【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。90 ~ガリさんの女だよ~

 

 

 

 

  

 

 そしてまた、富士見台の家……

 うあー……あそこで、日焼けのしすぎで、感染症かなんかなって高熱のまま死んじゃったんだ、私……

 日焼け怖いっ!

 そして、森。

 もう、何回目だろう……こっちの世界に来るの。

 というか、どうやったら私、死ねるんだろう?

 こっちで死んだらあっちでも死ねると思ったのに、時間を巻き戻されるとは思わなかったな……

 あ、クサイ…………リョウさんが……

 両手を開いて振ったら、突きつけられたのは刀じゃなく、矢だった。

 馬の上から……ガリさんが、弓で私を狙ってる。

 ………………っ! えっ! リョウさんじゃないこともあるのっ?

 ナニ? ランダムなの? この最初って!

 そしてまた、私失禁。

 ガリさんが見た目通り怖くないと知ったとはいえ、今はまだ敵同士で、武器向けられてるの、めっっっちゃ怖い……心臓止まりそうっ! もう一度言うけど、めっっっっちゃくちゃ、怖い。

「女……」

「はい……そう、です……」

 私が答えたから、ただ呟いただけのガリさんの目が少し丸くなった。

「キラ・シの女か」

「キラ・シじゃないですけど、女です」

「どうしたガリ」

 リョウさんっ! 遅いっ!

 後ろからリョウさん出てきたけど、遅いよね? これって、私、ガリさんのものだよね?

「はぐれモノがいる」

 リョウさんは私をちらっと見てガリさんを見た。

「連れて行くのか?」

「先に行け」

「おう」

 リョウさんが行っちゃったーっ! アアーッ!

 ガリさんが馬を下りた。

 はぁ………………これじゃぁリョウさんと赤の他人だよね…………うぁーっ……

 とか、思ってたら、ガリさんが毛皮脱いだ。

 あそこだけ。

「ひっ」

 え? リョウさんには降りるまでするなって言ってたよね?

「初めてか?」

 コクコク。

 ガリさんが、笑った。よかった、笑えるんだ?

 知ってるけど、そう思ってしまった。

「気を抜いていろ」

 キス、されて…………意識飛んだ。

  

 

  

 

  

 

 山を降りてる間、毎晩、抱かれた。

 女の体って仕方ないな……それは、前も分かってたんだけど……

 ガリさんを、好きになっちゃってた。

 気がついたらガリさんに背負われてて、崖を降りてて、失禁して失神。抱かれて目覚めて、シテる最中に口に木の実を突っ込まれる。

 ガリさんって凄い、指、長い。

 背負われて起きてたときも、平地になるたびにナニか食べさせられた。飲み水はずっと口移し。

 駄目だ……頭溶ける……

 ガリさん……リョウさんより何もかも巧い…………さすが族長……こんなスキルまで高いの?

 気がついたら、私はル・マちゃんの後ろに乗ってた。

 腰をル・マちゃんと結ばれて、手も、ル・マちゃんのおなかで結ばれてる。崖で落ちないよう、安全のためだ、って聞いた気はした。だから、山を昇るときは前に座らされるし、降りるときは後ろ。それはリョウさんも一緒だった。

「ガリさんは……?」

「今やったら孕むから、そばにいられると困るってさ」

 不機嫌そうなル・マちゃんの声が聞こえた。

 子供作るためにやってたわけじゃなかったの?

 一週間ぐらい、ル・マちゃんの馬で降りたのかな。相変わらず、凄い崖に失禁失神の繰り返し。

 また、気がついたらガリさんの馬にいて、ずっと抱かれてた。

 ずっと失神してたから、崖下り怖くなくて助かったけど……

 あ、羅季城の尖塔が見えた。

 また私、ル・マちゃんの後ろにいるし……そっか、ガリさんもう戦闘モードだから……なんかもう、新しいこともないし、…………眠い…………

  

 

  

 

  

 

 起きたら、たき火があった。

 え? 月が見えない……というか、ここ、羅季城の中っ? あの、最初の玄関の所っ!

 うわっ…………みんな、洞窟だと思って、たき火して寝てる。玄関は誰か立ってるけど…………

 あの時、私が何も言わなかったらこうなってたんだ?

 私は……?

「寝てていいぞ」

 あ、ル・マちゃんの馬の後ろに乗ってる? 手も腰も、結ばれたままだ。

 そっか、『ガリさんの女』だから、サル・シュくんもリョウさんも触れないんだ?

 じゃなくてっ!

 戸が、全部、しまってる!

「待ち伏せがあるよっ! 起きてっ!」

 がっつり大の字で寝てたサル・シュくんが立ち上がったのと、扉が開いて兵士が入ってきたのが同時だった。

 やっばっ! 今のは明らかに私の声が掛け声になった気がする。

 今は、ル・マちゃんが中央で、サル・シュくんとリョウさんが脇にいたから、ル・マちゃんは誰も殺さなかったけど、もちろん、羅季兵全滅。

 これは、私が声を掛けなくても全滅しただろうな……

 シャーッ! って、サル・シュくんが景気よく吠えてるけど、ル・マちゃんが凄く悔しそう。

「俺だって、女乗せてなかったら戦えたのにっ!」

「お前も女なんだから、守られてろよっ!」

 ケラケラッ、と笑ったサル・シュくんを案の定、ル・マちゃんが刀の腹で叩き落とした。

「それより、女。なぜ待ち伏せがあると知っていた?」

 リョウさんにメッチャ睨まれた!

 ああ、私、まだ、名乗ってなかった!

 何も聞かずに待ち伏せって言っちゃったけど、これは、やっぱり、ガリさんあの窓に飛び込んだんだよね? この歴史は変わってないよね?

「それよりリョウ叔父! これっ! 穴があいてるっ! この向こうは見てねーよっ! サナっ、さっさと死体を外に出せっ!」

 サル・シュくんが奥を覗きながら、小さい子たちに指示をしてる。リョウさんは、ずっと私を睨んだまま。

「その女が叫んだから間に合ったんだし、そんな怒ることか? 敵と通じてたら、アソコで叫んでないだろ? なー? というか、喋れたんだ?

 名前ある?」

「ハ……ハルナ、だよ」

「おー、本当に喋ってる!」

「本当にってなんだっ! 喋ってきた、って言っただろっ!」

 ル・マちゃんがサル・シュくんに殴り掛かる。サル・シュくんが避ける。相変わらず。

「ハル、エライッ! 助かったぜ。リョウ叔父、どうする? あの洞窟、行く?」

『名前ある?』って聞かれるとは思わなかったな……

 今、何時なんだろう? なんかもうすぐ、ガリさんが来そうな気がする。

「いや、朝まで待とう。それより、ハル、なぜ待ち伏せがわかった?」

「あ……? えっと………………ガリさんが、上から降りてきたでしょ?」

「お前寝てただろ」

 ル・マちゃんに軽く肘鉄食らった。

「ガリさんがヤマ……一気にたくさんの人斬ったの、見たもんっ!」

 ここで『山ざらい』って言ったらやばいよね。

「あー……あの時も起きてたのか?」

 ル・マちゃんが馬の足で死体を外に蹴っ飛ばす。相変わらず起用だな、キラ・シの馬。

「あの時、ガリさん、この上から降りてきたのに、全部閉まってるっておかしいでしょ? だから、誰かが閉めたんだよ。ずっと起きてたら言えたけど、……ごめんなさい……」

「…………謝らなくてもいいが……なぜそんなことに気付いた?」

「私も以前、こんな家に住んでたから。ここでたき火してるってことは、ここを行き止まりの洞窟と間違えてるんだろうと思って……」

「その通りだよな、リョウ叔父。みんな洞窟だと思った」

 そしてやっぱり、危険だと思ってるサル・シュくんは、リョウさんの指示があるまで奥にいかない。リョウさんは私が不審なので指示を出さない。

 どうしよう……

 私が役に立つところを見せないと、このままだよね? 別に、私が何もしなくてもいいような気もするけど……私が羅季のこと、教えなかったらどうなるんだろう?

 でも、ずっとガリさんに抱かれてるわけじゃないし、ぼーっと奥に居るだけだと絶対ヒマだし。でも、女官さんみたいに働くのもいやだし…………なら、今から役に立っておく方がいいよね?『参謀』の役が欲しい。頭脳労働に特化したい。だって、力仕事なんてできないし……

「その、壁際に灯台があるから、火をつけてみて?」

「トウダイ?」

「ル・マちゃん、火を一枝取ってくれる?」

「なんで俺の名前知ってるんだ?」

 ル・マちゃんが、ひそかに私の手をちゅるちゅる触ってた。私のマニキュアが好きなのは同じなんだね。

「さ……さっき、サル・シュくんが言ってたでしょ?」

「いや……?」

 玄関フロアをを馬でガツガツ歩き回ってたサル・シュくんが、私に、真正面向いた。

 ゆっくり腕を組んで、笑みを消す。

 ヤバイ……、『静かなサル・シュくん』だ……うわ、なんか……逆鱗にふれたっ!

「あの待ち伏せのあとは、一度も呼ばれてないし、言って、ない」

 そこ突っ込むかっ!

「お前、ナニもんだ?」

 うあーっ……全然信用されてない! 当たり前か、全然喋ってないもんな。私はもう、凄い仲良い気分だったから、……まずい。これは気を引き締めないと、間諜として殺されちゃうぞ。

 どうすれば……

「ガ……ガリさんの女だよ」

  

 

  

 

  

 

 

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