【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。58 ~ステータス~

 

 

「初産の間はじっとしてろ」

 リョウさんは、そっとドアを閉めて出て行った。

 足音が消えていく。

 玄関のにぎやかさが階段にしみ上がってくる。

 タッタッタッて軽い足音。ドガンッてドアが開く。

「おうっ! ハル! ……なんでここにいるんだ? リョウ・カ帰って来たのに」

 相変わらず元気いーねー、ル・マちゃん。もう生理終わったみたい。

「初産の間はおとなしくしてろって」

「おーっ! やっぱり孕んでたかっ! やったなっ! 血の道来てないからそうじゃないかと思ってた!」

 車李(しゃき)への招待を断ってたの、リョウさんじゃなく、ガリさんだったのに。まさか、ガリさんもそんな意味で断ってくれてたの?

「そっかー…………孕んだら、血の道来ないのかー……腹、痛くない?」

「全然痛くない」

「いいなー」

「……サル・シュくんの子を産んでみる?」

「父上以外やだ」

 あ、サル・シュくんが来た、けど、戸口で固まってる。

「なんだル・マ。血の道終わったのか……」

 溌剌とした彼女にそれを見て取る君も凄いよ、ほんと。

「残念だったなっ! さっさと女抱いて寝てろっ!」

 あ、ル・マちゃん、毛布抱き込んであっち向いて転がったけど、サル・シュくんがカッチーンってなったよ。私はベッドの端に逃げる。

 ファイッ! 心の中でゴングを鳴らしてみた。

「お前な……ル・……」

 ベッドに手をついて、ル・マちゃんを抱え込もうとしたサル・シュくんの首元に、刀が、押しつけられた。

「いつでも押し倒せると思ってんじゃねーぞっ!」

 ル・マちゃんが、ベッドで回転した勢いで刀抜いてる。

 突然の殺伐。

 にらみ合う美少女と美少年。そのままキスしたらハーレクインだけど、まぁ……実際には『北斗の拳』だよね。アタタタタタッ……ってこないだリバイバル見た。

「戦から帰って来た男に言う言葉は?」

 サル・シュくん、喉元に刀めり込ませながら、そんなこと言う。

「……勝ったか……」

「おう」

「………………お帰りなさい……」

「んっ!」

 笑顔。天使の笑顔のサル・シュくん。かっこいい……ぎりぎり触れる、ル・マちゃんの鼻の頭にキスして起き上がった。刀を押しつけられてた喉を少しさすって、イーッてル・マちゃんに歯を見せる。

「ル・マ。ハルを守れよ」

「当たり前だっ!」

 サル・シュくんが、チュッ、てエアキスしてドアを閉めた。

 あー……日常。

 これでホッとするって、もう、私も毒されたな。

 ル・マちゃんが、刀を枕元に抜き身のまま置いて、温石と私を抱き寄せ、私の胸に顔を埋めて、寝た。

 相変わらず早いな、寝るの。

 スイッチ切れるみたいに寝ちゃうの、気持ちいいだろうな。

『他の女を抱くたびに、お前だったらと……気が狂いそうになるっ!』

 サル・シュくんの泣き声を思い出す。

 あの『百石』自体は嘘だったけど、あの告白は嘘じゃないと、思う……

 愛してるだの好きだの言わなくても、あんなに心って伝わるものなんだな……

『百石』でちょっとイライラしたけど、もういいや。無事で帰って来たんだし。

 まっとうにいけば、サル・シュくんの願いがかなってくれたら、ル・マちゃんだって幸せになれると思うけど、ル・マちゃんは、ガリさんの子供を産まないといけないという使命感にあふれてる。

 好きなのはサル・シュくんなんだよね?

 かなりきわどいところまで許してるよね?

 どう見たって、二人が一番いいカップルなのに……

 どうしたらこの二人がもっと幸せになれるんだろう。

  

 

  

 

  

 

  

 

 朝、目を開けたら美少女が目の前にいる幸福。なんてかわいい天使ちゃん。

 もう太陽が明るいけど、随分早いみたい。ル・マちゃんに抱きつかれて動けないし、俯いてるし。ノートを引き寄せて、遊んでみた。

 ゲームみたいに、この世界の人達にステータス振ってみる。

 ここらへんの人の兵士のステータスが

 

     

  •  体力 10
  •  

  •  腕力 10
  •  

  •  脚力 10
  •  

  •  速さ 10

     

       

    •  スキル 戦士
    •  

     

  •  

 としたら、キラ・シの平均ステータスは全部倍ぐらい。

 

     

  •  体力 20
  •  

  •  腕力 20
  •  

  •  脚力 20
  •  

  •  速さ 20

     

       

    •  スキル 戦士、キラ・シの戦士、絶倫、狩人
    •  

     

  •  

 サル・シュくんが

 

     

  •  体力 25
  •  

  •  腕力 15
  •  

  •  脚力 25
  •  

  •  速さ 40

     

       

    •  スキル 戦士、キラ・シの戦士、キラ・シの上位戦士、絶倫、弓使い、狩人
    •  

    •  特殊スキル 騎射、強弓使い、パルプンテ。『刀折り(威力1)』
    •  

     

  •  

 リョウさんが

 

     

  •  体力 35
  •  

  •  腕力 35
  •  

  •  脚力 35
  •  

  •  速さ 15

     

       

    •  スキル 戦士、キラ・シの戦士、キラ・シの上位戦士、キラ・シの副族長、絶倫、弓使い、狩人、怪力
    •  

    •  特殊スキル 騎射、『刀叩き(威力1)』。
    •  

     

  •  

 ガリさんが

 

     

  •  体力 30
  •  

  •  腕力 25
  •  

  •  脚力 25
  •  

  •  速さ 30

     

       

    •  スキル 戦士、キラ・シの戦士、キラ・シの上位戦士、キラ・シの族長、絶倫、弓使い、狩人
    •  

    •  特殊スキル 騎射、『山ざらい(威力 三千~∞)』。
    •  

     

  •  

 やっぱり、ガリさん、チートすぎて卑怯。

 貴重なノートにナニ書いてんだ私。

 しかも、戦場見たの、羅季(らき)城での一戦だけだしね。

 ル・マちゃん忘れてた。怒られる。

 

     

  •  体力 15
  •  

  •  腕力 15
  •  

  •  脚力 20
  •  

  •  速さ 50

     

       

    •  スキル 戦士、キラ・シの戦士、キラ・シの上位戦士、弓使い、狩人
    •  

     

  •  

 速い! どうだろう? ここまで速いだろうか? 私にゲームセンスがないってことだけはわかった。あの、スキルとかかっこいい名前つけるの、凄いよね。

「ナニしてんだ? ハル」

「ぎゅっ……」

 背中に乗られた。後頭部におっぱい。私が男の子なら、凄い幸せなんだろうな。サル・シュくんと場所を変わってあげたい。

「キラ・シの強さをまとめてみたの。ガリさんが強すぎて凄い」

「父上は強いぜっ! 世界一強いぜ!」

「多分そうだと思う。誰も勝てないよね」

 この世界のヒーローだよね。

 でも、ヒーローって『世界が悪いとき』に出てくるものだけど、この大陸って『悪い』んだろうか?

 今のままだとキラ・シは簒奪者でしかない。

 まぁ、でも、歴史なんてそんなもんだから、それが普通か。大体は『世の中をよくしたい』じゃなく『自分の領地を増やしたい』で戦争するんだもんね。

 キラ・シだと、『女が欲しい』から山を降りたわけで、世界平和のタメに戦ってる訳じゃあ、ない。

 ただ、『コマッテナイカ』が、一番先に覚えた羅季(らき)語ってだけで………ここに来たときに、問答無用で羅季軍と覇魔流(はまる)軍を惨殺したし、羅季と貴信(きしん)と覇魔流を一方的に攻撃して居すわってるし。

『ヒーロー』ではないわね。

 あっ! 地図の付箋! 思い付いた!

  

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました