【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。91 ~ナニでできてる~

 

 

 

 

  

 

 もう、七光にすがるしかない。

 そして、こういうときに来てくれるのがヒーロー!

 ガリさん登場!

「リョウ、来い」

「あ、族長っ! 帰って来、た…………あ……?」

 ガリさんは相変わらず、旋風のように駆け抜けてった。うん、分かってますよ。上で皇帝さんたち殺しまくるんですよね。あれって、どうにか止められたら、ものすごく歴史変わるよね。

 でも、それにはガリさんの女が一番だろうけど、どうせ次も抱き潰されるだろうから、この時点で信用を積み上げられない。それはリョウさんも一緒だよね。

『何回』やっても、体力とか体は元に戻ってるから、あの崖下りを失神せずにいられない。

 そして、事態は何も変わってない。

 いや、サル・シュくんの不機嫌はもっと酷くなった。

「クッソ……いっつも、リョウ叔父ばっかり!」

「当たり前だろ、二位だぞ、リョウ・カは」

 ハハンッ、てル・マちゃんが笑う。この二人の関係も一緒だね、よかった。

 というか、まだマキメイさんに会えてない。今頃奥で震えてるんだろう。早く外に出してあげたいな。

「とにかく、明かりをつけたいんだけど」

 サル・シュくんが顎でたき火を指す。

「私は、この状態で全然逆らえないんだから、敵視しないで」

 まだ、ル・マちゃんに結ばれたままだよ。

「うさんくさすぎる」

「じゃあ、サル・シュくんがやって」

「なんで俺が動かなきゃならない」

 あの崖で、助けてもらったり助けてもらったりが無いから、凄く、遠いんだ、まだ。

 だって、ガリさんに抱き潰されてて意識なかったんだから仕方ないじゃないっ!

 サル・シュくんのこの、強情な面に真正面からぶつかったら勝てないよ……どうしよう。

「ねぇ、ル・マちゃん……」

 前に結ばれた手で、ル・マちゃんの頬を撫でた。相変わらず、私に触られるの好きっぽい。

「……ナニがしたいんだって?」

「あのたき火の火を、壁際に持って行って?」

 ル・マちゃんがサル・シュくんとにらみ合った。

「なんだよ、ル・マはその女の言うこと聞くのか」

「女同士だからな。サル・シュより信用できる」

 カッチーンって、サル・シュくんなった。いつもならここでファイッ! だけど……さすがに、戦時下というか、今、人を切り殺したところで、それはないみたい。

 うわ……サル・シュくんが気迫凄くておなか痛い……

 はっ! ……ル・マちゃんも、なんか……全開っ!

 うそっ……まさか、みんなできるの? この迫力の開放? ……というか、ガリさんのあの『キターッ!』っていうアレ。

 漫画だったら、サル・シュくんの青いオーラとル・マちゃんの赤いオーラがぶつかり合ってる感じ。

 ル・マちゃんが火の枝を持って、わざわざサル・シュくん側の壁に近づいた。

「どうするって?」

「え? ……あっ、そこっ……、垂れてる『ツタ』みたいのに炎を近づけ……」

「うぉおおおっ!」

 相変わらず声が大きい………火がついたのと同時にハウリングした。

「明るくなったっ! なんだっ、なんでまっすぐっ!」

「そこ、壁にあるの、全部火がつくから、つけてっ!」

 サル・シュくんも、枝を取って火をつけた。

「夜だぞっ! なんだこれっ!」

「灯台って言うんだよ」

 サル・シュくんとル・マちゃんが、同時に私を振り返った。その気配、消して……

「知ってたのか?」

「知ってるから言ってたんだよ。明るい方がいいよね? ナニカ、キラ・シに不利になった?」

「トウダイ?」

「そう、灯台。このお城中にあるから、火をつけると明るくなるよ。それはいいけど……その気配、二人とも、消してくれる?」

「なんだこれはっ!」

 リョウさんがガリさんと降りてきた。ガリさんも、辺り見回してる。けど、また出て行った。

 もう叫んでないから、舌を抜けとか目を潰せ、とか言われないもんね。イーッだ!

 リョウさんを見たからか、サル・シュくんが気配を納めて、そのあとル・マちゃんも納めた。

 うわ……もう、怖かった………………

「リョウ叔父っ! ハルが、トウダイってのに火をつけろって言うからしたら、こうなった」

「リョウさんが今降りてきた、まっすぐの崖は、カイダン。このお城には女の人がたくさんいるから、気をつけてね」

 最初は、サル・シュくんにドアを石で詰めていくように言ったけど、結局誰もいなかったからそういうの前回は言わなかった。今も、いいよね。

「女? こんな所に?」

「お城だから、ここ」

「なぜ、そんなことを知ってる?」

「私がここに来たのは初めてだけど、似たような所に住んでたから。こういうところは女の人が色々男の人の世話をしてくれるの。今、30人ぐらい、奥に隠れてる筈」

「30人っ! 女がか?」

 リョウさんって、前に羅季(らき)に降りてきてたのに、女の人が多いことに毎回驚くなぁ……

 まだ好きだけど、もう、ガリさんのほうが随分好きになっちゃってて、なんか寂しいけど……仕方ないよね。全然、リョウさんにときめかない……

 相変わらず、羅季礼した男の人を、今度はサル・シュくんが殺してた。もう、私も全然慌てないし……眠い…………事態になれちゃって、疲れのほうが強い。寝たい……

 山下りだけでもつらいのに、ガリさんに何回もイかされ続けて体力も気力も吸い取られ続けてたから…………

 でも、おなか空いたな。早くマキメイさん見つけてご飯作ってくれないかな。というか、随分遅いよね?

 男の人が出てきたのに、あ……マキメイさんがあんな後ろ! サル・シュくんがここにいて……え? ミアちゃん、マキメイさんが抱いてるっ! ヤバイ。私とマキメイさんの信頼関係の最初の出来事が……

 と思ったら、サル・シュくんがミアちゃんをマキメイさんから取り上げた! ぺろっとスカートめくった! コラッ!

「女! この子、女!」

 相変わらず、毎回してくれるあの騒動を引き起こした。おかげで、マキメイさんと喋れた。よかった。

 ご飯を……ご飯を早く…………靴より先にご飯……おなかが鳴って、めっちゃ笑われた。

「だってなんか、食事した覚えがないんだもんっ!」

「食わしてはいたけど……栗とか、一個ずつ食ってただけだから、そりゃ腹減るだろ…っ!」

「ル・マちゃんが食べさせてくれてたの? ありがとうっ!」

「……いや…………殆どは父上だけど……」

 なんか凄い、ル・マちゃんが照れてる。なぜ?

 ル・マちゃんがずっと撫でてるから、私の手、つるっつるだよ。透明マニキュアははげちゃってる。どれだけ撫でてたの?

 出てきたお料理! 北京ダック抱え込みして、満足!

 さぁ次は、お風呂ですよ!

 と思ったけど…………夜が明けてきたっ! マジでっ!

 やっぱり、『洞窟』状態で随分寝てたんだ。

 今回はどうだろう? 川向こうに行くかな? 行かないかな?

 せめてお風呂入りたいな。

「マキメイさん、お風呂在るよね? 入れる?」

「……ぁ……はいっ! もちろんですっ! いつでも入ってくださいっ!」

 よし、さぁ……どうしようかな…………前みたいには、私とル・マちゃんの間に友人関係が無いしな……

「フロ?」

「お風呂。体を綺麗にするの。私、入りたいんだけど、ル・マちゃんも一緒に入らない?」

 さっき、手は外してくれたけど、腰はそのまま。苦しいほど縛られてはないけど、馬を降りることはできない。ル・マちゃんのおなかを両手で押さえて、あっためるようにする。

 いつもなら、ル・マちゃん今日から生理だから、冷えてる筈。こうすると気持ちいいでしょ?

「リョウさん、奥に、体を温めて綺麗にする、お風呂っていうのがあるんだけど、ル・マちゃんと二人で入ってきていい?」

「フロ?」

「ル・マちゃんも体あたたまるよ」

「別に寒かねーよ」

「女の人は温めた方がいいんでしょ? リョウさん、サル・シュくん見張りにしてくれていいから」

「なんで見張りだよっ! ル・マがするならするっ!」

「行ってこい」

 リョウさんが、ため息とともに手を振った。

 そりゃ、突入当日のお城で、『あたたまる』とか、時間取りたくないよね。でも、女二人ならいいかなと思ったけど、サル・シュくんまで来るとなるか……ああそうだ、ル・マちゃんを護衛しないといけないんだ。そうか。

 もう、恥ずかしさもないので、パッと服を脱いでかけ湯してお風呂に入った。

 あー……やっぱりここのお風呂が一番いいっ!

 車李(しゃき)のあの小宮殿にはプールあったけど、オアシスの湧き水だったから、冷たかったんだよね。

「あー…………気持ちいい……」

 おじさんみたいな声出た。

「なんかっツルツルになったっ! ハルみたいっ! ……や……ハルのほうがツルツルだ…………ツルツルだ……」

 私の頬を撫でてうっとりしてるル・マちゃん。

「ル・マちゃんも、毎日入ってるとこうなるよ」

「ホントにっ! 父上も喜んでくれるかな?」

 う……なんでここでそれを言う? そんなの初めてだよ?

「ガリさんが、ナニ?」

「父上が、『あの女はナニでできてるんだ』って言ってたから…………」

  

 

  

 

  

 

 

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