【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。89 ~日焼け~

 

 

 

 

  

 

「あそこだけじゃないよガリさん、塔が全部なくなってるもん。ほら、正門の上まで崩れて……」

 うわ…、正門崩れてる。キラ・シが撤退してなかったら閉じ込められてたか、押しつぶされたかしたよね。

「とりあえず、今日明日はどうにもなりそうにないから、村で休憩しない?」

 マキメイさんとか、もうへたり込んでる。

 暑いし!

「あそこに、広い家があるから、乗っ取ろう」

 ガリさんが全開で近づいたら、地響きで出てきてたお金持ちっぽい住民が、脱兎の勢いで王城に逃げた。

 そりゃ、あの迫力のある馬に乗った迫力のあるガリさんだけでも怖いのに、後ろにこんな300人がいたらびびるよね。ダンプカーが家に突っ込んできたみたいなもん。

 前、乗っ取った小宮殿。全員がまとめて休めるっていいよねー。あー疲れた。久々のベッドっ!

 というか、プールっ!

 私が入る前にキラ・シが飛び込んだから一瞬で泥水になった……クッ! でも、洗わないよりましなので入る。あー……髪とか、砂が入ってかゆいっ!

 そしてベッドっ! ふわふわのクッションにダイブしたら、そのまま寝てしまった。

 朝? 隣にル・マちゃん、リョウさん、ル・マちゃんの隣にサル・シュくん。安定の『カ』一族寝室。

 私がリョウさんに抱きついてて、ル・マちゃんが私に抱きついてて、サル・シュくんがル・マちゃん抱いてる。

 サル・シュくんと目があった、ニャハって手を振ってるから振り返したら、その手をリョウさんに握られた。そのまま上にのしっ……って……えっ?

 サル・シュくんが、ル・マちゃん抱いて出て行った。

  

 

  

 

  

 

 あんなところでいきなり処女を散らすとは思わなかった……

 いっっったいっ!

 ここは階段無いから羅季(らき)よりましだけど……

 あ……なんか、大広間に凄いものが積み上がってる。

「マキメイさん、どうしたの?」

「車李の大臣さんが来て、貢ぎ物を置いて行ったようです。無条件降伏ということでした」

 昨日の今日で? しかも大臣?

 もしかして……車李の王族、あれで全部亡くなった?

「あっ、リョウさんっ! リョウさんっ! イタタタッッッ!」

「寝てろ、ハル。無茶をして済まなかった」

「それはいいけど……留枝(るし)っ! 留枝を陥としてっ! 羅季を取られる!」

「サール・シュっ!」

 サル・シュくんが、リョウさんの肩を叩いて出て行った。

「レイ・カさんもっ、レイ・カさんもっ!」

「レイ、行け」

 リョウさんが言う前に、レイ・カさんも号令上げて走ってた。サル・シュくんとニコイチなのかな?

「リョウさん、あれ、どうやって持ってきたの、貢ぎ物? 誰が来たの?」

「ミゲシというダイジンだ。オウゾクガゼンブミマカラレタと言っていた。シャキノオウトナリタミヲミチビイテクレと」

「えっ! それって、車李の王様になれってことだよ?」

「オウサマ?」

「族長っ!」

 リョウさんの後ろから歩いてきてたガリさんにも聞こえたらしい。目を丸くしてた。小さく小首を傾げながらリョウさんの隣に立つ。

 リョウさん大きいんだけど、ガリさんのほうが背が高いから、とたんにリョウさんが、ぶんぷく茶釜の狸みたいに見える。

 ガリさんが少し首を前に倒して、顔ごと私を真正面に見た。説明してほしいときの癖だって、もう分かってる。めっちゃ怖いけど……

「昨日の『山ざらい』でシロを崩したときに、王族が全員死んだんだって。だから車李がキラ・シのものに、なったの。だから、ガリさんに、車李の族長になってくれって」

 ガリさんが無言で、城を軽く指した。

 あのでかい城の? という驚きが隠れてて笑いたくなる。

 多分、王族の人達は他にもどこかにいるだろうけど、とにかく、目の前の敵に、これ以上城を壊されないように白旗上げたんだろう。街は無事だろうし。

「今は行かなくていいよね。お城崩れてて大変……周りを見張って、戦士が入らないようにすれば、盗られないし」

 どのみち、キラ・シに政治はできないし。

 傭兵になるつもりだったのに、王族全部死ぬとかっ!

 これは、ゼルブの民を早くとってしまわないと立ち行かないっ!

「あ、サル・シュくんに、留枝の『ヘンナノ』を殺さないようにって伝令してっ!」

 遅かった……

 前と同じように、留枝は羅季に兵を出そうとしてたけど、まだ城内にいるときにサル・シュくんに殴り込みを受けて、即効全壊したらしい。

「すっごいっ、聞いて聞いてーっ!『刀折り』出したら、20人向こうまで切れた!」

 サル・シュくんのかわいらしい宣言でキラ・シがわいた。

 城内に密集してたから、カマイタチが届く範囲にたくさん人がいたみたい。

 これでサル・シュくんも『特殊スキル 刀折り(威力20)』に繰り上げ。

 今回は、留枝王の前にチヌさんが出てきたから、ソレを殺して留枝王殺したらしい……そのあと、サギさんが、サル・シュくんにひざまずいて、一緒にここまで連いてきた。

 ゼルブが手に入ったのはいいけど、一番強いチヌさんいないのかぁ……

 でも逆に、サギさん以下、ゼルブ全員がサル・シュくんに震え上がってた。

 どうやら、本当に、ラクラク一撃でチヌさんを倒したらしい。そして、サル・シュくん以上のガリさんを見て、もう、平身低頭で、ゼルブの人、失禁しっぱなし。

「ゼルブの民はキラ・シに未来永劫従属いたしますっ!」

 そんな宣言貰っちゃった。

 まぁ、いいか。

 もう随分、地図は書いてたんだけど、サギさんに追加してもらって、エンピツも貰ったし、子供の養育も万全になった。

 問題は、というと……私がまだ、妊娠してないことだな。

 前はここで子供生んで死んだんだもんね……

 いや、今、毎晩種付けされてるけど……

 ボーとするわ、筋肉痛酷いわ、散々だ……

 このあとどうなるんだろうなぁ……

 そうだ、体力つけないといけないんだった!

 でも、リョウさんもキラ・シも歩かせてくれない!

「こんなに大事にされたら、子供生めないっ! 体力つけないといけないのっ! ゆっくり動くから、歩くの止めないでっ! このまま体力無くなったら、生む前に私が死んじゃうよっ!」

 もう、あんなことはゴメンだ。

 リョウさんの子供の顔ぐらい見たいっ!

 そう、思ったのに……

 うっかりした……

 出陣を見送ったあと、思わずそこで思い付いたことがあって、枝で地面にメモしてたら、日焼けしすぎた。

 背中とか、両腕とか、耳とか膝とか赤く晴れ上がっちゃって、プールで冷やしてたんだけど……

 ブツブツブツッ……て水ぶくれが出て…………このあと治ると思ったら、赤黒く膿んで腐って熱が出た……

  

 

  

 

  

 

  

 

 

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