【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。75 ~サル・シュ君では要領を得ない。~

 

 

 

 

  

 

  

 

  

 

「リョウ・カか?」

「分かってたら聞くなーっ! イタタタタタッッッッ!」

 アハハハハッ! ってル・マちゃんが笑いながら攻撃範囲から退避。速いな、相変わらず、枕でぐらい殴らせてよ!

 外では井戸ができて、リョウさんとかキラ・シがポカンと見つめてるところ。ここ丘の上だから、かなり深く掘ったよね。出ないかと思った。低いところでやり直す? って聞いたけど、さすがキラ・シ。出るまで掘ったよ。

 また釣瓶をつけて、初汲み上げの今日、レイ・カさんもショウ・キさんも、ガリさんもいたからね。

 外だったのにハウリング起こしたよキラ・シっ! 城壁に声反射させたよキラ・シ! もうっ! うるさいっ!

 しばらくはキラ・シが面白がって水を汲んでくれるから、マキメイさんがほくほくしてた。

 お風呂はやっぱり、裸で居るところが外とつながるのはやばい、ってことで、玄関からお風呂に抜けるのは変わらず。

 ただ、井戸で服を脱いで水を浴びたキラ・シは、案の定というか、裸で玄関を入ってきてお風呂場に歩く。

「玄関を裸で出入りしないっ!」

「だって、そこで脱いで、フロで脱ぐのにっ!」

「だってじゃないっ! だから、裏口に回ってって言ってるじゃないっ!」

「ここが一番近いのに?」

 しまった……玄関前にじゃなく、裏口の側に井戸を置くべきだった……いや、今から置いてもいいけど、多分、キラ・シは、裏までまわるのが面倒、といって使わない気がする。

 これだけは、リョウさんも駄目だった。

 そりゃね、数分で着たり脱いだりするのは面倒だろうけど…………

「お城の正門なのよっこれっ! 裸でうろうろしないでよっ!」

 マキメイさんが背中を撫でてくれた。

「そのお気持ちは、わたくしもよく……よく分かりますよ、ハルナ様!」

 彼女がそう言ってくれるだけでも、少し気が楽になる。ここらへん感覚が似てるらしいのが本当、助かった。

 玄関前に、覇魔流(はまる)から持ってきた棕櫚(しゅろ)の木の皮で編んだ絨毯を置いた。足の泥はそこで落としてくれるようになったから、まだまし。

 まぁ、皇帝陛下の居城とはいえ、なんかエライさんが来るでも無いからいいっちゃいいんだけど……皇帝陛下も今はうろうろしないしね……皇族もいないし!

 股間を隠しもしない男の人達が全裸でうろうろするのは腹が立つわー……………………でも、隠されてもイライラするだろうな……

 もう女官さんも慣れちゃって、気にしなくなっちゃったよ。

 まぁ、お風呂に頻繁に入ってくれるようになっただけでもよしとするか…………入浴の癖をつけるなんてどれだけ大変だろうと前も思ったけど、よく、入ってくれるようになったよ、本当。村でも、井戸で水浴びてるらしい。

『きれい好きな狩人』って言われるって聞いて驚いた。

 お風呂に入ってるったって、毎日入ってるのはお城に居るキラ・シだけで、制圧に出てる人達は十日ぐらい入ってないこともあるのに。まぁ、こっちの人達も、頻繁にお風呂なんて入ってないってことだね。あの黄色い河で水浴びして終わりらしいし。つまり、みんなくさいんだ。

 キラ・シは多分、山から降りてきたからなんだろう、あの黄色い河がどうしても我慢できないらしくて、滅多にあの水は飲まないって言ってた。

「あれ、水じゃないだろっ! あんな黄色いのっ、駄目だろっ!」

 大体なんでも気にしないサル・シュくんでも凄い拒否反応示してたもんな。

「馬は平気で飲むから、毒じゃないんだろうけど……くさいし、なんかじゃりって喉に残るし……水飲んだ気がしない」

「あれは、一度沸かして飲むんだって」

「わかす?」

「鍋に入れて火でぐつぐつさせるの。それを冷ましてる間に、あるていど黄色いのは沈むみたい」

 上澄みを飲むんだね。サル・シュくんがめんどくせぇ、って顔で、手をヒラヒラ振った。イヤだ、ってことだね。

 最近、地図は過疎ってる。もうここら辺全部回ったみたいで川向こうに行ってるから、新情報が入って来ない。多分次は、拡大図作ることになるから画板を用意してもらってる。

 どうやら『新しい村を幾つ見つけるか』で競争してるらしい。もちろん、ガリさんがトップぶっちぎり。次がサル・シュくんとレイ・カさん。ショウ・キさん……以下。って感じ。他の人達はその四人が行ったあとを回ってるみたい。競争にさえ加わらなかったら、見つかってる村を行った方が絶対に楽だもんね。

「84枚」

 一週間ぐらい居なかったガリさんが帰って来たら、また凄い数字出した。12個も村を追加。しかし、よく覚えてるなー……村の位置と、女の人の全体人数と、抱いた人の数。12個分も、一週間覚えてるって凄くない? ワーキングメモリ大きいな。というかもう、ワーキングメモリじゃなく、長期記憶になってるよね。というか、三分の1は帰路だよね? つまりは、五日ぐらいで12カ所、84人?

「どこ行っても、ガリメキアが先に行ってる!」

 ショウ・キさんが凄い怒鳴る。うるさい。別にガリさんは全員抱いて来るわけじゃないんだから。でも多分、全員が孕み日だったら、全員抱いてくるんだろうな。

 サル・シュくんとレイ・カさんはどうにか、空白地帯も回ってるけど、大体はガリさんが先にいるって。全然競争になってない。やっぱり、二番手はサル・シュくんかな。

「族長が行かないところに行くしかないだろ。なんか、地面が動くトコがあって、怖い……」

 ああ、もう車李(しゃき)の砂漠まで行ったんだ?

「そこ、踏み込んだら死ぬからね、行っちゃ駄目だよ? 特にサル・シュくんは」

「なんで俺はっ!」

「日差しが強いから、白い人ほど『その世』に引っ張られやすいの」

 面倒臭いからそういう説明したら、サル・シュくん、絶対北に行かなくなった。サル・シュくんでも『その世』は怖いらしい。

「その、砂が動くところは、長袖を来て、布をかぶって、水をたくさん用意して、黒い人が先に街を見つけてから、白い人が駆け抜けなきゃいけないんだよ。白い人が探しに行ったら、焼け死ぬからね」

 だから、ガリさんとか最初から近づかなくて、川沿いに南下して東進してるのに。それとかぶらないようにって思うから、サル・シュくんが砂漠に行き当たっちゃったんだな。

「リョウさん、そろそろ、羅季(らき)から行くにはあっちがわ、遠すぎると思うの」

 そろそろ車李が来るし。

「掾吏(えんり)か留枝(るし)を取ってしまった方がいいんじゃないかな……」

 羅季の書庫の本では、掾吏から行けば、車李の北の、砂漠の国ナガシュに行きやすいらしい。車李は煌都(こうと)の隣だから、車李から直接ナガシュに公道を通してないんだって。でも、ナガシュと車李は直接戦ってるのよね。

 そのあと、砂漠に懲りたサル・シュくんが、北に向かってる。掾吏はいいけど、紅隆(こうりゅう)が気持ち悪いって、そこから向こうはまた行ってない。なんでそんな、危ないところばかり見つけるかな、サル・シュくん。

 安全なところをガリさんが行ってるから、違うところ、でそうなるんだろうけど……

「気持ち悪いってどういうこと?」

「気持ち悪いって………………気持ち悪い……」

 やっぱり、サル・シュくんでは要領を得ない。

  

 

  

 

  

 

 

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