【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。62 ~最低の口説き文句~

 

 

 

 

「他の戦士の女だろうが誰だろうが、女と見ると見境が無い。この前、ショウ・キの女に手を出して首を跳ねられかけてた」

「ショウ・キさんっ! よく我慢したね」

「先にガリが吹っ飛ばした」

 ……御愁傷様です…………

「股間を蹴り上げたから、半日ぐらい、藪の中でのたうっていて、あちこち怪我をしていたな。さすがのショウ・キも、重ねて蹴らなかった」

 自分の子供にも容赦ないな、ガリさん。いや、容赦したからまだ生きてるんだよね、グア・アさん。

「それってガリさんが、グア・アさんを助けるために、先に蹴ったんだよね?」

「だが、あのバカはそれに気付いていないし、教えても信じない」

 あらまぁ……

 あー……ガリさんの『賢い子がほしい』ってのは、本当に切実なんだ?

「ガリがそこにいて、ショウ・キがそこにいて、それをショウ・キの女だと知っていて、なぜ手を出すのか…………アレの頭は本当に分からん」

「みんな、リョウさんみたいに前後を考えて動いてないから」

「そういう問題か?」

「そういう問題だよ。危ないことをする人って『こんな危険なことでも俺ならできる』って考えてるんじゃないんだよ。何も考えてないから、危ないことを簡単だと思ってするの」

 現代だと、高速道路を走ってる乗用車の間を、バイクが駆け抜けていくとか。ああいうの、バイクの人は『俺ならできる』って思ってるわけじゃないんだよね。周りの車がよろけたときでも、『俺なら避けられる』って思ってるわけじゃないんだよ。車がよろけたら自分が事故るとか、ハンドル操作間違えたらぶつかってこけるとか、考えてないんだよ。

 危険なことを『思い付かない』から『怖くない』から、なんでも『する』んだ。そういう人って。

「私のいたところでも、そういう危険なことをする人がいっぱいいてさ、よく死んでるよ」

 あの当時は、あんな馬鹿なことして死ぬなんて、と思ったけど、こっちの世界来たら納得した。

 キラ・シの、『「変」な奴は子供のウチに殺す』っての、凄い理に適ってる。

 他の戦士の真似をできない馬鹿も淘汰してるんだ。

 だから、キラ・シって、リョウさんみたいな、知能派はそんないないとしても『真似ができる頭』だけはあるんだ。空を見て方向がわかるとか、二点の位置を分かっていれば、三点目が確実にわかるとか。

 戦に関することだけはピンポイントで『みんなできる』んだ。

 できない人は捨てられてるから。

 だから、『今さら死ぬ人』がいないんだ。

 こんな、見も知らない土地に降りてきて戦争何回かしてるのに、まだ一人も死んでないとかチートすぎ、と思ったけど、ここで死ぬような人は、山で既に捨てられてるんだ。

 一つ納得したわ。

 キラ・シは『強い』んじゃない。『強すぎる』んだ。

 多分、食料がいっぱいあって『口減らし』しなかったら、そういうお馬鹿も生き残って、戦士の足を引っ張ったんだろう。

 お馬鹿と弱いのを確実に『捨ててきた』からこその強さなんだ。

 キラ・シの戦士が強いんじゃなく、弱い人は殺してきたから、強い人しか残ってない、ってことなんだ。

 何才かなったときに、チートを入手できなかった人は、捨てられてるんだ……

『強い人を真似できる人』しか残ってないから、どんどん強くなる。それらに追い上げられるから、強い人はもっと強くなる。

『弱い人がいない』という上将スパイラルの中で血統を継いで強くなったんだ。

 それでも……40才足らずで死んでしまうんだ……?

 それでも? だからこそ?

 私は、この世界で何才まで生きられるだろう?

 子供の頃に現代でいいもの食べてるから、寿命だけでいうと、キラ・シよりよほど長生きな気がする。母さん、健康食品お宅だったから……玄米だったし。あちこち旅行行ったから、予防接種も大体受けてるし。

 しかも、リョウさんの方が年上なんだよね……

 そっか…………私の、うんと未来には、もう、リョウさんはいないんだ?

 急に悲しくなってきた。

「私、絶対長生きするからね……それでちゃんと、リョウさんの子供、強くて賢い戦士にするからね……」

 リョウさんがおなかさすってくれるから、じんわり熱い。この子が15になるまで、リョウさんが生きてないかもしれない…………

 現代の成人式じゃなくてもいいから、せめて、キラ・シの成人式である、15才までは、生きていてほしい……

 それが、こんな切実な願いになるなんて、思ってもみなかった。

  

 

  

 

 そっか……15年後には、リョウさんいないかもしれないんだ?

 そのことを、ル・マちゃんに聞いてもらおうと思ったのに、帰って来なかった。

「リョウさん、ル・マちゃんまだ帰って来てないんだけど、行き先聞いてる?」

「ああ、サル・シュが河に誘ってた」

「……この時間に帰って来なくても、探しにいかなくていい?」

「二人とも強いから、大丈夫だ」

「そうじゃなくて」

「サル・シュは、ル・マに、無理やりナニかはしない」

 そっか……

「リョウさんが断言するなら、もう言わないよ」

 本当に大丈夫かな? サル・シュくんだって、年頃の男の子だよ。夜に女の子を連れ出す理由が他にある?

 まぁ、私のいないところでいちゃいちゃしたいのはわかるけど。

 無理やりじゃないよね。ル・マちゃん、生理のたび、サル・シュくんにH寸前までされてるの、許してるよね?

 悲鳴だと思ってたの、私もリョウさんに抱かれてわかった。

 何度も、イッてたんだ。

 ル・マちゃん、セックスしたことなくても、何度もイかされてるんだ、サル・シュくんに。気持ちいいから、避けられないんだ。

 そんな状態で、サル・シュくんがいつまで我慢できるのかなぁ……

 次の日も、ル・マちゃん帰って来なかった。

 三日目に、サル・シュくんがル・マちゃんを抱いて帰って来たけど、私の部屋のベッドにそっと寝かせて、チュッてキスして、出て行く。

 やっぱり、一線越えてた。

 起きたル・マちゃんは、筋肉痛でのたうち回ってる。元気なのに、ベッド降りるのにも悲鳴上げてた。

 私もなったなった。階段降りるのが拷問だと、思ったことなかったわってぐらい、全身筋肉痛になった。ル・マちゃん鍛えてるから大丈夫だと思ったけど、やっぱり、使う筋肉違うんだ?

「股間からパキンって体が割れそうに感じるよね」

 コクコク、ってル・マちゃん。おびえたハムスターみたい。

「ル・マちゃん、サル・シュくんと最後まで、したんだ?」

 一応、聞いてみた。

 ビクッてなって、また筋肉痛にうめいて、私の膝にぽてんと寝る。顔から髪の毛を払ってあげるだけでもゾクゾク震えてた。

「サル・シュが……、今なら子はできないから……って」

 最低の口説き文句だな、サル・シュくん。

  

 

  

 

  

 

 

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