「他の戦士の女だろうが誰だろうが、女と見ると見境が無い。この前、ショウ・キの女に手を出して首を跳ねられかけてた」
「ショウ・キさんっ! よく我慢したね」
「先にガリが吹っ飛ばした」
……御愁傷様です…………
「股間を蹴り上げたから、半日ぐらい、藪の中でのたうっていて、あちこち怪我をしていたな。さすがのショウ・キも、重ねて蹴らなかった」
自分の子供にも容赦ないな、ガリさん。いや、容赦したからまだ生きてるんだよね、グア・アさん。
「それってガリさんが、グア・アさんを助けるために、先に蹴ったんだよね?」
「だが、あのバカはそれに気付いていないし、教えても信じない」
あらまぁ……
あー……ガリさんの『賢い子がほしい』ってのは、本当に切実なんだ?
「ガリがそこにいて、ショウ・キがそこにいて、それをショウ・キの女だと知っていて、なぜ手を出すのか…………アレの頭は本当に分からん」
「みんな、リョウさんみたいに前後を考えて動いてないから」
「そういう問題か?」
「そういう問題だよ。危ないことをする人って『こんな危険なことでも俺ならできる』って考えてるんじゃないんだよ。何も考えてないから、危ないことを簡単だと思ってするの」
現代だと、高速道路を走ってる乗用車の間を、バイクが駆け抜けていくとか。ああいうの、バイクの人は『俺ならできる』って思ってるわけじゃないんだよね。周りの車がよろけたときでも、『俺なら避けられる』って思ってるわけじゃないんだよ。車がよろけたら自分が事故るとか、ハンドル操作間違えたらぶつかってこけるとか、考えてないんだよ。
危険なことを『思い付かない』から『怖くない』から、なんでも『する』んだ。そういう人って。
「私のいたところでも、そういう危険なことをする人がいっぱいいてさ、よく死んでるよ」
あの当時は、あんな馬鹿なことして死ぬなんて、と思ったけど、こっちの世界来たら納得した。
キラ・シの、『「変」な奴は子供のウチに殺す』っての、凄い理に適ってる。
他の戦士の真似をできない馬鹿も淘汰してるんだ。
だから、キラ・シって、リョウさんみたいな、知能派はそんないないとしても『真似ができる頭』だけはあるんだ。空を見て方向がわかるとか、二点の位置を分かっていれば、三点目が確実にわかるとか。
戦に関することだけはピンポイントで『みんなできる』んだ。
できない人は捨てられてるから。
だから、『今さら死ぬ人』がいないんだ。
こんな、見も知らない土地に降りてきて戦争何回かしてるのに、まだ一人も死んでないとかチートすぎ、と思ったけど、ここで死ぬような人は、山で既に捨てられてるんだ。
一つ納得したわ。
キラ・シは『強い』んじゃない。『強すぎる』んだ。
多分、食料がいっぱいあって『口減らし』しなかったら、そういうお馬鹿も生き残って、戦士の足を引っ張ったんだろう。
お馬鹿と弱いのを確実に『捨ててきた』からこその強さなんだ。
キラ・シの戦士が強いんじゃなく、弱い人は殺してきたから、強い人しか残ってない、ってことなんだ。
何才かなったときに、チートを入手できなかった人は、捨てられてるんだ……
『強い人を真似できる人』しか残ってないから、どんどん強くなる。それらに追い上げられるから、強い人はもっと強くなる。
『弱い人がいない』という上将スパイラルの中で血統を継いで強くなったんだ。
それでも……40才足らずで死んでしまうんだ……?
それでも? だからこそ?
私は、この世界で何才まで生きられるだろう?
子供の頃に現代でいいもの食べてるから、寿命だけでいうと、キラ・シよりよほど長生きな気がする。母さん、健康食品お宅だったから……玄米だったし。あちこち旅行行ったから、予防接種も大体受けてるし。
しかも、リョウさんの方が年上なんだよね……
そっか…………私の、うんと未来には、もう、リョウさんはいないんだ?
急に悲しくなってきた。
「私、絶対長生きするからね……それでちゃんと、リョウさんの子供、強くて賢い戦士にするからね……」
リョウさんがおなかさすってくれるから、じんわり熱い。この子が15になるまで、リョウさんが生きてないかもしれない…………
現代の成人式じゃなくてもいいから、せめて、キラ・シの成人式である、15才までは、生きていてほしい……
それが、こんな切実な願いになるなんて、思ってもみなかった。
そっか……15年後には、リョウさんいないかもしれないんだ?
そのことを、ル・マちゃんに聞いてもらおうと思ったのに、帰って来なかった。
「リョウさん、ル・マちゃんまだ帰って来てないんだけど、行き先聞いてる?」
「ああ、サル・シュが河に誘ってた」
「……この時間に帰って来なくても、探しにいかなくていい?」
「二人とも強いから、大丈夫だ」
「そうじゃなくて」
「サル・シュは、ル・マに、無理やりナニかはしない」
そっか……
「リョウさんが断言するなら、もう言わないよ」
本当に大丈夫かな? サル・シュくんだって、年頃の男の子だよ。夜に女の子を連れ出す理由が他にある?
まぁ、私のいないところでいちゃいちゃしたいのはわかるけど。
無理やりじゃないよね。ル・マちゃん、生理のたび、サル・シュくんにH寸前までされてるの、許してるよね?
悲鳴だと思ってたの、私もリョウさんに抱かれてわかった。
何度も、イッてたんだ。
ル・マちゃん、セックスしたことなくても、何度もイかされてるんだ、サル・シュくんに。気持ちいいから、避けられないんだ。
そんな状態で、サル・シュくんがいつまで我慢できるのかなぁ……
次の日も、ル・マちゃん帰って来なかった。
三日目に、サル・シュくんがル・マちゃんを抱いて帰って来たけど、私の部屋のベッドにそっと寝かせて、チュッてキスして、出て行く。
やっぱり、一線越えてた。
起きたル・マちゃんは、筋肉痛でのたうち回ってる。元気なのに、ベッド降りるのにも悲鳴上げてた。
私もなったなった。階段降りるのが拷問だと、思ったことなかったわってぐらい、全身筋肉痛になった。ル・マちゃん鍛えてるから大丈夫だと思ったけど、やっぱり、使う筋肉違うんだ?
「股間からパキンって体が割れそうに感じるよね」
コクコク、ってル・マちゃん。おびえたハムスターみたい。
「ル・マちゃん、サル・シュくんと最後まで、したんだ?」
一応、聞いてみた。
ビクッてなって、また筋肉痛にうめいて、私の膝にぽてんと寝る。顔から髪の毛を払ってあげるだけでもゾクゾク震えてた。
「サル・シュが……、今なら子はできないから……って」
最低の口説き文句だな、サル・シュくん。
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