人目の子供はどうするの? 子育てで戦やってる暇ないよ?」
なんでここで、私は演説ぶらなきゃいけないんだろう……ただたんにあのお母さんが、ミアちゃん抱きたくておろおろしてるのが見てられないってだけなんだけど……
「サル・シュ、その子をその女に渡してやれ。この家の入り口を抑えておけば逃げられはしない」
『自分で育てる』じゃなく『逃げられる』心配なんだ? そりゃ女の人奪い続けてたらそう思うよね。奪ったものは奪われると思うよね。そっか……その心配なんだ?
サル・シュくんが、右手の人指し指をなめて腰の袋に突っ込んで、女の子の左頬に何か……あっ! 文様描いてる! 腰の袋に赤いナニカが入ってるみたい? 多分、顔に書いてる文様の粉だ。
女の子の顔になんてことをっ!
「何してるのサル・シュくん!」
「俺のだ、ってシルシつけとかないと、他の男に盗られるっ! ほら、俺と同じ紋っ!」
サル・シュくんがミアちゃんの顔を自分の隣に並べた。
子供もかわいいけど、サル・シュくんが綺麗だわ、ホント。輝くような笑顔ってホントこのこと。ふとル・マちゃんをみたら、真っ赤になって、蹴られた。今度は本当に足蹴られた!
「サル・シュより不細工だと思っただろ、今!」
……そう、明確に思ったわけじゃないけど、確かに、そういう意味でル・マちゃんを見ちゃったかも。ゴメン。
ル・マちゃんも、サル・シュくんがいなかったらキラ・シ一美人には違いないんだけどね。サル・シュくん綺麗過ぎなんだもん。
ガリさんも、多分、笑ってくれたらル・マちゃんとよく似た美形なんだよな。いつも眉間にしわ寄せて威嚇されてるから、怖くて顔をまともに見られないんだけど……ホント怖い。ガリさん怖い。
「ミアちゃんをお母さんに返してあげて! サル・シュくんっ! 連れて逃げないから! ただ、今、抱かせてあげて!」
「おーっ! いい女に育てろよーっ!」
サル・シュくんが差し出してくれたミアちゃんを、お母さんが奪い取った。
あ……サル・シュくんが女の人の腕、捻りあげた!
「何してるのサル・シュくんっ!」
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