【赤狼】女子高生軍師、富士山を割る。99 ~敵にしちゃいけない~

 

 

 

 

  

 

「そのあと、留枝(るし)を陥とす。そのあと、この『密偵』がうろうろしてるから、それをとらえて脅せば、キラ・シの味方になる。

 この、ゼルブの部族だけは、敵にしちゃいけないっ!」

 叫びすぎて目眩がした。

 リョウさんが抱えてくれるけど、涙があふれて、

「絶対に、キラ・シが勝つんだよっ! 下手したら、ここでガリさんとサル・シュくんが死ぬからっ! 絶対にっ、ここで留枝を、留枝王城を先に陥とすんだよっ!」

 もうナニ言ってるのかわかんないほど泣き叫んでしまったけど、キラ・シのみんなは、オーッ! って、拳を振り上げてくれた。

「私が先見できるのはここまでなの…………だから、絶対に、勝って……っ! 勝って……下さい……!」

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

「はっ……!」

 起きたら、寝室、だった。

 マキメイさんに頼んでた温石も巻かれてる。隣にル・マちゃんとリョウさん。あっちにサル・シュくん。

 うわ……目が痛い…………泣きすぎた?

「ナニ? ハル。俺が死ぬトコ、先見で見たの?」

 ああ、それが聞きたかった?

 つま先からの凄いセクシーショット。目の毒なので、服着てほしい。

「うん…………でも、サル・シュくんが先に、留枝を陥とせば、そんな未来は消えるよ…………

 今のところ、その二つが見えてるんだ………………負けるか、勝つか……だから、勝って……」

「当たり前だ。あそこまで言われて、負けるように動くわけない。ルシだろ? 絶対に、陥としてやる」

「うん…………その時に、できたら、ゼルブの民は殺さないで。

 密偵の部族なんだ。

 ル・マちゃんより少し遅いぐらいだけど、それが100人以上いる」

 ヒュウ……って、口笛吹くサル・シュくん。

 いや、あのゼルブの戦士がみんなそんな速いかは知らないけど、とにかく、お頭のチヌさんがそのレベルだった。

「ルシの王様をサル・シュくんが殺したあと、隙を見せたら襲ってくる黒い人達がいるから、殺さずに縛って、気配消して監視してて。面白いことして縄を抜けるから。

 そのあと、治ったら戦士として働ける程度にギッタギタにしていい」

「その時のル・マの未来は?」

「ルシを陥としたときは元気だよ。負けたときは……サル・シュくんが助けてくれたから、生きてた」

「族長は?」

「私を助けたから、私と一緒に死んだ……」

 あ、駄目だ。何回思い出しても泣ける……

 今は、私はリョウさんの女なんだから、ガリさんのことで泣いたらリョウさんが複雑になっちゃうよ……

「族長と俺が一緒に死んだなら、来世でも一緒に産まれられるなっ! リョウ叔父より近いかもっ!」

 キャハッ、とサル・シュくんが笑ったから、私も笑えた。

 こういうときのサル・シュくんは、天才的だ。泣かせてくれない。

「大丈夫。ルシを先に叩けば、そんな未来にはならないから……」

 リョウさんが頭を撫でてくれた。

「それさぁ、今すぐ行っていいんじゃないのか?」

 サル・シュくんがヨッ、とベッドから跳ねて、床にポンと立つ。

「今は、車李からの戦士を止めないと……」

「そんなの、族長がいたら簡単だろ」

「…………たしかに、そうだけど…………若戦士で間に合う感じ」

「弱い……なッ! 族長っ!」

 ガリさんが、戸口に立ってた。

「続きを、今からできるか?」

 ガリさんは、もう、黒づくめ。ズボンに長袖。袖の下に手っ甲替わりかな? 指無し長手袋みたいに布を巻き付けてる。

「もちろん、すぐできるよ! 3人とも、服を着てよ!」

 まだ全裸のル・マちゃん、サル・シュくん、リョウさんに指さし確認。

「ル・マちゃん……本当にもう…………なんで、全裸でサル・シュくんと抱き合って眠れるのっ! それ、サル・シュくんがかわいそうだからねっ!」

「ハルは分かってくれるんだっ! すげぇっ! もっと言ってもっと言って、ル・マを説得して!」

「説得はしない。ル・マちゃんの意志に任せる。とにかく、ル・マちゃん、服を着てっ、そしてあっためてっ!

 昨日、あちこち行った人も帰ってくるよね? 一緒に、話をしてしまおう! ちょっと、男の人は全員出て! ル・マちゃんと女の話があるから!」

 サル・シュくんが真っ先に出て行った。

「ハルってすげーな、リョウ叔父」

 って声が聞こえてる。

 ル・マちゃんに生理パンツ履いてもらって、温石帯つけて、マキメイさんにも喜ばれて、さぁっ、出陣っ!

 昨日の続きを玄関で演説して、帰って来た人から村情報を仕入れて拡大地図に書いていく。短冊をつけてその説明をしてハウリングに耳ふさいで、

「さぁ、車李(しゃき)5000がくるよっ! ガリさんっ!」

 笑いながら、ガリさんが出て行った。みんな笑ってた。

 笑って帰って来た。

 やっぱり、何回やっても、車李軍はザルだ。

 というか、この世界の戦士がキラ・シの相手にならない。

 このチートは、『世代交代が間に合わない』っていうズレと重なってるんだ。

 このチートがある間に地盤を固めてしまわないと、現役戦士が死んでいく世代交代でキラ・シが全滅する。多分……そのために、チートなんだ。

 ゼルブが加われば、とりあえず大丈夫な気はするけど、その先は見たことないからなぁ……

 羅季城と車李城も描いておいた。ガリさんに狙ってほしいところも指し示す。

「今年、女の人を抱いた数が、15年後のキラ・シの戦士を増やすんだよっ! 戦もいいけど、そっちも頑張って! これは私、どうにもできないからねっ! 元気で強い子を、たくさん産ませるんだよっ!」

 キラ・シハウリングが羅季城を震わせた。

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

  

 

 そろそろ車李一万のために出陣。

「リョウさんも行く?」

 三日後に私の孕み日が来るってサル・シュくんが言ってた。今出陣するなら、来月になっちゃう。

「こいつは置いていく」

 リョウさんに聞いたのに、ガリさんが私の肩を叩いた。

「良い子を孕め」

 ひゃっ!

 いつもはけっこう悲壮な出陣になるんだけど……なんか凄いヨユーこいてて大丈夫だろうか?

 ガリさんを見送ったら、リョウさんも真っ赤だった。

「よ……よろしくお願いします……」

「……おう……」

「なんでリョウ・カが照れる?」

「うるさいなっ!」

 ショウ・キさんにまじめな顔で突っ込まれて、リョウさんがめっちゃやつあたりしてる。

 もちろん、二週間ぐらい筋肉痛に泣いた。

  

 

  

 

  

 

 そろそろ、ガリさんが車李城についたかな?

 今回は5000の援軍のあとに、先発隊で戦車3000がいたらしい。そのあと、歩兵一万、二万が続けてきたって。

『村の制圧』も、どんどん短冊が黒くなってる中、サル・シュくんがまったくお城にいない。

 今回は私がリョウさんの女だから、ル・マちゃんといちゃこらしてる筈なのに。

 サル・シュくんがいないから、まだ私も彼に頭突きしてなくて、『四位』を貰ってなかった。

 羅季城の裏口に井戸掘ってお風呂に行きやすくした。

 今度は裏口だから裸の男がうろうろしても玄関は無事! よし!

 ひらりって、目の前にナニカが落ちてきた。

 なんで?

 人影が、天井の隅をよこぎった。

「侵入者っ! ル・マちゃんっ!」

  

 

  

 

  

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました